京都駅で、柿の葉すしを買って新幹線に乗った。たまたま他に気に入った駅弁が無かったから買ったまでで、特に好物というものではない。
封を開けて食べながら、これはかつて人が徒歩で旅をしなければならなかった時代の、究極の行動食ではなかったかと思った。
鯖と酢めしがひと口サイズで抗菌性のある柿の葉に包まれ、保存性がよく食中毒を防ぐ効果が大きい。嬉しいことに手を汚さず適量を口にでき醤油 . . . 本文を読む
京都を起点と終点にするバスツァーに参加し、丹後、但馬、丹波を巡った。年来願望していた順路である。
これら山陰三ヶ国は、なぜかより遠方の雲伯二ヶ国よりも馴染みのない陬遠の地と感じていた。京都か敦賀を経由しなければならないことに億劫さを覚え、今日に至ってしまった。
地理的にも歴史的にも昏いことで、かえって小学生の遠足のような新鮮な気分になった。
丹後半島のことは『古代史の謎は「海路で . . . 本文を読む
トビは留鳥で、ワシ・タカの仲間では唯一絶滅危惧種でないとか。それはこの鳥が猛禽類らしからず狩が苦手で、屍肉やゴミを餌にしているからだと言われている。食餌の幅が広いことは、、飢えないということで、種の保存性は高い。カラスに近い食性ということだろう。
屍肉を漁る生き物は、ハゲタカやハイエナもそうだが、どう見ても姿が美しくなく精悍でもなく、まして高潔にも見えない。造物主は被造物の食 . . . 本文を読む
酒と食が絶妙な関係にあることに気づき、双方にかぎりない愛着を覚えるのは、皮肉なことに、老年になって酒があまり飲めなくなり、食の量も減って来てからのこと。万事、盛りを過ぎてからでないと物事の本質が見えてこないのは、凡夫の凡夫たる所以か?
風土が凝縮されているのがその土地の酒であるなら、その風土の産物を活かして味に工夫を凝らすのが料理であろう。美味佳肴は酒が育てるものと言っても過言で . . . 本文を読む
「慕う」という日本語は、独特の情感溢れる佳い言葉である。英語にこの日本語のニュアンスをもった語はあるだろうか?
この言葉には、そこはかとない尊敬と恋情が綯い交ぜになっているような語感がある。決して強い感情ではない。情熱も感じられない。好く、惚れる、などという粗野な感情とは明らかに違う。愛するという他所行きの言葉とも異なる。体温が感じられる言葉である。
「好きです」というぶっきら . . . 本文を読む