子どもの頃に女性にチヤホヤされた男は、女性のおだてに弱い。女性というものは、そういう男を直感的に判るもので、「豚もおだてりゃ木に登る」という状態にたやすく導く。
恥ずかしながら老生、幼い頃にある習い事でチヤホヤを体験したので、洵に女性のおだてに弱い。
老生が若い頃のデパートでは、ネクタイ売り場の女店員は美人でおだてのエキスパートだった。多くの男性客は女店員の推奨するネクタイを盲目的に買ってしまう。
ネクタイ売り場で活躍した女性がママと呼ばれる職業に就けば、お店は繁盛間違いなしだろう。そんな酒場があった憶えがある。
老人になれば、下心というものが無いから、女性のおだてには乗らないだろうと思うのは素人の浅はかさ。年寄りほど、滅多に褒められないから、おだてに弱くなるものである。
ある時、山野草を観に市外の中山間地を訪れた。村おこし活動の一環で、駐車場や地場産品を売る店や休憩所のテントが設営されていた。
ひと通り山野草の自生地を観察し終えて、テント売店に入って行った。
お茶や椎茸、梅干し、漬物などが売られていた。一番奥のレジコーナーに居た3人の店員さん(地元の農家の婦人たちで、50代くらい)が声をかけてきた。
「ホント、赤がよく似合う男だねー!」と、3人がかりで口を揃えた。家で着ていた赤いポロシャツを着たまま来ていたのだった。
赤が似合うなどとは、老生生まれてこの方只の一度も言われたことがない。このおだては、甚(いた)く老生を嬉しがらせた。お茶をはじめ5品ほどを買ってしまったのである。勿論同行した妻に叱られた。
以来、どこへ行くにも、赤のポロシャツを着るようになった。バランスをとる為、黒のポロシャツを赤と同数になるよう購入した。赤ばかり着てはいられない。渋い色柄のシャツなど、見向きもしなくなった。
八十路の老爺でも、おだてられると、赤と黒のポロシャツを交互に着るようになる。ことほど左様に、男性は女性のおだてに弱いのである。
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