JINX 猫強

 オリジナルとかパロ小説とかをやっている猫好きパワーストーン好きのブログです。
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経費削減SS (一輝と猫15)

2013-08-03 01:38:00 | ノンジャンル
ーーお前さんの考えなどお見通しじゃ、なざらなワシは仙道を極めておる、ホラ、この通り。
“ほら、この通り”と言って飛び上がった老人は地に脚を付けたときには、猫の姿に戻っていた。
ーーキッ、キサマッ。
 さっきまでベッドの脇のテーブルで、硬い身体を無理無理グルーミングしていた猫の姿に、瞠目する一輝の前で、猫は再度跳ね上がり、着地したときには元の老人の姿に戻っていた。
ーー何事を気合の入れ方じゃ、ワシぐらいの力を手に入れば、なににでも姿を変えられるでな…。
 笑顔でそう宣(のたま)う老人の姿を目にしながら、一輝は氷河との会話を思い出していた。
 猫がベランダにいたと言いはる氷河を、一輝は嗤った。
“猫が各部屋が独立しているマションの17階にいるわけがないではないか”と。
 だが、猫に成れたのなら、鳥に慣れないわけはない。氷河の言葉は本当だったのだ。
ーーなぜ、オレの住居が解った?
 老人とは、氷河に不思議な果実を与える前に別れている。
ーー匂いじゃよ、匂い…ワシぐらい仙術を極めると、お前団に付いていた僅かな香りを伝い、目当の匂いを探すことなど造作もないのじゃ。
ーーオレに付いていた、香り…。
 一輝は目の前で胸を張る老人を見据え、言葉と続けた。
ーーなぜ、オレの香りではなくて、その僅かな香りの人間をさがす?
ーーワシは人を見る目が有る。お前さんは、猫の世話などは絶対にやかん男じゃ。
 断言され、一輝はやや不機嫌になった。
 だが、自分が猫のトイレを変え、ブラッシングをし、毎日、餌に気を使える姿は、想像できない。
 そういうマメさは、一輝は氷河に任せることにしているからだ。
ーーキサマッ、狙いは氷河か?