杉ちゃんのWEB日記

国際山岳ガイド 杉坂 勉のブログ

結構ヤバかった

2014-01-30 23:39:43 | プライベート山行記録
 錫杖は結局1ルンゼを登ってきました。
 相棒は同じ山岳ガイドで、日プロの島田君。
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 富山の北村大先輩からは、1ルンゼだけはやめた方が良いよと言われてはいたのですが・・・
 クリヤ谷の笠が岳登山道から、錫杖岳が最初に見える峠から前衛壁を見たとき、やっぱり上部に雪田がたまっており、これが雪崩たらヤバいなという感じだったので、1ルンゼはだめだねと話していたんですけどね・・・
 しかししかし、どんどん前衛壁に近づくにつれ、1ルンゼはその圧倒的な存在感で僕らの目の前に立ちはだかってくるではありませんか!



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 クリヤ谷のアプローチは、渡渉ポイントからラッセルもきつくなり、思いのほか時間がかかってしましました。
 クリヤの岩小屋でテントを張り、身支度を整えたのは午後の1時。この日はトレースつけと壁の偵察ということで、取りあえず存在感ありありの1ルンゼへ。
 それはどんどん近づくにつれ、結構行けるんじゃないの?いくなら今でしょ!教科書通りの状況判断はどこへやら。1ピッチだけという約束で、味見程度で取り付いてみました。
 
 

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 雪で埋まった岩壁は、おそらく夏の2ピッチ目からの取り付きで、ルンゼに入った瞬間から、薄いベルグラと雪がついてグサグサになった氷?の連続。形状が凹角なので、オフィズスっぽく体をずりこませながら、薄い氷にアックスを突き刺し、這い上がり、30mでビレイポイントへ。
 これで火が付いたか、未練が付いたか、これ行ける!と思い込み、ロープをフィックス。この日は岩小屋へ戻りました。
 まあ、明日だめならロープを回収して注文に行こう。こんな乗りでした。



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 翌日はこれ以上ないいというくらいの晴天!上部からの雪崩を細心の注意を払い、ビレイポイントを考慮して行こう!ということで、昨日のフィックスをユマーリング。

 続く2ピッチ目は島ちゃんがリード


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 30m強でビレイ。緩傾斜帯の雪はかなり状態良感じ。これなら雪崩れないな。



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 よし1これならいける!!調子に乗ったのがいけなかったか、3ピッチ目、私のリード。1ルンゼ右ルートと別れ、本流へ。最初の垂直部分を乗越し、緩傾斜から再び水壁へ。ところが氷質は悪化の一途・・・中間ランナーのスクリューもどれも決まらず、ほとんどランナウト状態。しかもアンカーがとれるビレイポイントも見つからず、いわゆるハマった・・・感じ。よりによって垂直部分で必死で雪をかきわけ、グサグサの氷を削り、何とか硬い氷を出そうとするも、スクリューを打つと、半分も行かずスカッと手ごたえが無くなる始末。何とか3本決めて、ビレイ解除。でも「島ちゃん、絶対落ちないでねー????」
 よく見れば、下に隣の1ルンゼ左ルートのビレイポイントが!「島ちゃん、トラバースして隣のビレイポイントに行ける?」「何とかやってみます!」
 こんなやり取りの末、ビレイポイントを確保。使い果たしたギアを補充し、再び垂直のグサグサ氷へトライ。苦闘の末、何とか次のビレイポイントへ。「ウォー、ビレイ解除―!」雄叫びとも何ともつかないコール。
 次のピッチもこれまでの経験から、悪そうな感じ。しかも時間が時間だけに、日射がもろに氷に当たってさらに悪そう。
 結局左のミックスに逃げる羽目に。5ピッチ目、島ちゃんのリード。カンテの向こうに消えた彼の姿をうかがい知ることも出来ず、じりじりと伸びるロープにすべてを託すしかない。
 でももうここまで来ると、肝も据わったもんで、落ちたら落ちたで、どっかに止まるんじゃない。ダメならダメでお互い取り付きまっで吹っ飛ぶしかないか!
 ロープ半分と少し、30m強でビレイ解除のコール。フォローしていくと、これまた悪いミックス。島ちゃんよく行ったね!!
 さあ、いよいよルートも大詰め。6ピッチ目、私のリード。頭上にはまた悪そうな垂直のベルグラ・・・はじめ直上するものの、ランナーも取れず、ヤバい感じ。「右にハーケンあるよー」の島ちゃんの声に、右の方を見ると、確かにハーケンが。右にトラバースか?と取りあえずカムを1個決め、水平にハンドトラバース。1個所遠いところがあるものの、何とか右へ、キノコ雪を蹴散らしながら決死のトラバース。
 たどり着いたハーケンは、浮き浮きの浅打ち・・・これじゃテンションかけたら持たないな・・・しかしもう戻るすべもなく、浅い凹角に入り込み、これまたグサグサの氷雪を掻き落としながらやっと草付を見つけ、アックスを一振り。わずかにピックの先端がひっかり、微妙な感じでの立ち込み。
 しかしここまで来ると、既にアックスの先端には神経が通い、クランポンの先は足指の様。微妙なバランスを保ちながら、じりじりと体をずり挙げる、この連続。最後はオフィズス、アックス、フットジャムを駆使しての死闘。もう戻ることは出来ない。落ちるか登りきるかの二者択一。結果は吉とでて、死闘の末にはキノコ雪の上へ。あとは硬く締まった雪壁を右にトラバースし、再び1ルンゼ本流へ合流。7ピッチ目、最終ピッチを島ちゃんに託し、それなりに太く育った灌木でビレイ。時間は既に4時30分をまわっているではありませんか!
 最終ピッチは雪壁から短い氷の水壁を経て再び緩い雪壁へ。ここからよく見ると、そこここの灌木には大きなキノコ雪がべったりと張り付き、岩棚には巨大なブロックが・・・これらが落ちてこなくてよかったね・・・

 

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 すっかり日の落ちた夕暮れの中、同ルートを懸垂下降。一か所ロープがスタックするアクシデントにも見舞われながら、無事取り付きへ下降。
 僕らのそれなりに長い1日は、ようやく幕を下ろそうとしています。「島ちゃん、無事に降りられて良かったね・・・」取り付きでがばがば水分を補給し、チョコレートをむさぼりながら、しみじみと語りあいました。
 明けて翌日は、本当にこれで天気が悪くなるのか?と言いたいような天気でしたが、前日までの奮闘で体はよれよれ。1ルンゼ奮闘のさなかなくしてしまったギアもあり、今回はこれまで。運を使い果たしたといった感じで槍見まで下山してきまた。
 それはそれは充実した登攀でしたが、こんなこと続けてたらいつか捕まるよね。ちょっと反省・・・
 次回は確固たる理由と、ゆるぎない自信と、そして今回の熱い情熱で、完膚なきまでのクライミングをしたいですね。
 やれやれ。




2014-1-25~26 大同心大滝

2014-01-26 21:38:50 | ガイド山行記録
 昨日までの晴天とは打って変わり、今日から天気は下り坂。
 しかし25日一日は、何とか天気が持ちそうなので、タイヤを滑らせながら美濃戸のおばちゃんのところまで上がり、そこから急いで鉱泉へ。
 身支度を整えて、早速大同心沢へ行ってきました。
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 大滝はご覧の通りのいい感じに結氷しており、クライミング意欲を掻き立てられました。
 しかし、大同心稜への分岐からはトレースも乏しく、最後の300~400mほどは完ぺきにラッセル・・・昨日に引き続き今日もラッセルとは・・・挙句の果てには雪面がサンクラストしていて、かなり固い。傾斜も急なため、すかさずスコップを取り出し、分厚いクラストを叩き割ってのラッセル。俺は砕氷船か!?



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 大滝はというと、少し西日を浴びたせいか、適度に柔らかく、アックス、クランポンともによく決まりました。表面も一度溶けて平らになっていたため、リアルアイスクライミング!傾斜もそこそこで腕にいい感じに疲労が来ましたね!
 とりあえず真ん中とその少し左の2本をトレース。アプローチのラッセルに時間をとられたせいもあり、今日はここまで。ヘッドランプのお世話にならずに鉱泉へ帰ってきました。でもこのシチュエーション、昔の冬期登攀の時のようで、なんか懐かしい感じでした。

 


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 翌日は夜半来の降雪と風に視界不良と悪天候の三拍子・・・
 んー、こんな日は標高の高いところは論外だし、雪崩も気になる。そしてこんな時だからこそ込み合う南沢大滝には行きたくないし・・・。結局王岩の氷柱に行ってきました。
 ここの氷柱は、スケールこそ小さいものの、傾斜は垂直。すでに段々になってはいるもののつららもあり、バラエティーに富んでいて、アックスの持ち替えなど多彩なムーブを楽しめました。
 1泊2日の短時間ではありましたが、結構たのしいアイスクライミングをしてきましたよ。



2014-1-24 阿弥陀南稜

2014-01-24 22:30:08 | ガイド山行記録
寒かった昨日までとは一転、今日は暖かな日差しの中、阿弥陀の南稜へ行ってきました。
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 朝5時45分に船山十字路を出た時は、もちろん暗闇の中。しかし満点の星空が、今日の晴天を約束してくれているかのようでした。
 さてさて、出合小屋に着くころにはすっかり夜も明け、急登をひと登りで立場山へ向かう稜線へ。すると眼前には早くも一点の曇りもない大パノラマが!すでに大満足!!ウキウキ気分でアプローチ。



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 しかもありがたいことに、期待していなかったトレースが、バッチリとついているではありませんか!
 程なく立場山に到着。ここで身支度を整え、ハーネスとアイゼンも装着。いざ南稜へ!
 青なぎから仰ぎ見る南稜核心部も、今日はおいでおいでと手招きをしているかのような優しさ。
 そして、北アルプスも端から端まで、それはそれはきれいに見ることが出来るではありませんか!





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 第一岩峰下からはロープも付けて、いよいよ核心部へ!
 核心のルンゼは、一部氷結も見られるほどでしたが、ピッケル、アイゼンがよく効き、サクサクと快適に越えていきました。



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 阿弥陀山頂直下のトラバースと、続くミックスの岩稜帯も無難にこなし、いよいよ山頂。



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 13時、阿弥陀へ無事登頂。感無量の山頂でした。
 小休止の後、早速下山。今回は阿弥陀の中央稜を下山路にとりました。
 しかし中央稜は、出だしこそ快適にサクサクと下れたものの、第二岩峰の巻から重たい雪の吹き溜まりと、全層霜ざらめ化した積雪のせいで、底なしのラッセル。なかなか思うようにすすめず苦労しましたが、下部はさすがに積雪の量も落ち着き、また古いトレースを見つけることが出来たので、何とか二股まで無事に降りてこれました。
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 広河原の林道までたどり着き、振り返るとそこには夕日に染まりかけた阿弥陀岳の勇姿が。そして沈みゆく夕日が今日一日の行動を思い起こさせ、何とも感慨深い光景でした。
 うーん、こんな素敵な一日と出会えるから、山ってやめられないですよね。





2014-1-16~17 戸台・舞姫の滝

2014-01-18 09:18:18 | ガイド山行記録
 寒波来週のおり、戸台のアイスクライミングに行ってきました。
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 16日はぽかぽか陽気の中を、丹渓山荘跡まで入山。廃墟の中で快適なビバークでした。



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 さてさて17日は、快晴とまではいかないまでも、まずまずの天気。ちょっと風が気になりますが、バッチリと付いたトレースをたどり、舞姫の滝取り付きへ。
 F1はご覧の通りの結氷具合。F3への期待がたかまります。



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 F2も難なく越え、いよいよ目に前にはF3、舞姫の滝が!結氷状態はまずまずのようす。いざ取り付きへ。
 出だしは10m弱の緩傾斜で、中間部は見た感じ垂直。10mほどですかね。


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 舞姫の滝は取り付いてみると、硬すぎず柔らかすぎず、ピックの刺さりもよく、いい感じの結氷状態。垂直部分もグイグイ登れました。
 その後、F4、F5を目指して遡行を続けましたが、サクサクの雪は、岩の間に薄く積もり、足はとられるはズボズボもぐるはで、とてもこの状態では・・・すぐそこにF5も見えてきましたが、あれじゃな・・・といった感じだったので、F3まで戻り、舞姫の滝をラインを変えて3本登ってきました。


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 真ん中、左とラインを変えてみましたが、左に行くに従い、氷も不安定に。
 最後はデリケートなクライミングになり、結構マジクライミングで充実度満点。
 戸台のアイスを満喫してきました。







MHW展示会

2014-01-15 16:06:30 | ブログ
MHW展示会
今日は忙しい仕事の合間を縫って??、MHWの来期冬物の展示会に来てます。
来期はなんと言っても、MHW20周年のアニバーサリー。気合い入ってますよー!
オススメはハードシェル類。カラー、スタイル共に豊富にラインナップされてます。お値段もまずまずで、お好みの一品が見つかるかもです!!


2014-1-12~13 赤岳天狗尾根

2014-01-14 15:43:19 | ガイド山行記録
 成人の日の連休、本来の計画は涸沢岳西尾根から奥穂の予定でしたが、イマイチ天気予報が良くないせいもあり、結局八ヶ岳へ変更。12日~13日で東面の赤岳天狗尾根へ行ってきました。
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 12日、美しの森はとてもいい天気。南の北岳や甲斐駒ケ岳などが綺麗に望めました。しかし気になったのはもっと北の穂高ですが・・・



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 地獄谷に入ると、なんと新しい堰堤が!しかし竣工は平成12年。しばらくこっちには来てなかったからなー。なんか時の流れを感じてしまいました。まあおかげであの歩きにくい河原歩きは無くなり、このところの積雪としっかりとしたトレースが有ったりと、とても楽ちんなアプローチで出合小屋までたどり着けました。




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 出合小屋からは念のためハーネスと、アイゼンは予定通り装着し、これまたありがたいトレースを頼りに天狗尾根の末端へ。この日は2140m地点で幕営。次の日に備えることにしました。



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 翌13日は予報通りの降雪。しかし間もなく止むとのことだったので、予定通り出発。昨日までのありがたいトレースはすっかり消えてなくなっており、ラッセルがあるものの、軽い雪はさほどの苦労にはなりません。



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 カニのはさみのような小岩峰からはいよいよロープを付け、ルート中の核心部へ突入。このころから雲もきれ始め、時折青空も。赤岳山頂での展望に期待を膨らませての取り付きでした。

 


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 もさもさの雪と、岩壁帯に多少悩まされましたが、何とか通過。ちょっとだけ緊張させられる場面もありましたけどね・・・



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 さていよいよ大天狗。天気もいよいよ回復に向かい、大天狗の向こうには龍頭峰も。
 ルート中最大の難所、大天狗の登攀は、セオリー通りに右から巻くルートをとりました。ここは中途半端に雪が付き、なかなか悪く感じましたよ!



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 重い荷物と中途半端に付いた雪のせいもあり、時間はかかりましたが無事に天狗尾根核心部を通過。あとは西からの強風に顔をたたかれながら、じりじりと赤岳山頂をめざします。



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 もうすっかり人気の消えた赤岳山頂に無事登頂。記念撮影もそこそに、地蔵尾根経由で早速下山にかかりました。



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 行者小屋から振り返ると、夕日に染まりかけた赤岳がとてもきれいで、意印象的でした。
 こんな光景に出合えるから、山ってやめられないんですよねー。





谷川来てます

2014-01-08 13:24:01 | ブログ
谷川来てます
明けましておめでとうございます。
今年もどうぞよろしくお願いいたします。
さて年明け第一弾目のブログは、谷川からです。と言ってもスキーではなく、ましてや登山でもなく、今日は積雪の調査。なんか仰々しい言い回しでしだが、来月に参加するJANの雪崩更新研修会に向けてのトレーニング…
身長程の断面を掘り、積雪の構造や不安定さを見てます。
勿論調査の後は、楽しいお楽しみが待ってますが…
ではでは今年もどうぞよろしくお願いいたします。