ヒトと犬は相互にオキシトシンの分泌を出して絆を深めるらしい
今テレビで聞きましたので忘れないうちに・・・
余りに素敵なお話でした。
広く沢山の方に知ってほしい内容です。
ネットで詳細を見つけましたリンクさせていただこうと思いましたが、公開期間限定のようですのでコピペします。
視点・論点「ヒトとイヌ 絆の秘密」 2017.06.20
イヌは本当に不思議な動物です。
動物の種も違い言葉も通じないのですがなぜか心が通じる気がします。
それは「心が通じる気がする」のか「本当に通じている」のでしょうか。
これまで多くの認知心理学者がこの謎を解こうとさまざまな行動テストを実施してきました。
これらの研究を通してヒトとイヌの関係性が明らかになりつつあります。
実はこのようなイヌの行動研究が盛んになったのは2000年に入ってからです。
それまでイヌは家畜化された動物の一種であり行動学や遺伝進化学の領域では研究の対象となっていませんでした。
イヌを研究するよりはむしろ共通の祖先種として知られるオオカミの研究が行われてきました。
それが2000年代に入りそれまで霊長類や大型動物の研究をしてきた人たちがこぞってイヌの研究を開始する事になります。
まさにイヌ研究の黄金期がスタートしたといえます。
近年の比較認知研究によってイヌの持つ卓越した社会認知能力社会知性特にヒトとのコミュニケーション能力の驚異的な高さが見いだされてきています。
例えばイヌはヒトが指をさした先にあるものを選ぶ事ができます。
またヒトが見ているものを一緒に見る事ができます。
これらの能力をヒトでは共同注意といいますがヒトとの共同注意に関してイヌは祖先種を同じくするオオカミよりもうまく行う事ができます。
更に驚くべき事にヒトに遺伝的に近縁といわれるチンパンジーよりも成績がよいという事が分かりました。
イヌは多くの動物の中で最もヒトに類似したコミュニケーション能力を持つ事が分かってきたのです。
これらの結果からイヌはヒトとの長い共生の歴史を経てヒトと同様のコミュニケーション能力を得てヒトとあうんの呼吸で生活する事が可能となったと考えられています。
イヌとの生活がもたらすものそれはスムーズなやり取りを介した共同生活だけではありません。
イヌは困った時にヒトの目をのぞき込みどこか子どもっぽい顔やしぐさで「入れて下さい」「助けて」「お願い」といった気持ちを表します。
そして多くの場合飼い主はそれを受け入れる事に喜びを感じている事でしょう。
かくいう私もその一人です。
このイヌとヒトとの特別な関係性においてはやはりヒトの親子間に近い何らかのシグナルのやり取りがあるのではないかと考えられてます。
その生物学的な証しとして提唱されている分子がオキシトシンです。
オキシトシンは母乳を作ったり分べんを助けたりとお母さんのための必要なホルモンです。
そのホルモンは脳の中でも働いてお母さんの母性を高める作用を持ちます。
また相手との親和的な関係を作る信頼関係を構築する相手を助けるなどの高い協調的な社会関係性にも関与します。
イヌとヒトは情緒的につながりお互いを大事な存在とする事が逸話的には知られてきました。
しかしその特別な関係性すなわちヒトとイヌの絆の形成に関しての科学的な検証はなされてきませんでした。
ではイヌとの触れ合いや視線によるコミュニケーションは果たして飼い主のオキシトシン分泌量を上昇させるのでしょうか。
私たちの研究室ではイヌの飼い主に向けた視線はアタッチメント行動として飼い主のオキシトシン分泌を促進するとともにそれによって促進した相互のやり取りはイヌのオキシトシン分泌も促進する事を明らかにしました。
またイヌでのオキシトシン作用を明らかにするためにイヌにオキシトシンを投与した実験ではイヌの飼い主への注視行動が増加しそれに従って飼い主のオキシトシン分泌が増えました。
これらの事からヒトとイヌとの関係には母子間と同様な視線とオキシトシン神経系を介したポジティブ・ループが存在しそれにより科学的な絆が形成される事が示唆されました。
またオオカミにはこのような視線とオキシトシンの関連は見られませんでした。
つまりイヌは進化の過程でヒトに類似したコミュニケーション・スキルを獲得しただけでなく本研究で明らかとなったポジティブ・ループも獲得した事でヒトとの絆を形成する事が可能になったと考えられます。
このようにポジティブ・ループを共有できるイヌとヒトとの関係が寛容性の獲得とそれに伴う協力的関係を基盤として成立したという可能性はヒトの本質やヒト社会の成り立ちを理解するための手がかりとなると考えています。
予想以上にというか予想どおりというかイヌは情緒深くヒトとつながり心をつないでいる事が分かってきた事になります。
そしてイヌと共通の祖先種を持つオオカミではそのようなヒトとのつながりを持つ能力が確認できない事からイヌは進化と家畜化の過程でこの能力を得たと考えられます。
そしてこの情緒的なつながりは一つの分子オキシトシンがつかさどっているという事です。
個体をつなぐ一つの分子が私とイヌたちをつなぐのです。
ノーベル医学生理学賞を受賞したローレンツは言います。
きっと今回見いだした生物学的なつながりを意味していたのではないかと考えています。
イヌは最古の家畜であり他の家畜が約1万年前に家畜化されたのに比べ4万年ほど前からヒトと共生してきました。
この共生の過程でヒトとイヌは特殊な関係性を構築し最も身近な動物として広くヒト社会に介在しています。
なぜそのような高度な能力をイヌが持つようになったのかの全容解明はこれからの研究を待たねばなりません。
しかしいくつかのヒントは明らかになりつつあります。
イヌはオオカミと共通の祖先から進化してきたといわれていますがイヌはイヌとして独自の進化を遂げてきた事が遺伝子の解析からも明らかとなってきました。
またいくつかの遺伝子がイヌの高い社会性に関与する事も報告されています。
現在イヌと生活する事でのヒトの心身における恩恵に関する報告は枚挙にいとまがありません。
例えば小児アレルギーや戦争帰還兵などのうつ病自閉症慢性疼痛や消化器疾患においてイヌとの生活が改善効果を持つ事が報告されています。
この事はイヌは決して狩りや運搬などのヒトの道具的な利用に限らずヒトが健康に生きるためにも非常に強いプラスの効果をもたらしている事が分かります。
お互いが恩恵を受ける関係それを育んだイヌの進化の過程ヒトとの共生の歴史を知る事はつまりヒトがなぜイヌとは特別な関係が結べたかを理解するヒトという動物種の理解にもつながります。
イヌがなぜイヌになったのかそしてその事によりヒトはどのような進化的変化を遂げたのかそれらを明らかにする日がやがて訪れるでしょう。
そして地球で生まれた生命体が長い歴史をかけて育んだヒトとイヌの関係性これからも永遠にと願っています。
2017/06/20(火) 04:20〜04:30
NHK総合1・神戸
視点・論点「ヒトとイヌ 絆の秘密」[字]
麻布大学教授…菊水健史
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【出演】麻布大学教授…菊水健史