私は60年近く前の20代の頃、病気で市内の病院に入院していたことがある。入院中のある日の深夜、救急の患者が搬送されて来たらしく、慌ただしい足音がして、看護師や医師が私の居た病室に出入りした。患者は私の隣のベッドに寝かされ、点滴や酸素吸入が施されている様子だった。翌朝、目醒めて隣を見ると、80歳ぐらいの老人が、酸素マスクをつけ横たわっていた。高熱を発しているらしい。その老患者は、ひとり暮らしで、風邪 . . . 本文を読む
かつては離婚理由に「性格の不一致」が真っ先に挙げられていたものだが、それが荒唐無稽な暴論であることが一般に理解されるようになって、その 聞く。これも老生に言わせると、前者と変わらない暴論であるように思う。価値観も性格の影響下にあり、個性というものの本質上、一致などある訳がない。人間というものは、自分が好きになった人と同じ価値観を共有したいもので、つい無いものねだりをしたがる。それが押し . . . 本文を読む
テレビ主導のエンターテイメントが、全般的に社会的貢献度を低下させていると見るのは、私だけではないだろう。映像・音楽・演芸・スポーツ・ゲーム・遊戯・旅行・公営競技等々、今やテレビはエンターテイメントの放映なしでは成り立たない産業と言っても過言ではない。今日の民放テレビ局は、もはや報道機関としての存在意義を失い、エンターテイメントに依拠しなければ、スポンサーを獲得できないのだろう。そこにかつて在ったジ . . . 本文を読む
早くも馬脚を露した石破首相。長い雌伏の果ての登板に、判官贔屓で当初は期待と応援の気持ちもあったが、国会での所信表明で「楽しい日本」には、期待を裏切られがっかりした。首相の言わんとする「楽しい」が何を指すのか?詳しい説明がなく、国民には全く趣意がわからない。腹蔵しているものがあっての発言だったはずである。彼が戦車や軍艦の模型を作って楽しんでいた少年時代、その楽しみの向こうに何が見えていたのか?それを . . . 本文を読む
半世紀以上も前のこと、私は伊豆半島の紺碧の海を見下ろす高原の一角にある、当時としては理想的な高齢者施設を訪れた。そこで暮らす高齢の夫妻に所用があっての訪問だった。まだ介護制度もない昭和の時代である。全面芝生の広い敷地内には諸処に樹木が植えられ、花々が花壇に咲き乱れていた。敷地内には多数の2階建て住戸(上下階温泉暖房2DK各一戸)が散在し、それぞれ、上階住戸専用と階下住戸専用の上下2段の屋根付き回廊 . . . 本文を読む