裏山に老桜がある。
私より年長。
坂の途中、お日様に向かうように伸びていたのが、
この十年ほどの間に傾き、
顎をついたように幹が地面に接してから
もう四、五年経つ。
春にはたっぷり花を咲かせるが、
今は葉が落ち、裸枝だけになっている。
通りがかりによく見ると、
枝に花芽が付いていて、
日当たりが良すぎるのか、
一輪だけ「狂い咲き」している。
それかとおもえば、
痩せた枝があり、
手の指でつまんだだけで、
ぽそり、と落ちてしまう。
その小枝の生えていた、
もとの枝にも花芽がなくて、
指三本くらいで押さえると、
ぽき、と折れてしまう。
もう死んでいる。
井の頭公園の花守。
生きるつもりの枝は、
元の幹が死にそうなら、
手当をすると自分で根を出して、
それが「地球に届けば」、
新しい根と幹と枝になり、
命をつなぐ、と言っていた。
生きるつもりが、あるのか、ないのか。
見上げてや 生きるつもりの 桜花