トルストイはその名著「戦争と平和」の中で、戦場での勝敗を決めるものは、指揮する将官の力量でなく、軍隊の圧倒的多数の兵士や下士官たちの、臨機応変の闘いぶりに懸かっていることを、ロシアの名将クトォーゾフの述懐の形で強調している。
戦場での功をひとりの将に帰す考え方を認めないのは、開明的な貴族、トルストイの真骨頂だが、我々には「一将功成って万骨枯る」という中国流の固定観念が染み付き、兵卒の活躍は戦 . . . 本文を読む
再び佐鳴湖の日の出を観に行った。暖かいと言っても、師走の朝の空気は冷たい。
川中で孤影を水に映すアオサギが、ひどく落魄して見えた。
続いてダイサギの群れに会う。こちらは仲間が多く、和気に満ちている。
東の空が明るくなってきた。薄明光線を観て感動する気持ちは、人間に共通するものらしい。おそらく人類脳には、毎夜訪れる闇への恐怖が沁み込んでいるに違いない。
雲が丘の端にかかっている。 . . . 本文を読む
人間は親であれ身内の誰であれ、人に愛されるべく生まれてくる。万人等しく、愛される権利をもって生まれてきているが、その権利が守られるかどうかは運命が握っている。不幸にして、幼い頃に愛の権利を享受できず、愛の体験に薄い運命もある。
しかし私たちは、運命の奴隷ではない。自立できる年齢になったら、運命を切り拓き、自らの力で愛を獲得する人生を歩まなければならない。幾たび失敗しても、真実の愛を自分の . . . 本文を読む
この10年、市内に数多くあった女子高校の共学化が進み、当地で女子高校はただ1校だけになってしまった。この傾向は全国の都市でも同じ普遍的な現象だ。女子中学生の共学志向、女子の大学進学率の増加、少子化、良妻賢母教育という幻想価値の消滅も背景にあるだろう。
女子校の存在意義が、旧い日本の価値観というより、儒学の人間性を無視した観念に基づく女性観にあったことは疑いがないだろう。それは、男子教育が目指す価 . . . 本文を読む