少女は少年に言いました
「世の中に理不尽は溢れていても
それに負けない自分を作りたいのよ」
少年は少しぼーっとしながら彼女に言いました。
「そんなに簡単じゃないんだろ」
「そうよね。何度泣くかしら?声を上げるかもしれない。投げやりになりそうになるかもしれない。怒りに任せて何かを投げつけたりするかもしれないわ。自分じゃないようになる日もきっとあるんでしょうね」
「そりゃそうだよ。何だかそれはただの理想みたいな気がするよ」
「そうよねえ。でもね、理想でも、それに向かって歩いて行きたいなと想うのよ。」
「そんなものなのかなあ」
日が照り始め
朝の冷たい空気は少し柔らかくなっていました。
霜で白かった草もすっかり柔らかな風合いになっていました。
春はもうすぐもうすぐ
「信じたり、真摯に向き合ったりって簡単なことなのかと思っていたの。でもね、案外難しい。心ってまるで生き物だわ。手に取って捕まえようとしてもスルスル手から落ちるのよ。自分の心なのにね。おかしいわ。」
少年は少女の例え話が面白くて少し笑いました。