運転中、尿意をもよおし、通りかかった公園の便所を借りる。
公園横の歩道に車を乗りあげて止めたのだが、戻ってみると、歩道の植え込みに鳩がたくさん舞い降りて、地面をつついている。
餌があるのかしらとながめながら運転席に戻る。すると一羽がパタパタと飛び上がり、なぜか私の車の屋根の上に。
「何か美味いものがある」と思ったのか、それに続く鳩があり、次から次へと飛び立ち、それが車の屋根に降りて、バタバタ歩きまわり始めた。
車の屋根に餌なぞない。もしかして、食事の後の用足か。いま自分が便所を借りたばかり
なので、気分はよくわかる。
飛び上がる鳩の羽音と、屋根の上を歩きまわる足音でバタバタドタドタ大騒ぎになってきた。近くを走っている他の車も呆れてこちらを見ている。
車を便器にされてはたまらないので、エンジンをかけて、動き始めたが、鳩たちは「便所が動いた」と思ったか、小首をかしげている。
エンジンの音にもぜんぜん動じる気配がない。車道に下りて走り始めてやっと屋根から鳩が離れたらしい。走りながら、屋根がどんなことになっているか気になるが、考えるだけで憂鬱になる。昨日洗車したばかりなのに。
車の屋根が、鳩まみれ。椿事というが、鳩にも春がきておるか。