皆様こんにちは
山三三ツ屋染舗の三ツ屋邦孝です。
いつも当ブログをご覧いただき誠にありがとうございます。
先輩のクリーニング業者から68年前の昭和32年(1957年)発行の
クリーニング業書・第六巻「最新汚点抜法」の本をお借りしました。
本を読んで68年前の問題も現在の問題が何も変わっていない事が分かりました。
私自身は学者でもあれませんし、実際に作業をしている作業能力者(職人)の目線で
発信しています。
クリーニング業書・第六巻 最新汚点抜法
本の中身はたくさんのしみの種類の対処法が書かれていました。
この当時のしみ抜きは染屋のしみ抜きから発達した「和式しみ抜き」と蒸気しみ抜き機
(スポッター・マシン)及びしみ抜き技術は元来アメリカより伝わってきたもので戦後、
米軍施設のクリーニング工場に設置されたものから、一般に知られるようになったものです。
この本には蒸気しみ抜き機(スポッター・マシン)の使用法や、しみ抜きの種類に応じた薬剤や
濡れタオルでしみの部分を叩く等のしみ抜きの方法が記載されています。
この当時の和式のしみ抜きの道具としてはパッキンブラシが主流でした。
蒸気のしみ抜き機(スポッター・マシン)はしみの部分を吸引するバキューム機に
蒸気を当ててしみを湿らせた後に圧搾空気(ホットエアー)で乾燥してしみ抜き行っていました。
昭和40年代より超音波しみ抜き機やスプレーガン(噴射ガン)が登場してパッキンブラシに
とって代わっていきました。
その後にしみ抜き機のバキュームモーターが普及してきてしみ抜きがかなり進化しました。
クリーニング業書・第六巻 最新汚点抜法
前書きの部分に書かれている事はこの当時と現在の問題が何も変わっていない事が分かります。
発行者の弁
株式会社 日本クリーニング界社 主幹 高橋成治
乾式(ドライクリーニング)、湿式(水洗い)両洗濯の技術を如何に発揮しても
洗濯技術だけでは完全に汚点(しみ)までも除去するのは至難である、
洗濯技術の最後の仕上げは汚点抜(しみ抜き)にある、
洗濯物に汚点(しみ)が残って居るようでは画龍点晴(がりょうてんせい)を欠ぐ有様で
洗濯の本質が失われる、従って汚点抜き(しみ抜き)は洗濯技術の優劣を決定づける
重大なる要素である、我国の汚点抜法(しみ抜き法)は洗張、悉皆を根源として
徳川中期(享保十四年・1729年)に興起して今日に至り技術の奥義は汚点(しみ)と共に
染色を抜き去り色合わせをする地直し(色掛け)にあり非常に手数を要し洗濯業の目的たる
大量低価格加工に合致せぬ欠点がある。
洗濯は元来欧米諸国に端を発し明治初期に業として成り立った物で技術の大半は欧米にあり、
これに我国に適する技法を加味して日本の洗濯は確立している、然し洗濯文化の程度と
科学質が比較的低い我国ではあらゆる点に手練(しゅれん)を用い練磨(れんま)の技術が
総てを解決して居る状態である、特に汚点抜き(しみ抜き)禅の奥義の如く以心伝心、
習得するに習得出来ざる自修自練の技術に根源があり、汚点抜き(しみ抜き)技術を
把握した技術者が業界には幾人も無い事に依りて自明である、現今理(?)、化学に依りて
解析出来ざる物無き時に於て汚点抜技術(しみ抜き技術)はあまりにも業界の負担になった居る、
本社は此禅的思想を打破する為に文献と科学性とによりて汚点抜技術(しみ抜き技術)を
業界誰でも応用解決出来るよう以前にわかり易い汚点抜(しみ抜き)を単行本として業界に贈った、
而し此文献は米国の初歩標準技術書の翻訳であり是れを読破した人は今一段高級なる専門書の発刊を
希望した、本社は此人々に報ずる為に今回発刊したのが本書である。
本書は汚点抜(しみ抜き)に対する総ての物理、化学、これに関聯(関連)する事項をあます無く
収録してあり汚点抜(しみ抜き)を専習するには絶好の良書であると自認して広く業界にお贈りする
次第である年々刊を重ねるわかり易い汚点抜第三巻と共にスポッターの座右に備へなくてならない
資料である事は申すまでも無い、是等専門書に依りて我国業界の汚点抜技術の完成が
早められるなればこれに過ぐ喜びは無い。
昭和32年6月1日 布施の萬居に於て監修を終わりて記す。
筆者はドライクリーニングとランドリークリーニングの洗濯技術だけでは、完全にしみを
落とす事は出来ないは落とせない、洗濯技術の最後の仕上げはしみ抜きにあり洗濯物に
しみが残って居るようでは洗濯の本質が失われる、従ってしみ抜きは洗濯技術の優劣を
決定づける重大なる要素である。しかしクリーニング業の目的は低価格大量処理加工であり、
相反するしみ抜きや色掛け技術はこの目的に合致しないと言っている。
現在のクリーニングは低価格である為にしみ抜き出来ない事としみ抜き作業を行える職人を
育成は出来ない事が業界としての本音を吐露しています。
私自身は家業を継ぐ決心をして昭和55年(1980年)に業界の知識無しに修業に出ましたが、
しみ抜き屋の大先輩から「しみ抜きの最後は色掛け(地直し)だから、しっかりと習って来なさい」
との言葉をいただきしみ抜き屋を生涯の仕事にする覚悟で丸洗い(ドライクリーニング)しみ抜き
色掛け(地直し)を特にしっかりと学びました。どんなに上手い色掛け(地直し)を行ってもしみが
残っていると綺麗に補正出来ずにしみは落ちた事にはなりません。
クリーニング業の目的の低価格大量処理加工からするとしみ抜き業界は真逆で高価格少量処理加工と
言う事になります。昭和32年当時の価値観と令和7年の現在の価値観とは随分と変わった部分と何も
変わっていない部分があります。
私自身はクリーニング師、一級染色技能士(染色補正作業)、職業訓練作業員(染色科)です。
この本を多角的に見るとクリーニング業界としみ抜き業界は共に成り立たないと思いつつ
しみ抜きの勉強をしましょうと感じます。
しみ抜きの基本は油性処理から行い、水処理、蛋白質の除去、酸化漂白、還元漂白を行い
最後に色掛け(色修正・染色補正・染直し・部分染・地直し)を行って補正しています。
色掛け(色修正・染色補正・染直し・部分染・地直し)技術はとても高度な技術でありますが
習得すると脱色によるクレームや弁償を防ぐ事が出来る唯一無二の技術です。
洗浄力が高くて光沢があり溶剤管理したドライクリーニング(丸洗い)、ひどい汚れや
全体の黄変しみを落とす水洗い(ウエットクリーニング)と全体漂白もありますし、
全体ヤケに対応する色掛け(色修正・染色補正・染直し・部分染・地直し)や全体染・染め替えも
行なえますし、仕上げ(プレス)もとても大切です。
価値観は一人一人が人違います、お客様が思い入れのある品物(衣料)を何とか元の状態に直したい
思いを持ちコンタクトを取られて、出来るだけお客様の思いに職人として答えたい思いの自分の軸を
俯瞰して行く事がこれから残り少ない作業能力者(職人)としての仕事に活かして行きたいと
心新たに日々精進して行こうと思います。
着物と洋服のお手入れは
厚生労働大臣認定一級染色補正技能士のいる
山三 三ツ屋染舗にご用命下さい。
〒062-090
札幌市豊平区豊平2条2丁目2番20号
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メール mitsuyasenpo@train.ocn.ne.jp
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