栽培植物の起源と伝播 No13
ヒユ科アマランサス属(Amaranthus)には約70の種があり、そのうち60種はアメリカ大陸原産という。自然交配がしやすいので雑種が多く分類が難しいようだ。
属名のアマランサスは、ギリシャ語のamarantos(しおれることのない)に由来し、不死を象徴する。
アマランスは、茎・葉は野菜として食べ、ほうれん草のような味がするという。実は粉にして小麦粉のように調理し、或いはポップコーンのようにして焼いて食べるので、小麦・米などより利用するところが多い有能な植物だ。食用だけでなく、観賞用としても価値があり、薬用植物・染料としても使われていたので、オールマイティな有用植物といえるだろう。
コロンブスがアメリカ大陸に到着した1492年以降、メキシコ原住民の人口が激減した。その理由として、農場・鉱山などでの重労働による搾取、ヨーロッパ人が持ち込んだ伝染病などがあげられるが、人身御供をする宗教と結びついたアマランスの栽培禁止による身体を維持する食料・栄養摂取の激変も大きな要因となっていたようだ。
食料としてオールマイティな存在であったアマランスの禁止は、同時代の日本人に米の栽培・摂取を禁止するようなものに近い。
穀類として使用されたアマランスには重要な種が三つあり、メキシコ・グアテマラ原産が二種(Amaranthus cruentusとAmaranthus hypochondriacus)、三番目の種が古代アンデス地方の住民の食料であったAmaranthus caudatusという。
アマランスとはどんな植物かというところをこの三品種にスポットを当ててみていこう。
(1)Amaranthus cruentus L.(1753) アマランサス・クルエンタス
(写真)Amaranthus cruentus
(出典)fine gardening
(出典)Plants For A Future
アマランサス・クルエンタスは、Purple amaranth, Red amaranth, Mexican grain amaranth(メキシコの穀物)とも呼ばれ、和名ではスギモリケイトウで知られる。
耐寒性が弱い1年生の草丈2mにも育つ顕花植物で、夏に赤紫の花が咲き実を結ぶ。
メキシコ・グアテマラが原産地で、紀元前4000年頃にはメキシコあたりの中央アメリカで食料として使用されていた。
その姿は観賞用としても素晴らしいが、種子はタンパク質が豊富で最近では健康食品として使用されている。
(2)Amaranthus hypochondriacusL.(1753)アマランサス・ヒポコンドリアコゥス
(出典)University of Wisconsin-Stevens Point
(出典)ミズリー植物園
アマランサス・ヒポコンドリアコゥス(Amaranthus hypochondriacus)は、Prince-of-Wales'-feather(ウェールズの王子の羽)、prince's-feather amaranthと呼ばれ、草丈120cmとアマランサス・クルエンタスよりは小さめの一年草で北アメリカ南部が原産地で、現在では熱帯・亜熱帯・温帯地方で観賞用、穀物として栽培されている。
(写真)The Prince of Wales's feathers
(出典)Flickr.com
※ The Prince of Wales's feathersとは、イギリス連邦の国王の後継者のバッジで、三つの白い羽を束ねる金の王冠から成る
栽培品種はその原種がよくわからないがAmaranthus hypochondriacusは、米国南部および北メキシコ原産の野生種Amaranthus powellii S.Wats.(1875)とAmaranthus cruentus のハイブリッドではないかと考えられている。
Amaranthus powellii について簡単に触れておくと、green amaranth(緑のアマランス)、Powell's amaranth (採取者パウエルのアマランス)と呼ばれるように緑色が特色のアマランスで、1874年に米国アリゾナでこの品種を採取したパウエル(Powell,John Wesley 1834-1902)を記念してこの名前がつけられた。
(写真)Amaranthus powellii S.Wats.(1875)
(出典)New England Wild Flower Society
(3)Amaranthus caudatus.L.(1753) アマランサス・カウダトゥス>
(出典)ミズリー植物園
アマランサス・カウダトゥス(Amaranthus caudatus)は、南アメリカペルーのアンデス原産でアフリカ、インドでも自生している。草丈150cm程度で夏場に赤紫の房状の垂れ下がった花が咲く一年草または二年草で、英名ではlove-lies-bleeding、velvet flower、tassel flower amaranthと呼ばれ、和名ではひも状のケイトウという意味合いでヒモゲイトウと呼ばれる。
アンデス地方では若い葉を野菜として使い、実は穀類として朝食に食べ、このアマランスのことをスペイン語でキウィチャー(Kiwicha)と呼んでいる。
英名の“love-lies-bleeding”とは、エルトンジョンの亡き友にささげる歌「Love Lies Bleeding」ではなく、“葉野菜として利用される若葉”のことを意味する。
(写真)アマランスの実
この種の祖先は、Amaranthus quitensisとも推測されており、栽培を通じて品種改良されてきたようだ。このアマランサス・クイテンシスを採取したプラントハンターはフンボルト南米探検隊の植物学者ボンプランがエクアドルで採取している。
(写真)Amaranthus quitensis Kunth
(出典)wikipedia
ヒユ科アマランサス属(Amaranthus)には約70の種があり、そのうち60種はアメリカ大陸原産という。自然交配がしやすいので雑種が多く分類が難しいようだ。
属名のアマランサスは、ギリシャ語のamarantos(しおれることのない)に由来し、不死を象徴する。
アマランスは、茎・葉は野菜として食べ、ほうれん草のような味がするという。実は粉にして小麦粉のように調理し、或いはポップコーンのようにして焼いて食べるので、小麦・米などより利用するところが多い有能な植物だ。食用だけでなく、観賞用としても価値があり、薬用植物・染料としても使われていたので、オールマイティな有用植物といえるだろう。
コロンブスがアメリカ大陸に到着した1492年以降、メキシコ原住民の人口が激減した。その理由として、農場・鉱山などでの重労働による搾取、ヨーロッパ人が持ち込んだ伝染病などがあげられるが、人身御供をする宗教と結びついたアマランスの栽培禁止による身体を維持する食料・栄養摂取の激変も大きな要因となっていたようだ。
食料としてオールマイティな存在であったアマランスの禁止は、同時代の日本人に米の栽培・摂取を禁止するようなものに近い。
穀類として使用されたアマランスには重要な種が三つあり、メキシコ・グアテマラ原産が二種(Amaranthus cruentusとAmaranthus hypochondriacus)、三番目の種が古代アンデス地方の住民の食料であったAmaranthus caudatusという。
アマランスとはどんな植物かというところをこの三品種にスポットを当ててみていこう。
(1)Amaranthus cruentus L.(1753) アマランサス・クルエンタス
(写真)Amaranthus cruentus
(出典)fine gardening
(出典)Plants For A Future
アマランサス・クルエンタスは、Purple amaranth, Red amaranth, Mexican grain amaranth(メキシコの穀物)とも呼ばれ、和名ではスギモリケイトウで知られる。
耐寒性が弱い1年生の草丈2mにも育つ顕花植物で、夏に赤紫の花が咲き実を結ぶ。
メキシコ・グアテマラが原産地で、紀元前4000年頃にはメキシコあたりの中央アメリカで食料として使用されていた。
その姿は観賞用としても素晴らしいが、種子はタンパク質が豊富で最近では健康食品として使用されている。
(2)Amaranthus hypochondriacusL.(1753)アマランサス・ヒポコンドリアコゥス
(出典)University of Wisconsin-Stevens Point
(出典)ミズリー植物園
アマランサス・ヒポコンドリアコゥス(Amaranthus hypochondriacus)は、Prince-of-Wales'-feather(ウェールズの王子の羽)、prince's-feather amaranthと呼ばれ、草丈120cmとアマランサス・クルエンタスよりは小さめの一年草で北アメリカ南部が原産地で、現在では熱帯・亜熱帯・温帯地方で観賞用、穀物として栽培されている。
(写真)The Prince of Wales's feathers
(出典)Flickr.com
※ The Prince of Wales's feathersとは、イギリス連邦の国王の後継者のバッジで、三つの白い羽を束ねる金の王冠から成る
栽培品種はその原種がよくわからないがAmaranthus hypochondriacusは、米国南部および北メキシコ原産の野生種Amaranthus powellii S.Wats.(1875)とAmaranthus cruentus のハイブリッドではないかと考えられている。
Amaranthus powellii について簡単に触れておくと、green amaranth(緑のアマランス)、Powell's amaranth (採取者パウエルのアマランス)と呼ばれるように緑色が特色のアマランスで、1874年に米国アリゾナでこの品種を採取したパウエル(Powell,John Wesley 1834-1902)を記念してこの名前がつけられた。
(写真)Amaranthus powellii S.Wats.(1875)
(出典)New England Wild Flower Society
(3)Amaranthus caudatus.L.(1753) アマランサス・カウダトゥス>
(出典)ミズリー植物園
アマランサス・カウダトゥス(Amaranthus caudatus)は、南アメリカペルーのアンデス原産でアフリカ、インドでも自生している。草丈150cm程度で夏場に赤紫の房状の垂れ下がった花が咲く一年草または二年草で、英名ではlove-lies-bleeding、velvet flower、tassel flower amaranthと呼ばれ、和名ではひも状のケイトウという意味合いでヒモゲイトウと呼ばれる。
アンデス地方では若い葉を野菜として使い、実は穀類として朝食に食べ、このアマランスのことをスペイン語でキウィチャー(Kiwicha)と呼んでいる。
英名の“love-lies-bleeding”とは、エルトンジョンの亡き友にささげる歌「Love Lies Bleeding」ではなく、“葉野菜として利用される若葉”のことを意味する。
(写真)アマランスの実
この種の祖先は、Amaranthus quitensisとも推測されており、栽培を通じて品種改良されてきたようだ。このアマランサス・クイテンシスを採取したプラントハンターはフンボルト南米探検隊の植物学者ボンプランがエクアドルで採取している。
(写真)Amaranthus quitensis Kunth
(出典)wikipedia
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