こぶた部屋の住人

訪問看護師で、妻で、母で、嫁です。
在宅緩和ケアのお話や、日々のあれこれを書き留めます。
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2年の月日

2010-04-19 22:57:52 | 訪問看護、緩和ケア
今日は2年ぶりの患者さんへ訪問しました。
うちのステーションでは、管理者の私が初回訪問をして、契約などの手はずを整えると、スタッフに担当してもらいます。
スタッフが担当した後は、落ち着いていれば私が訪問することは、ほとんどなくなります。

この方、Yさんは当初今後の方針が定まらず、いつも御家族がパニックを起こしては何度も訪問し、連携室のナースとも何度もやり取りをし、それでも落ち着かずに外来での医師のムンテラにも同行し、3カ月ほどかかってようやく安定した在宅に落ち着いた方です。

2年前、本人は歩くことも話す事もままならず、奥様もストマの処置も胃瘻の管理もぐちゃぐちゃで、半固形化の胃瘻注入に2時間近くもかけ、パウチ交換では便だらけになってしまう状況でした。

さらに、指導された半固形化栄養剤は一回につき1000円近くかかり、月額10万円ちかくかかるものでした。
さらに治療方針でも家族内でもめて、電話が毎日のように掛かってきては、長い時間をかけて話し合いました。

そして、病院との話し合いの結果、再度の教育入院を経て、ご家族も納得する形で在宅が送れるようになって、2年たちました。
「お久しぶりです。お元気ですか?」
奥様が満面の笑みでお出迎え下さいました。
「おかげさまで、こんなに元気になりました。いまでは少しですが口からも食べる事ができるんです!」
御本人は、杖を使って安定した歩行でトイレに行くことができます。
表情も明るくニコニコしていました。

シャワー浴介助の合間にも、単語が結構出てきます。
「お話し、ずいぶんされるようになりましたね。」
「そうなんです。いろんなことを自分から訴えるようになりました。」

片麻痺があって、嚥下機能も構音機能も悪く、2年前は「あー」とか「おー」などで訴えていた方です。
今日は、「寒い」「もういいよ。」などと嫌な事もはっきり言えます。

着替えと処置が終わると「お父さん、歌を歌ってみたら?」と妻。
「いいよ。」と言いながらも妻が「北国の春」というと大きな声で、まったく間違えずに歌ってくれました。

「しらかば~ あおぞぉら みぃな~みぃかぁぜ~」
こぶしまでコロコロと回します。

すごい!歌が上手と聞いてはいましたが、ここまではっきり上手に歌えるとは思ってもみませんでした。
結局3曲も歌ってくれました。

2年の月日を、こんなに穏やか過ごされてきたんだと思うと、本当にうれしかったです。

これから先、まだまだいろんな事があると思うけれど、ささやかだけどこんな幸せな時間がずっと続きますようにと、心から思いました。



       ~訪問の道すがら~