こぶた部屋の住人

訪問看護師で、妻で、母で、嫁です。
在宅緩和ケアのお話や、日々のあれこれを書き留めます。
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介護の苦しみ。

2010-04-30 22:41:02 | 訪問看護、緩和ケア
     

在宅介護に関しては、感動的だったり温かかったり、意外とよいことばかりが語られがちですが、実際は苦しいことや辛い事も多く、介護の長期化でますますその関係が難しくなる事もあります。

患者さんと家族の関係でこじれてくる場合、ほとんどが今に始まった事ではなく、元気なころからの確執であったり、親子関係の中で、生育環境に起因するものであったりします。

「三つ子の魂百までも」というように、愛情表現がうまくいかずに、愛されたい思いが残ってしまうと、さらに関係が難しくなります。

以前、学童保育でいろいろな子供たちと関わった時にも、幼小児の親の関わり方が、将来的に大きな影響力を持つ事を、実感してきましたので、看取りを前にして親子間が修復できない場面に出会うと、なんとも切ない思いにとらわれます。

子供が親の愛情に疑問を持つと言うのは、とても悲しい話ですし、その疑問の中で育ち大人になってしまった子供が、その親を介護する時の複雑な感情は、とても苦しいものなのでしょう。

それでも、子供(大人になっても)は親の愛情を求めます。
親の愛情をもらえなかった分を、取り返すかのように親を懸命に介護し、そこでまた返って来ない愛情に失望しながら、それでも親を追い求めるのです。

訪問看護をやっていると、そういう親子関係の中で介護をし、苦悩される方を何人も見てきました。

苦しみから投げかけられる言葉の応酬。
言ってしまったことへの後悔。
逃げたい思いと、放っておけない苦しみ。
やはり、いくつになっても子供は親を追い求めるのです。

悲しいことにこういうケースでは、ほとんどの場合子供が求めるほどに、親は自分しか見ていないのです。

そうして何十年も生きてきたのですから、自分中心の人生を歩んできたのですから、最後だから子供に愛情表現をして逝って下さいと言うのは、土台無理な話です。

どうしてあげたらいいのか、私たちもわかりません。
言えるのは、同情や励ましだけでは、何の解決にもならないと言う事だけです。

そんな苦しみの中で、自分を追い込んでしまっている御家族が、訪ねて来ることがあります。

「突然来ちゃった・・。ゴメンナサイ。忙しい時間なのに・・。でも、もう私ダメ・・・」

小さな子供を連れて、玄関で彼女は立っていました。

硬い表情で、呆然と。

献身的な介護の末に、全否定され続けた彼女の心は、悲鳴を上げているようでした。

ゆっくりと、時間をかけて話を聞きました。
途中訪問中に、その一部始終を見ていた看護師も加わり、1時間ほどお話しをしました。

ネグレクトに近かった幼少時からの関わりと、否定しかされない現状。

話を聴いているうちに、それでも少しずつ笑顔が見られるようになりました。

「今の状況を知っている人に、聞いてもらいたい。」

「心療内科のカウセリングに行っても、結局この現状から抜け出せるわけではないので、知っている人に聴いていほしいし、支えてほしい。」

そんな思いに、少しだけでも答えられたかどうかはわかりません。
それでも、帰りには笑顔もありました。

ゴールはまもなくそこにあります。

今は苦しくても、逃げてしまえばもっと苦しむことになるとわかっています。
私たちも、先生も応援することを約束しました。

患者さん自身の想いに沿う。
それとともにご家族も支えられなければ、在宅療養は苦痛でしかないのです。