お気に入りのレストランや料理店に「常連」とか「お馴染み」と認められることは、誰でも嬉しいことだろう。現下はInstagramがその無邪気な虚栄心を後押ししている面もある。店との縁が他の人より深いことを拡散することは、自尊心を擽るものがあって、人を快活にするのではないかと思う。店の側が、来店した有名人の色紙や写真を壁一面に貼り付けているのは、宣伝効果を考えてのことだろう。これも虚栄心の発露と思われる . . . 本文を読む
私は読書を否定する者ではないが、この国が漢籍の学習を始めて以来の長きに亘り続いて来た、日本人の読書偏重には、些か違和感を覚える。先進の知識を学ぶのを書物に頼ることに異存などあるはずもないが、読書を評価し過ぎると、それが目的化する。某評論家の記事を読んでいたら、こんな思いが浮かんできた。 読書家は、作家を身近に感ずるものである。愛読しているうちに、一体感を覚えるまでに成る。読むことに長けた . . . 本文を読む
私たちは目下ネット資本主義という経済社会の真っ只中を生きている。産業資本主義、グローバル金融資本主義に続くネット資本主義が、どのような国際社会を形成し、私たちの個人生活と社会生活にどのような変化をもたらし、私たち個々人の幸福の達成にどのような影響を与えるのか、老爺には予測もつかない。人類が富と知識の蓄積を覚えたことで発展して来た資本主義は、単純にバージョンアップを重ねて来たのではなく、新しいバージ . . . 本文を読む
文章を書くということは、テーマを定めて思考を重ね思索を巡らし、論理を構築して文脈を調え文字を綴る、という一連の作業である。テーマの選定は独創性に富み、論旨は明解、論理は緻密で表現は斬新かつ大胆でありたい。取り上げるテーマは無限にある。談話と違って、時と場に配慮する必要がないから、これほど気随で愉快なことはないだろう。文筆で身を立てたい若者が多いのも理解できる。しかし、文筆家として成功出来る人はごく . . . 本文を読む
私たちの国は、国土の4分の3が山地の山国である。というより、海から迫り上がった島々。島国と呼ぶのが適切だ。私たちは山岳民族でなく、フィリピンやインドネシアと同じ、島嶼民族であることを改めて自覚しておきたい。私たちの先祖は、海から川を遡って内陸に分け入った。そこからは、山道が縦横に巡らされていった。大昔から人が繰り返し歩けば、道は自ずとできるのだから、山道は島内至るところに通じている。人煙のあるとこ . . . 本文を読む