2012年も無事に年が明けました。みなさん今年の正月はいかがお過ごしでしょうか?
さて私は1月1日~3日にかけ、お客さん2人と北アルプスは槍ヶ岳に正月山行へ行ってきました。
1月1日
まずは新保高温泉のバスターミナルで登山計画書を提出し、元気よく蒲田の右俣林道をたどって槍平へ。道は年末からの登山者のおかげで弾丸道路状態。感謝感謝です。
またこの日は槍から下山してくるパーティーに続々すれ違い。中には当然見知った顔もちらほら。同じJAGUの山本ガイドからは槍への道の状態など、貴重な情報を教えていただくこともできました。さらにはピオレドール受賞クライマーの谷口けいちゃんにも!これにはお客さんたちも大喜びでした。
槍平到着午後1時。なかなかいいペースでのアプローチでした。
1月2日
よく1月2日は、前夜からの低気圧通過の影響が少し残り、小雪のちらつくあいにくの天気。しかし予報では徐々に晴れ間が出てくるはずと、明るくなった午前7時30分に槍平を出発。上空の風が気になるところですが、果たして今日は無事に槍ヶ岳へ登頂出来るでしょうか!
飛騨沢を詰めるにつれ上空にも晴れ間がちらほら現れ、しかし風は以前にもまして勢いを強め、期待と不安が入り混じった状態でのアプローチ。雪崩に警戒しながら先人のつけてくれたトレースを頼りに高度を上げていきました。
しかし槍ヶ岳が見え始めたあたりから状況は一変。前日からのわずかな降雪とかなりの強風で、トレースが埋っている個所も・・・足裏感覚を頼りにトレースを外さないように進んでいきました。
しかし宝の木を過ぎると積雪はさらに増し、とうとうラッセルを強いられながらのアプローチに。風もいよいよ強さを増し、視界を遮られることもしばしば。槍ヶ岳に至っては上空の強風と寒気の影響で、厚い雲覆われ垣間見ることもままならない状態でした。
2600m付近で念のためにアンザイレン。強風に耐えながらじりじりと高度を稼ぎました。
12時40分何とか大喰岳に到着。3000mの稜線は強風と次から次へと押し寄せてくる雲で、視界はあまりありません。コンパスと地図を頼りに槍の方角を確かめますが、飛騨乗越への下りは行ったら最後、ここには引き返すことなど不可能な感じに思えてきました。昨夜からの降雪と風の影響を考えるとよしんば飛騨乗越までたどり着けても、飛騨沢を下る気にもなれず・・・
遠くには槍の肩の小屋、そしてわずかに槍の穂先が垣間見えましたが、今回はここまで。残念ではありますが、元来た大喰の西尾根を下ることにしました。
しかしここは3000mの稜線。一つの思い込みが生死を分けると思い、しっかりと地図、コンパスで方角を確かめ、大喰の西尾根へ入っていきました。
下り始めた西尾根も、先ほど付けてきたトレースもすっかり消えてなくなり、強風の合間からわずかに見える尾根筋とコンパスを頼りにじりじり下降。宝の木まで戻ってきてホット一息。何とか無事に下山してきました。あとは雪崩に気を付けて飛騨沢をラッセルしながら槍平を目指しました。途中めでたくおおきなトレースに遭遇。槍平帰幕午後4時30分。やれやれといった感じで大変な1日を終えました。
ちなみに最近は数年前の槍平の雪崩事故の影響か、飛騨沢を詰めてのアプローチよりは中崎尾根を経由してのコースが人気で、この日も中崎尾根経由飛騨乗越~槍ヶ岳に登ったパーティーが、大勢飛騨沢を下ってきていました。
1月3日
この日は30分ほど寝坊して4時30分に起床。ゆっくりと朝の支度をしテントを撤収。槍平から滝谷の出会いまで何か所か雪崩の後に遭遇。昨日までの降雪で少し積雪の状態は不安定なようなので、雪崩に気を付けながらの下山。白出沢を通過してホット一息。なにやら上空ではヘリの音が聞こえていましたが、遭難でもあったのか?ちょっと気にかけながらも私たちは無事に穂高平まで下山。朝方晴れ間も垣間見れたのですが、振り返ると山の奥は再び濃い雲の中。あとはひたすら新穂高温泉までの右俣林道を今回の山行をかみしめながら下山していきました。
この日は夕方6時には帰宅。帰ってニュースを見れば、なんと今日まさに我々が下りてきた槍ヶ岳で遭難騒ぎがあったというではありませんか!まああの天気ではさもありなんといったかんじですが、我々もその状況に紙一重でいたということは、今後十分に考えなければならないことだと思います。そしてまた我々が行っている登山という行為は、大自然を堪能できる喜びもありますが、その反面大きな危険もはらんでいるのだということを再認識させられました。大自然のなかではまさに生死は紙一重。
そして我々が安全だと盲信している平地のほんのわずか3キロ上空では、平穏な(と感じている?)平地では及びもつかないような過酷な状況がひろがっているという現実。これははるか遠い場所での話ではなく、我々の身近にある危険を暗示させられる山行でした。
これがまさに大自然の驚異。今年の年明けはその洗礼を受けた幕開けとなりました。