大衆演劇の照明係りです。
昨日、箕面市にある温泉ホテルに妻と行っておりました。
隣接するレジャーランドも入場無料です、客はお年寄りばかりが目立ちます。
そこの大広間ホールで大衆演劇が行われておりました。
「新生紅」座長は紅大介、女装して歌ったり踊ったりする若い男です。
総勢12,3名の若者がやっている劇団でした。
前半1時間半は世話物劇と言うのでしょうか人情劇と言うのでしょうか、母子もの、殺陣もあり、庶民向けの歌舞伎と言ったところでしょうか。
後半の1時間半は歌と踊りの時間です。
おしろい塗りまくりの化粧で踊ります。
団長の女装の踊りが評判なのかもしれません。
会場はほぼ満員でした。
女房は前のほうに空席をひとつ見つけそこに陣取ります。
私は「後ろのほうで良いよ」といって後ろの空いた席に座りました。
私の横の一段高いところに照明係がパイプ椅子に座っています。
30代の女性です。
ジーンズにTシャツ姿です。
すこしお腹が豊満な小太りの女です。
自分の体の大きさほどの2本のスポットライトを操っております。
「プロだなあ」と感心してそちらの方ばかり見ておりました。
彼女の心と動作が舞台に同化しているのです。
彼女の指先ひとつで舞台の照明が次々と変化してゆきます。
ひとりで全ての照明作業をこなしているのです。
音楽にあわせて自分の体をゆすります。
時々舞台と同じ歌を小さな声で歌っていたりします。
場面に合わせて自分の手を合わせて祈りのようなポーズになったりします。
と思うと自分の手を頬にあてて切なそうなポーズをなります。
指はピアノを弾くように照明器具のボタンを次々におして変化させてゆきます。
彼女は舞台上の役者の次の動きを全て覚えこんでいるのです。
スポットライトの変化はスピードが必要です、多分0.1秒のズレがあってもおかしなものになってしまうはずです。
彼女の動きはこの3時間何一つミスはありません。
完璧にこなしていました。
踊り手が変わる僅かの時間も余裕でゆったりとお茶を飲んだりしています。
「うーん、これぞプロ」と感心してしまいました。
殆どの人は照明係りになんか関心を示しません。
うまくやって当たり前、失敗すれば大きく目立ちます。
私はこの劇団は彼女に支えられているような気持ちになってしまいました。
終わったあと女房は隣にいたおっちゃんに話しかけられたそうです。
「もう帰るんか」
「はい帰ります」
「今度はいつ来る?」
「さあ分かりません」
「もし次に会えたら結婚しような」
「ははは」
大阪人の会話ですなあ。