京都で定年後生活

2013年3月60歳で定年退職。

美術館と庭園めぐり、京都の四季の行事と花を綴ります。

『禅ー心をかたちに』京都国立博物館

2016-05-18 05:26:29 | 美術・博物館

京都国立博物館で『臨済禅師1150年 白隠禅師250年遠諱記念 禅心をかたちに』が開催されています。
私も不真面目ながら禅寺に足を運んでいますので展示会を楽しみに行ってきました。





今回の展示会は前期と後期に分けて書や絵画、仏教彫刻から茶の湯の道具など、国宝19件、重要文化財103件を含む226件が展示されています。
日本文化を形作ってきた多彩な作品にふれることができます。





国宝「慧可断臂図(えかだんぴず) 」雪舟等揚筆 室町時代(1496)

達磨が少林寺で岩壁に向かって坐禅を組んでいます。
そこへ後も慧可がやってきて参禅を乞うのですが、達磨は一向に振り向きません。
ひたすら達磨の応答を待ちます。
雪が降り慧可の膝が雪に埋もれてもなお振り向きません。
ついに慧可は自分の左肘を切り、達磨に差しだします。
絵はその瞬間を描いています。





達磨と慧可のこういうやりとりがあります。
慧可「私の心は安らかではありません。どうか私を安心させてください」
達磨「その不安な心をここへ持って来るがよい。安心させてやろう」
慧可「不安な心を探し求めましたが、全く得ることができません」
達磨「そうか、お前のために安心させてやったぞ」
皆さまいかがでしたでしょうか。

国宝「秋冬山水図」雪舟等揚筆 室町時代



禅宗の初祖達磨は6世紀の初めインドから中国に渡来し、教えは慧可(二祖)、慧能(六祖)へと伝えられます。
そして慧能の法系から多くの高僧が現れ、その一人臨済義玄(?~866)の教えが今日のわが国の臨済宗と黄檗宗に伝わっています。

国宝「瓢鯰図」大巧如拙筆 室町時代 妙心寺退蔵院

鯰は「真実の自己」です。その鯰を瓢箪で押さえようとしても到底無理です。
「真実の自己」仏心をよそに求めても得られないという意味です。





「七仏通戒偈」一休宗純筆

諸悪莫作、衆善奉行と書かれています。
悪いことをせずに善行を行うという意味ですが、実際は言うは安し行うは難しです。





「遺誡」 一休宗純筆 室町時代

私が死んだあと山中に籠ったり、私を真似て酒屋や淫坊に出入りして禅の講釈をたれるのは「仏法の盗賊」「わが門の御敵」と書かれています。





「達磨像」白隠慧鶴

日本の臨済宗中興の祖白隠慧鶴(1686~ 1768)は数千枚の達磨像を書いていると言われています。そのなかでも有名な絵です。
賛に「直指人心見性成仏」と書かれています。
誰でも心の中に仏がいる。それを見つければ悟り、仏になれる。





「慧可断臂図」 白隠慧鶴

もう一枚近年真筆と判定された作品です。
円相の中に達磨の顔、左腕を切ろうとする慧可。
賛には腕を切って達磨に入門し悟ったかもしれないが、立派な体に傷をつけて、、、と書かれています。





鎌倉時代にもたらされた禅宗は日本の社会と文化に大きな影響を与えました。
最近では欧米にも「ZEN」の思想が広がっています。
私が尊敬する東福寺の故福島慶道管長はよくアメリカに禅の指導に行っておられました。
禅の教えは言葉や文字によらず、師から弟子へ以心伝心で受け継がれています。

私どものような凡人には悟りは到底無理で、私は精神安定のために禅寺通いをしています。


この展示会は5月22日までで、秋に東京で開催されます。