こぶた部屋の住人

訪問看護師で、妻で、母で、嫁です。
在宅緩和ケアのお話や、日々のあれこれを書き留めます。
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七つの顔を、持つ男??

2012-04-27 22:09:31 | 訪問看護、緩和ケア
傍若無人、足の向くまま、気の向くまま、言いたい放題、怒鳴り放題のNさん。

独居で、軽い片麻痺があって、元気なころのNさんは、気に入らなければケアマネに消化器を投げつけたり、ヘルパーさんを何度も締め出したりしていたそうです。

今は、自力で立つことが難しく、それでも歩きたい、自分は歩けるんだ!という思いでいっぱいです。

訪問看護が介入した当初は、大きな発作で退院された直後。

ほぼ寝たきりで、かかとに大きな褥瘡もありました。

それが、ヘルパーさんの生活面での支援と、訪問看護師、往診医、訪問薬剤で自力端座位がとれるまでとなりました。

当初デイサービスにチャレンジしたものの1度で却下され、入浴サービスも「あんな狭い風呂に入れるか!!銭湯に連れて行け!!」と怒鳴り散らしたので却下。

こういう状況なので、ヘルパーは朝・夕でびっちり入っていて、単位はぎりぎりです。
踵に真皮を超える褥瘡があるので、訪問看護は特別指示書で入れる為、介護保険はヘルパーで埋まっている状態です。

踵は4度の褥瘡で、4度目のデブリを今日行い、たぶんこれで完治すると思われます。

独居のために、この踵の褥瘡を処置するのは看護師しかいないため、特別指示書でほぼ毎日入っていますが、当然看護師も入れ代わり立ち代わり訪問することとなります。

このNさん。
ここ1か月ほど、易怒性が激しく高くなっていて、その怒りはもっぱら身近のヘルパーさんに向けられていました。

怒りは、自分が思うように動けない事に端を発しているので、歩かせろ、好きなものを食わせろ、温泉に連れて行け、靴下を履かせろ、、というものが多く、危険を伴う介助を考えると、訪問看護師と一緒の時だけ、動こうと言う事になっています。
でも、彼にはその区別は余りついていませんので、ヘルパーさんにも歩行の介助やリハビリを要求します。ですが、ヘルパーさんは、出来ませんので断ります。
すると、待つということが出来ない方ですので、怒りが大爆発するというわけです。

でも・・
彼には、彼なりの怒る理由はあるのです。
この理由は、時に尤もで、時に理不尽ではあります。

そうは言っても、あまりに易怒性が高いため、お薬が処方されました。

でも、彼はお薬が増えたことをしっかり気づいていました。

「これは、下痢をする薬だ。医者がこそこそ相談していた。ちゃんと説明をしないなんて、俺をバカにしている!絶対飲まない!」と怒っています。

よく聴いてみると、確かにDRはちゃんと説明をして来なかったことがわかりました。
ひそひそ相談は実際はしていないそうですが、ちゃんと説明されていないことは事実で、その後医師側も薬剤師も、みんな謝ってくれました。
薬は、怒りっぽいからとは言えないので、筋の緊張を取る薬で統一。


こういう断片的な事実と、そこに付随する被害妄想的なとらえ方が、ごちゃ混ぜになって表現されるのです。

昨日、K姉さんが彼の訪問から帰ってきました。

前日、皮膚科の往診で、傷を切るなと激怒していたので、どうかなと思っていたのですが。
かれは、すこぶる機嫌がよくて、Kさんの誘導でどんどんリハビリをやり、団地の踊り場まで出て積極的なリハをしたそうです。
K姉さんは、彼の踵の褥瘡の写真と共に、トロける様な満面の笑顔でうつる彼の写真も撮ってきました。

それを見た、スタッフはもう唖然。

「こんな笑顔見せてもらったことがない!」「なんか、とろけそうな顔をしている。」「信じられない・・いつも文句ばかり言っているのに、こんな顔をするんだ・・。」「笑ってはくれるけど、なんだか違う。本当にうれしそう。」と口々に言いました。

実際、写真の笑顔は「相好を崩す。」というのでしょうか、悪く言えば「鼻の下を伸ばして、でれでれの顔」。
そうです。
彼は、訪問している看護師の中で、K姉さんが大好きなのです。Loveです。
Kねえさんは、うちのステーションきっての老人キラー。
彼女にかかれば、どんな老人もK姉さん教の信者になってしまうのです。恐るべし。

スタッフといろいろはなしているうちに、やはり、人によって接する態度やパターンを使い分けているのではないかと言う事になりました。

小柄で優しくて、かわいい声を出すSナースには、彼はとても優しいのだそうです。
「そこの電気、付けていいよ。」なんて感じで、どうも年下の娘さんに接するようにするようでした。

逆に、すっかり甘えて自分では「動けない。できない。立たせてくれ、歩かせてくれ。」で押し通す人たち。
顔を見れば、喧嘩を売る相手は現在のケアマネさん。

ヘルパーさんは、残念ながら「小娘」と称してかなり見下した対象になってしまっています。

この区別はいったいなんなのでしょうね。

まあ、それぞれの役割分担の中で、接していけばよいのでしょうが、本当に「7つの顔を持つ男」のキャッチコピーが一番合っています。