--待て、そうした場合、氷河はどうなる?
氷河が自分のいない場所であの果実を口にするような事があれば…いや、口にした場所に他の人間がいたら--それを思う一輝の表情から、血の気が失せていた。
--そうじゃのう…この実は、飲ませた者の想いを叶える仙薬じゃから、あの青年が自分で口にすることはあるまい。ワシなら、普段態度の大きなお前さんに飲ませるがの…。
--老人は腕を組み、考える仕草を見せた。
--オレに飲ませてどうする。
それなら願ってもないことであった。精力が倍増した一輝は、忽ち氷河を捻じ伏せ、押さえつける。
--お前さんは、呑気じゃの。
老人は唇の端を吊り上げた。
--あの仙薬は飲ませた者の望みを叶える薬じゃ…あの青年がお前さんに部屋の掃除や料理をさせようと思えば、いくらお前さんでも--。
--待て。
一輝は老人の言葉を遮った。
--待てといわれても、ワシは礼儀正しい人間じゃ。ここのところの恩義に報いんまま、ここを出て行くわけにはいかんのじゃよ。
そう口にし、老人はまた一輝に背を向けた。
--待てというに。
氷河に仙薬を与えると聞き、一輝は慌てた。
氷河と同居をしてから、一輝は家事などはやったことがない。そういうチマチマとした細かいことは、氷河がやるものと決めていたからだ。
が、氷河が食事にあの仙薬を混ぜたとする。
あの氷河に、一輝の衣服を破ってまで、一輝を襲うように求めさせた仙薬であった。
そんなモノを飲まされたら、立場が逆転してしまうではないかと、一輝は慌てた。
--ちょっと待て。
自らに背を向け歩き出した老人に、一輝は声をかけた。
--ワシは今から無宿の身。早く次の宿を探さねばならんのじゃが…。
一輝をチラリと見はしたが、老人は歩みを止めなかった。
「続く」
氷河が自分のいない場所であの果実を口にするような事があれば…いや、口にした場所に他の人間がいたら--それを思う一輝の表情から、血の気が失せていた。
--そうじゃのう…この実は、飲ませた者の想いを叶える仙薬じゃから、あの青年が自分で口にすることはあるまい。ワシなら、普段態度の大きなお前さんに飲ませるがの…。
--老人は腕を組み、考える仕草を見せた。
--オレに飲ませてどうする。
それなら願ってもないことであった。精力が倍増した一輝は、忽ち氷河を捻じ伏せ、押さえつける。
--お前さんは、呑気じゃの。
老人は唇の端を吊り上げた。
--あの仙薬は飲ませた者の望みを叶える薬じゃ…あの青年がお前さんに部屋の掃除や料理をさせようと思えば、いくらお前さんでも--。
--待て。
一輝は老人の言葉を遮った。
--待てといわれても、ワシは礼儀正しい人間じゃ。ここのところの恩義に報いんまま、ここを出て行くわけにはいかんのじゃよ。
そう口にし、老人はまた一輝に背を向けた。
--待てというに。
氷河に仙薬を与えると聞き、一輝は慌てた。
氷河と同居をしてから、一輝は家事などはやったことがない。そういうチマチマとした細かいことは、氷河がやるものと決めていたからだ。
が、氷河が食事にあの仙薬を混ぜたとする。
あの氷河に、一輝の衣服を破ってまで、一輝を襲うように求めさせた仙薬であった。
そんなモノを飲まされたら、立場が逆転してしまうではないかと、一輝は慌てた。
--ちょっと待て。
自らに背を向け歩き出した老人に、一輝は声をかけた。
--ワシは今から無宿の身。早く次の宿を探さねばならんのじゃが…。
一輝をチラリと見はしたが、老人は歩みを止めなかった。
「続く」