郷が杜備忘録

旅行や読書と日々の行動の記録。
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ラジ&ピース(絲山秋子著)

2019-09-23 | 読書
  ラジ&ピース
  講談社文庫  2011年10月14日第1刷発行

  著者 絲山秋子(いとやま あきこ)
      1966年東京生まれ。早稲田大学政治経済学部経済学科卒業。
      メーカーに入社、営業職として福岡、名護屋、高崎などに赴任。
      2001年退職。2003年に「イッツ・オンリー・トーク」で文学界新人賞、
      2004年に「袋小路の男」で川端康成文学賞、2005年に「海の仙人」
      で芸術選奨文部科学大臣新人賞、2006年に「沖で待つ」で芥川賞を
      それぞれ受賞。


このところ今までの読書と違った本も読んでみようと、女性作家の本を読むことが多くなった。
歴史ものとか、男性作家の作品が多かったので。もちろんそれは書かれている内容に興味が
あったからではあったが、政治とか経済がらみの話にも疲れてきた感じがあるのかもしれない。
そして男の社会、会社社会、過去の振り返りにも飽き飽きしてきたのかも。
そしてからだもあちこち衰えてきたからだろう。


「ラジ&ピース」は、30代前半の女性の話である。その彼女、相馬野枝は仙台にある
FMラジオ局に勤めていたが、群馬県高崎のFMラジオ局に転職するところからはじまる。
野枝は、東京出身だが、東京は合わないらしい。野枝は自分の容姿、スタイル、性格にも
コンプレックスを持っていた。

最初のほうに私が働いている仙台の話がちょっと出てくる。10年間仙台で働いた野枝には
巨大な地方都市仙台の住みやすさに驚いたという。親戚も知人もいないので、誰にも干渉される
ことも無かった。買い物も食事もなんでも近くにあったからという。
野枝は契約社員であり、女性アナウンサーの定年は35歳くらいかと周りを見て思い、だが
働き続けたいと思っていた。

私には野枝はいまどきの30代の人のように思えなかった。ただ、FM局でパーソナリティー
をしているときには、生き生きとしていろんなおしゃべりが出てくるのがすごいなと思った。
そして野枝個人は音楽関係以外あまり関心がないようなのである。
中盤から、パーソナリティーとリスナーの関係に世界観を買えるような気づきがあり、一人の
中年リスナーとリアルな交際を始めるなど、30代女性の心の中を写しているのかもしれない。
野枝は群馬で少し変わった。自意識の武装をいくらか解いた。構(かまえ)が解けたのかもしれない。


「うつくすま ふぐすま」は、中野香奈(なかのかな)という回文の名前の女性の話。
はじめに、詩がある。
  私の名はうつくすま。
  ふぐすまを探しています。
  私の名はふぐすま。
  うつくすまを探しています。
  うつくすまに会えたら、なにかが広がる。
  ふぐすまに会えたら、なにかが許される。
  なにかが芽吹いてなにかが消える。

  ふぐすまはどこにいますか。
  うつくすまはどこにいますか。
  愚問だ。決まってる。
  なかどおり はまどおり あいづ。
  でも私は福島県に縁もゆかりもなく生きている。

慎一郎と付き合っている中野香奈は、妹から同姓同名の中野香奈さんを紹介される。
信用金庫に勤める主人公中野香奈は、海洋水産研究所に勤める年上の中野香奈さんに会う。
主人公はカナさんと呼ばれ、年上の中野さんはナカノさんと呼ぶ。
ナカノさんは福島県会津出身。カナは横浜出身。

ナカノさんとは意気投合しその後も会う。自転車に乗れないナカノさん、自宅は感じのいい
マンション。

慎一郎とは、別れる。別れるときのほうががすてきだ。爽快だった。
別れたらエネルギーは自分のことだけに使える。全部前向きに使える。


内容は30台と思われる女性の揺れる内面か?
標題の「うつくすま ふぐすま」にひかれて読んだ。
福島県は自県を「うつくしま ふくしま」と呼んで観光キャンペーンをやっている。
福島県のことが書かれているのかと思ったが、違っていた。
でも、主人公が中野香奈というかたで、また驚いた。
実は私の友人にも中野君という人がいて、彼が女の子が生まれたときつけた名前が
「かな」さんだった。漢字はわからないが。もしかするとひらがなだったかも。
そして、主人公の住まいがあるのは横浜。私も横浜でも働いたことがあるので、
地名がなつかしかった。
コメント
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