錫杖は結局1ルンゼを登ってきました。
相棒は同じ山岳ガイドで、日プロの島田君。
富山の北村大先輩からは、1ルンゼだけはやめた方が良いよと言われてはいたのですが・・・
クリヤ谷の笠が岳登山道から、錫杖岳が最初に見える峠から前衛壁を見たとき、やっぱり上部に雪田がたまっており、これが雪崩たらヤバいなという感じだったので、1ルンゼはだめだねと話していたんですけどね・・・
しかししかし、どんどん前衛壁に近づくにつれ、1ルンゼはその圧倒的な存在感で僕らの目の前に立ちはだかってくるではありませんか!
クリヤ谷のアプローチは、渡渉ポイントからラッセルもきつくなり、思いのほか時間がかかってしましました。
クリヤの岩小屋でテントを張り、身支度を整えたのは午後の1時。この日はトレースつけと壁の偵察ということで、取りあえず存在感ありありの1ルンゼへ。
それはどんどん近づくにつれ、結構行けるんじゃないの?いくなら今でしょ!教科書通りの状況判断はどこへやら。1ピッチだけという約束で、味見程度で取り付いてみました。
雪で埋まった岩壁は、おそらく夏の2ピッチ目からの取り付きで、ルンゼに入った瞬間から、薄いベルグラと雪がついてグサグサになった氷?の連続。形状が凹角なので、オフィズスっぽく体をずりこませながら、薄い氷にアックスを突き刺し、這い上がり、30mでビレイポイントへ。
これで火が付いたか、未練が付いたか、これ行ける!と思い込み、ロープをフィックス。この日は岩小屋へ戻りました。
まあ、明日だめならロープを回収して注文に行こう。こんな乗りでした。
翌日はこれ以上ないいというくらいの晴天!上部からの雪崩を細心の注意を払い、ビレイポイントを考慮して行こう!ということで、昨日のフィックスをユマーリング。
続く2ピッチ目は島ちゃんがリード
30m強でビレイ。緩傾斜帯の雪はかなり状態良感じ。これなら雪崩れないな。
よし1これならいける!!調子に乗ったのがいけなかったか、3ピッチ目、私のリード。1ルンゼ右ルートと別れ、本流へ。最初の垂直部分を乗越し、緩傾斜から再び水壁へ。ところが氷質は悪化の一途・・・中間ランナーのスクリューもどれも決まらず、ほとんどランナウト状態。しかもアンカーがとれるビレイポイントも見つからず、いわゆるハマった・・・感じ。よりによって垂直部分で必死で雪をかきわけ、グサグサの氷を削り、何とか硬い氷を出そうとするも、スクリューを打つと、半分も行かずスカッと手ごたえが無くなる始末。何とか3本決めて、ビレイ解除。でも「島ちゃん、絶対落ちないでねー????」
よく見れば、下に隣の1ルンゼ左ルートのビレイポイントが!「島ちゃん、トラバースして隣のビレイポイントに行ける?」「何とかやってみます!」
こんなやり取りの末、ビレイポイントを確保。使い果たしたギアを補充し、再び垂直のグサグサ氷へトライ。苦闘の末、何とか次のビレイポイントへ。「ウォー、ビレイ解除―!」雄叫びとも何ともつかないコール。
次のピッチもこれまでの経験から、悪そうな感じ。しかも時間が時間だけに、日射がもろに氷に当たってさらに悪そう。
結局左のミックスに逃げる羽目に。5ピッチ目、島ちゃんのリード。カンテの向こうに消えた彼の姿をうかがい知ることも出来ず、じりじりと伸びるロープにすべてを託すしかない。
でももうここまで来ると、肝も据わったもんで、落ちたら落ちたで、どっかに止まるんじゃない。ダメならダメでお互い取り付きまっで吹っ飛ぶしかないか!
ロープ半分と少し、30m強でビレイ解除のコール。フォローしていくと、これまた悪いミックス。島ちゃんよく行ったね!!
さあ、いよいよルートも大詰め。6ピッチ目、私のリード。頭上にはまた悪そうな垂直のベルグラ・・・はじめ直上するものの、ランナーも取れず、ヤバい感じ。「右にハーケンあるよー」の島ちゃんの声に、右の方を見ると、確かにハーケンが。右にトラバースか?と取りあえずカムを1個決め、水平にハンドトラバース。1個所遠いところがあるものの、何とか右へ、キノコ雪を蹴散らしながら決死のトラバース。
たどり着いたハーケンは、浮き浮きの浅打ち・・・これじゃテンションかけたら持たないな・・・しかしもう戻るすべもなく、浅い凹角に入り込み、これまたグサグサの氷雪を掻き落としながらやっと草付を見つけ、アックスを一振り。わずかにピックの先端がひっかり、微妙な感じでの立ち込み。
しかしここまで来ると、既にアックスの先端には神経が通い、クランポンの先は足指の様。微妙なバランスを保ちながら、じりじりと体をずり挙げる、この連続。最後はオフィズス、アックス、フットジャムを駆使しての死闘。もう戻ることは出来ない。落ちるか登りきるかの二者択一。結果は吉とでて、死闘の末にはキノコ雪の上へ。あとは硬く締まった雪壁を右にトラバースし、再び1ルンゼ本流へ合流。7ピッチ目、最終ピッチを島ちゃんに託し、それなりに太く育った灌木でビレイ。時間は既に4時30分をまわっているではありませんか!
最終ピッチは雪壁から短い氷の水壁を経て再び緩い雪壁へ。ここからよく見ると、そこここの灌木には大きなキノコ雪がべったりと張り付き、岩棚には巨大なブロックが・・・これらが落ちてこなくてよかったね・・・
すっかり日の落ちた夕暮れの中、同ルートを懸垂下降。一か所ロープがスタックするアクシデントにも見舞われながら、無事取り付きへ下降。
僕らのそれなりに長い1日は、ようやく幕を下ろそうとしています。「島ちゃん、無事に降りられて良かったね・・・」取り付きでがばがば水分を補給し、チョコレートをむさぼりながら、しみじみと語りあいました。
明けて翌日は、本当にこれで天気が悪くなるのか?と言いたいような天気でしたが、前日までの奮闘で体はよれよれ。1ルンゼ奮闘のさなかなくしてしまったギアもあり、今回はこれまで。運を使い果たしたといった感じで槍見まで下山してきまた。
それはそれは充実した登攀でしたが、こんなこと続けてたらいつか捕まるよね。ちょっと反省・・・
次回は確固たる理由と、ゆるぎない自信と、そして今回の熱い情熱で、完膚なきまでのクライミングをしたいですね。
やれやれ。
相棒は同じ山岳ガイドで、日プロの島田君。
富山の北村大先輩からは、1ルンゼだけはやめた方が良いよと言われてはいたのですが・・・
クリヤ谷の笠が岳登山道から、錫杖岳が最初に見える峠から前衛壁を見たとき、やっぱり上部に雪田がたまっており、これが雪崩たらヤバいなという感じだったので、1ルンゼはだめだねと話していたんですけどね・・・
しかししかし、どんどん前衛壁に近づくにつれ、1ルンゼはその圧倒的な存在感で僕らの目の前に立ちはだかってくるではありませんか!
クリヤ谷のアプローチは、渡渉ポイントからラッセルもきつくなり、思いのほか時間がかかってしましました。
クリヤの岩小屋でテントを張り、身支度を整えたのは午後の1時。この日はトレースつけと壁の偵察ということで、取りあえず存在感ありありの1ルンゼへ。
それはどんどん近づくにつれ、結構行けるんじゃないの?いくなら今でしょ!教科書通りの状況判断はどこへやら。1ピッチだけという約束で、味見程度で取り付いてみました。
雪で埋まった岩壁は、おそらく夏の2ピッチ目からの取り付きで、ルンゼに入った瞬間から、薄いベルグラと雪がついてグサグサになった氷?の連続。形状が凹角なので、オフィズスっぽく体をずりこませながら、薄い氷にアックスを突き刺し、這い上がり、30mでビレイポイントへ。
これで火が付いたか、未練が付いたか、これ行ける!と思い込み、ロープをフィックス。この日は岩小屋へ戻りました。
まあ、明日だめならロープを回収して注文に行こう。こんな乗りでした。
翌日はこれ以上ないいというくらいの晴天!上部からの雪崩を細心の注意を払い、ビレイポイントを考慮して行こう!ということで、昨日のフィックスをユマーリング。
続く2ピッチ目は島ちゃんがリード
30m強でビレイ。緩傾斜帯の雪はかなり状態良感じ。これなら雪崩れないな。
よし1これならいける!!調子に乗ったのがいけなかったか、3ピッチ目、私のリード。1ルンゼ右ルートと別れ、本流へ。最初の垂直部分を乗越し、緩傾斜から再び水壁へ。ところが氷質は悪化の一途・・・中間ランナーのスクリューもどれも決まらず、ほとんどランナウト状態。しかもアンカーがとれるビレイポイントも見つからず、いわゆるハマった・・・感じ。よりによって垂直部分で必死で雪をかきわけ、グサグサの氷を削り、何とか硬い氷を出そうとするも、スクリューを打つと、半分も行かずスカッと手ごたえが無くなる始末。何とか3本決めて、ビレイ解除。でも「島ちゃん、絶対落ちないでねー????」
よく見れば、下に隣の1ルンゼ左ルートのビレイポイントが!「島ちゃん、トラバースして隣のビレイポイントに行ける?」「何とかやってみます!」
こんなやり取りの末、ビレイポイントを確保。使い果たしたギアを補充し、再び垂直のグサグサ氷へトライ。苦闘の末、何とか次のビレイポイントへ。「ウォー、ビレイ解除―!」雄叫びとも何ともつかないコール。
次のピッチもこれまでの経験から、悪そうな感じ。しかも時間が時間だけに、日射がもろに氷に当たってさらに悪そう。
結局左のミックスに逃げる羽目に。5ピッチ目、島ちゃんのリード。カンテの向こうに消えた彼の姿をうかがい知ることも出来ず、じりじりと伸びるロープにすべてを託すしかない。
でももうここまで来ると、肝も据わったもんで、落ちたら落ちたで、どっかに止まるんじゃない。ダメならダメでお互い取り付きまっで吹っ飛ぶしかないか!
ロープ半分と少し、30m強でビレイ解除のコール。フォローしていくと、これまた悪いミックス。島ちゃんよく行ったね!!
さあ、いよいよルートも大詰め。6ピッチ目、私のリード。頭上にはまた悪そうな垂直のベルグラ・・・はじめ直上するものの、ランナーも取れず、ヤバい感じ。「右にハーケンあるよー」の島ちゃんの声に、右の方を見ると、確かにハーケンが。右にトラバースか?と取りあえずカムを1個決め、水平にハンドトラバース。1個所遠いところがあるものの、何とか右へ、キノコ雪を蹴散らしながら決死のトラバース。
たどり着いたハーケンは、浮き浮きの浅打ち・・・これじゃテンションかけたら持たないな・・・しかしもう戻るすべもなく、浅い凹角に入り込み、これまたグサグサの氷雪を掻き落としながらやっと草付を見つけ、アックスを一振り。わずかにピックの先端がひっかり、微妙な感じでの立ち込み。
しかしここまで来ると、既にアックスの先端には神経が通い、クランポンの先は足指の様。微妙なバランスを保ちながら、じりじりと体をずり挙げる、この連続。最後はオフィズス、アックス、フットジャムを駆使しての死闘。もう戻ることは出来ない。落ちるか登りきるかの二者択一。結果は吉とでて、死闘の末にはキノコ雪の上へ。あとは硬く締まった雪壁を右にトラバースし、再び1ルンゼ本流へ合流。7ピッチ目、最終ピッチを島ちゃんに託し、それなりに太く育った灌木でビレイ。時間は既に4時30分をまわっているではありませんか!
最終ピッチは雪壁から短い氷の水壁を経て再び緩い雪壁へ。ここからよく見ると、そこここの灌木には大きなキノコ雪がべったりと張り付き、岩棚には巨大なブロックが・・・これらが落ちてこなくてよかったね・・・
すっかり日の落ちた夕暮れの中、同ルートを懸垂下降。一か所ロープがスタックするアクシデントにも見舞われながら、無事取り付きへ下降。
僕らのそれなりに長い1日は、ようやく幕を下ろそうとしています。「島ちゃん、無事に降りられて良かったね・・・」取り付きでがばがば水分を補給し、チョコレートをむさぼりながら、しみじみと語りあいました。
明けて翌日は、本当にこれで天気が悪くなるのか?と言いたいような天気でしたが、前日までの奮闘で体はよれよれ。1ルンゼ奮闘のさなかなくしてしまったギアもあり、今回はこれまで。運を使い果たしたといった感じで槍見まで下山してきまた。
それはそれは充実した登攀でしたが、こんなこと続けてたらいつか捕まるよね。ちょっと反省・・・
次回は確固たる理由と、ゆるぎない自信と、そして今回の熱い情熱で、完膚なきまでのクライミングをしたいですね。
やれやれ。