道々の枝折

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病と態

2022年01月23日 | 健康管理
老人病に対する老人態というものについて考えてみたい。老人態(ろうじんたい)とは、老人一般に通有する身体の状態と定義しておく。老人風の(ろうじんてい)ではありません!

この世に老人病とか生活習慣病なる用語が造語されてから、爆発的に老人の疾病が増えたのではないかと疑っている。検査データが正常範囲を越えれば病であり、病ならば治療は不可欠となる。しかし若者と老人では、同じ項目に異常値が出たとしても、拠って来る原因には相当な違いがあると思う。若者の方がより重大である。老人の異常値は細胞の老化に素因があるもの、つまり老化のバイアスが掛かっているのであり、若者にはバイアスが掛かっていないだけのことである。老化のバイアスとは、自然治癒力つまり自発的な修復機能が損なわれていたり衰えたりしていることである。

老人といわれるものと健常な老人の身体との中間に、病には至らないが老人一般に特有の身体の状態というものがある。それが老人態である。
老人態なら、それを免れることはできない。いつの時代にも、連綿と老人たちが受忍していたはずのものである。

昔の老人なら当然受忍していた老人につきものの身体の不調を、当時病と認識していなかった。老人故の体調と理解していた。だから、可能性以上に改善を願ったり、予防のための検査数値に一喜一憂したりしていなかった。其処には知らないことの幸福があった。

高い血圧・高いコレステロール・高い中性脂肪・高い尿酸値・動脈硬化などは、生物の老化現象の現れで、これらは本来、病と認識するより老人態=老人状態と認識すべきものではないか?stateである。

なら即治療を受けなければならないが、なら治療の結果正常値に戻れたとしても、原因は依然取り除かれない。それは対処療法と同じである。態と病の境界は医師の判断に依る外ないが、老人態の方向は、間違いなく病に向かっている。老人態の方向を変えることはできない。人には天命というものがある。
老人につきものの凡ゆる不調に対して、医学をはじめとする現代科学は凡ゆる対応策を用意しているが、老人病と老人態を峻別することは医師でも難しいだろう。最終的には、個人・本人ということでである。

罹病に関しては、医師が適切な治療をしてくれるお陰で、私たちは安心して暮らしていられる。だが私たちはいつからか、老化に伴う不調を受忍しなければならない存在であることを忘れてしまったのではないか?老人態をと見ない考え方があっても良いのではないかと考える。自らが不調に寛大でなければ、老人の暮らしというものは苦が増すばかりであろう。ひとつの不調を取り除くために、別の不調が発生するのなら、ひとつ目を受忍していればよかったと誰もが思うのではないか?
長生きすることが病の問屋に成ることでは困る。

私たち老人が今日受けている治療の何割かは、病でなく本来は態と呼ぶべきものであったもので、自発的に正常に旧に戻す機能が働かないことこそが老化というものであり、父祖たちが堪え忍んで来たものである。

私たちの先祖たちは、たった100年前まで、鍼灸・按摩や湯治、民間療法、中には怪しげな加持祈祷など非科学的なものまで動員し、老化に素因のある不具合に対処して来た。

老人態を放置せず予防的治療を加えるようになったおかげで、日本人のQOLは国際比較でも高い水準になり、平均寿命は延びた。それに比例して、老人たちが医院や病院で過ごす時間も服薬の量も、飛躍的に増えた。長寿で得た時間を、医療機関での診療や検査の待機で費やすのでは、本末転倒である。老人の服薬の量は、放置すれば年齢と共に増えるのが当たり前になっている。

と看做すのは、人類の歴史から見て高々ここ数十年のことである。検査データが正常値を超えた態を、正常値に戻そうとする治療とそれに因るデメリットとは、医学的に検証されているのだろうか?もし信頼できる根拠が慥でないのなら、老人一般に通有の体の不具合は、老人自身の経験と覚悟で受忍すべきものではないかと考えたい。



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2 コメント

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納得です。 (オズマ)
2022-01-23 16:06:13
こんにちは。
小生も「値」が独り歩きする状況を懸念しています。
両親が80歳超えていますが,20歳の正常値と値を比べても意味はないはずなのに,と。
自身も,40代,50代で確実に「態」が変化していると感じます。
非常に役立つ知見でありがたく存じます。
引き続きよろしくお願い致します。
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Unknown (tekedon638)
2022-01-24 11:09:19
いつもご高覧いただき有難うございます。
間違うことも多いですが、見たこと聞いたことに反応させていただきます。
よろしくお願い致します。
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