昭和30年代、家に裁縫用の竹ものさしがあり、
小学生の私はそれを刀に見立てて、チャンバラごっこをしたり、
宿題の作文がはかどらないとき、さっさとやれと母親にたたかれたりした。
50歳になった頃、自分の腹の中に、50歳分のものさしが入ったような気がして、
年老いた父親の気持ちが少しわかるような気がした。
あれから10年たってみると、もう長いものさしは、使い道がないように思われる。
息子たちに言っておくべきことがあるようにも思うが、
わかってもらえるものさしを渡していないようにも思う。
30センチの竹ものさしで十分。
片方がセンチで、片方が寸。
もう人生一尺も残っていないかもしれない。
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