こぶた部屋の住人

訪問看護師で、妻で、母で、嫁です。
在宅緩和ケアのお話や、日々のあれこれを書き留めます。
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大往生って・・・

2010-04-21 22:47:42 | 訪問看護、緩和ケア
昔から、老衰で苦痛なく、家族のもとで死ねると「大往生でしたね。」といいます。
御高齢なので、天寿全うと言う事でお葬式も明るく、生前の思い出話に花がさいたりして、涙と笑いとごちゃまぜで、それは、決して不謹慎なものではなくて、温かいものだったりします。
でも、老衰っていったい何を指すのだろう・・??

「生体が老化し、全器官・組織に老人性退行性変化が進んで衰弱した状態をいう。」

もちろん高齢になれば、老化は起こってくるけれど、衰弱の過程にはすごく個人差があって、70代でも老衰で亡くなる人がいれば、100歳でもまだまだ元気な人もいます。

取り立てて、どこかがすごく悪いわけではなくても、ちょっと転んだことが原因で寝ついてしまって、あっという間に全身拘縮し、食事がとれなくなり、反応も鈍く寝てばかりいるようになる・・・
そして、ほんの数日でひどい褥創が出来たりするのだけれど、この過程はびっくり位のスピードで進んでいく。そういう事をよく聞きます。


ある日、デイサービスから一本の電話が・・
「○○様、デイサービスにて御逝去されました。」
「ええー?!」

朝、いつものように食事を取って、お迎えの車に車いすごと乗せられて、車からおろされ朝の健康チェックをするために看護師がバイタルを測ろうとしたらすでに呼吸が止まっていたそうです。
「大往生ですねー!」
って、思わず言ってしまいました。

まだ80才そこそこではありましたが、急激に全身の衰弱が進んでいるかたです。
御家族もよく介護されていましたが、お仕事もありかなりギリギリの線でデイサービスも受け入れてくれていましたから、本当に自然な形だったとおもいます。

本来「大往生でした。」は、見送られる御家族が言うべき言葉で、私たちから発する言葉ではないのかもしれませんが、ほとんど苦痛の表情もなく、日常の延長線上で気が付いたら亡くなっていたというのは、もしかしたら御本人も気がつかないで逝ってしまわれたのかもしれません。

老いる事イコール老衰ではありませんが、そのスピードの早さには本当に個人差があると感じています。


そういえば、デイサービスも最近は随分医療ニードの高い患者さんを受け入れてくれるようになりました。
施設によって、かなりの差はありますが、ターミナル期にあっても積極的に受け入れようとして下さる所もあり、これは本当にうれしいことですね。
反面、ショートステイで医療処置があると拒否されたり、グタグタ文句言われたりするところもあり、この辺のモチベーションの差はどこからくるのでしょうか?

リスクのある状態で預かるのは、たしかに大変でしょうし、訴訟社会で「権利」ばかりを振りかざすモンスターファミリーもいるので、いたしかたない事なのでしょうか?

もちろん、何かあってはいけませんが、不可抗力でおこる急変や誤飲などに関して、書面での確認などをすることも必要だと思いますし、「事故だ!何をしている、報告しなさい!」と騒ぎたてる行政の指導方法も問題だと思います。


ところで、昨日はめぐみ在宅クリニックの「36回在宅緩和ケア研究会」でした。

重い障害を持ちながらなお不治の病にかかり、父母に愛され20数年の短い生涯をとじた患者さんの事例を通して「苦しみ」「支え」「支えをより強くするためには?」
をディスカッションしました。
さらに村田理論から、「時間」「関係」「自律」について考えると言う事を、毎回行っています。

このなかで、ギリギリまで通所施設に通いたかった患者さん。
通わせたかった両親や主治医や訪問看護師。
通所する事が本人の支えであり、その本人の笑顔を見ることとが両親の支えでもあったわけです。
しかし、通所施設の看護師は不安が強く、カンファレンスではその不安を御家族や主治医に何度も訴えていたそうです。
そのために、「この子が行くことで、施設の迷惑になるのではないか?」と御両親はとても悩んだそうです。
医療者として、まず病状を理解し、不安を前面に出すのではなく、医師や両親と必要な医療情報を交換することが求められると思いました。

よく施設の看護師から「やったことがない。よくわからない。責任が持てない。」と言う言葉を聴きます。


在宅を地域で支えるためには、施設系のスタッフとも、もっと情報交換をしなければならないし、地域で支えるためには施設の看護師も、もっとこういう場に出てきてほしいとおもおいました。
リスクを負うことに対する、対処方法もともに考え、お互いを守る方法も見つけていかなければなりません。
実際には、いくつかの施設は頑張っていますが、まだまだ数が少ないのが現状です。

施設の門戸をもっと広げて、チーム連携の仲間として、積極的に加わってほしいと思いました。