--キサマッ、狙いは氷河か?
さっき氷河の素肌を舐め、触りまくったネコの暴挙を思い出し、一輝は肚を立てた。
--確かに、氷河という青年は気に入っておるが…コラッ、止めんかッ。
拳を握り宇宙を高めた一輝に、老人が慌てた。
--ワシがあの青年が気に入ったというのは、お主のような邪念からではないわッ。
一輝の拳を躱しながら、老人が悲鳴を放った。
--黙れッ、変態ジジイがッ!
一輝は老人のいる場所から、老人が躱すであろう範囲に、無数の拳を叩き込んだ。
--やめんか、コラッ。部屋が壊れてしまうではないかッ!
--部屋など、知るかッ!
このジジイは猫に化け、氷河とも共に入浴し、氷河の膝に当然の様に全身を委ね、氷河のマッサージを受けたのだ--。
一輝は猫のやるだと思って、膝から叩き落としたいのを我慢していたのだ。
だがあのフザけた猫は猫ではなく、珍妙な術を身につけただけの、ただの変態スケベロジンだったのだ。
よくも、と一輝は思った。
氷河の肌も膝も一輝の、一輝だけのものなのだ。
それを、猫の姿を真似ただけという老人に、膝には居座られ、肌は舐められてしまった。
絶対に、許すことの出来ぬジジイであった。
--ま、待てッ! こ、これはいらぬか?
老人が懐から探りだした袋の中から、素早く小さな実を取り出した。
--それは、もしや…。
一輝は動きを止めていた。
老人のシワだけらの掌には、そばの実のような果実が乗せられていた。
--そうじゃ、この間、お前さんに助けて貰った礼にやった実じゃ。
老人は一輝の前で、果実を乗せた掌を翳(かざ)してみせた。
--ほーれ、これが欲しいか?
老人が果実の一つを摘み、一輝に示した。
--寄越せ。
老人の手にしている果実こそ、一輝があの事件から探し求めていた物であった。
一輝は暇を見ては、老人が徘徊していそうな公園や駅などに足を伸ばし、老人を--いや、この果実を探した。
だが老人も果実も、見付け出すことはできなかった。
灯台下暗し、という言葉がある。
老人は事もあろうに猫に化け、氷河に甘え暮らしていたのだ。
「続く」
さっき氷河の素肌を舐め、触りまくったネコの暴挙を思い出し、一輝は肚を立てた。
--確かに、氷河という青年は気に入っておるが…コラッ、止めんかッ。
拳を握り宇宙を高めた一輝に、老人が慌てた。
--ワシがあの青年が気に入ったというのは、お主のような邪念からではないわッ。
一輝の拳を躱しながら、老人が悲鳴を放った。
--黙れッ、変態ジジイがッ!
一輝は老人のいる場所から、老人が躱すであろう範囲に、無数の拳を叩き込んだ。
--やめんか、コラッ。部屋が壊れてしまうではないかッ!
--部屋など、知るかッ!
このジジイは猫に化け、氷河とも共に入浴し、氷河の膝に当然の様に全身を委ね、氷河のマッサージを受けたのだ--。
一輝は猫のやるだと思って、膝から叩き落としたいのを我慢していたのだ。
だがあのフザけた猫は猫ではなく、珍妙な術を身につけただけの、ただの変態スケベロジンだったのだ。
よくも、と一輝は思った。
氷河の肌も膝も一輝の、一輝だけのものなのだ。
それを、猫の姿を真似ただけという老人に、膝には居座られ、肌は舐められてしまった。
絶対に、許すことの出来ぬジジイであった。
--ま、待てッ! こ、これはいらぬか?
老人が懐から探りだした袋の中から、素早く小さな実を取り出した。
--それは、もしや…。
一輝は動きを止めていた。
老人のシワだけらの掌には、そばの実のような果実が乗せられていた。
--そうじゃ、この間、お前さんに助けて貰った礼にやった実じゃ。
老人は一輝の前で、果実を乗せた掌を翳(かざ)してみせた。
--ほーれ、これが欲しいか?
老人が果実の一つを摘み、一輝に示した。
--寄越せ。
老人の手にしている果実こそ、一輝があの事件から探し求めていた物であった。
一輝は暇を見ては、老人が徘徊していそうな公園や駅などに足を伸ばし、老人を--いや、この果実を探した。
だが老人も果実も、見付け出すことはできなかった。
灯台下暗し、という言葉がある。
老人は事もあろうに猫に化け、氷河に甘え暮らしていたのだ。
「続く」