或る日の早朝 カタカタ カタカタ と言う感じの鳥の声が聞こえた
今迄、聞いた事の無い鳴き声
一方 ピピ ピピ と言う可愛い声も聞こえる
高い電柱にとまっている方が、一回り体の小さい可愛い声の主だった
もしかして、雄が雌の気を引いているのかな? と思った
その日の夕方
主人 「カタカタ啼く方が、ムカデを捕まえて殺す現場を見たよ
でも食べもしないでづっと銜えているんだよ」
私 「やっぱり可愛い鳴き声の方が雌で、餌で気を引いてるんじゃないの
かな~」
なんて、夫婦で他愛無い会話
そして次の朝、カタカタと啼く鳥の声が一段と けたたましい
そして相変わらず、捕まえた昆虫か何かを銜えている
良く見ると、何と ヤモリ・・・・・・・・・
私 「ねえ!今度はヤモリを銜えているよ」
主人 「おい!何かおかしくないか?何回も大きい方が餌を銜えたまま車庫
の中を出入りしてるし」
私 「おかしい?」
主人 「うん!車庫の中から、可愛い鳥の声が聞こえる気がする・・・・」
私 「え?まさか車庫で巣でも作ってる?」
主人は、車庫を開けて車を一旦出すと言いだした
私は車庫の中を点検したが、鳥の姿など無い
私 「鳥なんていないよ」
主人 「おい!車庫のシャッターの格納部分から声がしないか?」
私 「え?だって格納部分って、隙間が無いよ。入れる訳無いよ!」
私がそう言った途端、トコトコっと格納部分から足音の様な音・・・・・・
え?ええええええええええええ
確かに聞こえた
そして ピピ ピピ っと可愛い声も確かに聞こえて来る
??????????????
どうやったら入れるの?
主人 「もしかしたら、俺が帰った時にリモコンで開けた時に巻き込まれた
のかもしれない」
そうか!雄と雌だと思っていたが、親子だったに違いない
幼鳥は、偶然シャッターに羽か何かを巻き込まれて格納庫に入り込んでしまった
昨日から、餌を銜えたまま啼いているのは子供を探していたのか・・・・・・・・
私と主人は、格納庫の小さな点検ドアを開いてみた
確かに内側に鳥の白い糞跡
入り込んでしまったのは間違い無い
シャッターが下りている時には、幼鳥なら入れる隙間が出来るようだ
懐中電灯で照らしたが、姿は見えない
テラスの下に当たる所に繋がっているので、奥まで入り込んだようだ
出口が無く、幼鳥は親鳥を呼んでいたのだ
親鳥は、次々に新しい餌を捕まえて子供を探していたのだ
きっと自分も食べていないのかもしれない
もう正しくこの声です
親子の啼き交わし~
私達は、点検ドアを開けたまま静かに見守る事にした
主人は、息を殺して玄関ドアのガラス越しに様子を見ている
主人 「おい!親鳥が点検ドアから入ったぞ!」
私 「良かったね~餌だけでも貰えれば元気が出るよね。昨日から食べて
無いんだもんね~」
親鳥は何度も何度も餌を捕まえては、点検ドアを出入りしていた
何だか、涙が出た
あんなにも鳴いていたのは、親子で啼きかわしていたのだ
声がするのに姿が見つからず、新しい餌を銜えては声のする車庫を出入りして探していたのだ
鳥でさえ、あんなにも母親の愛が深いのに・・・・・・・・
妙な所で自分の母を思った
子供を捨てた私の母は、鳥以下なんだよね・・・・・・・・・
鳥目と言う言葉が有る
夜になると、親鳥の声もしなくなった
又、朝になれば餌を銜えて遣って来るだろう~~
そう思った
所が、翌朝は全く親鳥の声がしない・・・・・・
どうやら、暗くなる前にでも親鳥が上手く連れ出せたようだ
格納庫の中でも声がせず、気配も無くなった
意地の悪い主人は
「見捨てて行ったんだ~」
なんて言っていたが、それなら幼鳥の声は聞こえる筈
ピタリと幼鳥の声もしないのだから、急に死んだはずも無い
巣立ちを済ませ、暫く見守りする時期だったようだ
意地の悪い事は言っても、主人も暫くは車を外に置いたままシャッターを開け閉めしないようにしていた
車を大事にする主人が、車を戸外に置いたまま我慢していた
点検ドアも3日程、開けたままにしておいた
私達は、親子が無事に飛び去ったと信じて3日後にシャッターを開け
点検ドアを閉めた
その後、沢山の死んだ昆虫を見つけた
親鳥はきっと、新鮮な餌をやりたくて何度も捕まえては銜えていたのだろう
我が家の近辺の昆虫には災難だったようだ
あの親鳥のお陰で、親の愛情の深さに触れて心が温かくなった
良いお母さんを持って、良かったね~~
ツバメの巣を見守るご家庭の気持ちが分かった