銀河のサンマ

何でもあり

サクライナリ

2022-02-25 | 銀河食堂

 

 

スノームーンの1日前、夜の空気は澄み、月は神秘的な雰囲気を醸しだしていた。

スノームーンの日、雪が1日中ふったので夜の満月は当然みえることはなかった。

寒さが続いた、転職したボクの今の職場は事務的な仕事もあるが大概現場仕事である。

数人のチームで水が通っている山を登り、マンホールの点検をしたりする。

今時期のマンホールの中は風が遮られ外気より暖かく感じてしまう。

冬の外作業は厳しいなぁ、と転職に後悔しているわけではないが感じることが多い。

ようやく作業が終わり、山から降りると昼になっていてチームは解散し、それぞれの昼を過ごす。

何食べようかなぁ、と歩きながら考える。

ココらへんは然程、食べ物屋さんがないので、自分のメニューがパターン化されていく。

はぁー…何しよっかなぁ…と寒空の中、考えながら目を左上へやると足が止まってしまった。

ーココに春あり!営業中ーと書いた木札に古民家風の建物がっ!

「銀河食堂」現る!!

静かにカラリと戸を開けると品良い老婆店主が手招きをしてる。

「こんにちは」と一礼するボク。

「久しぶりですなぁ、さぁさぁ座りなっせ」と品良く店主も御辞儀をしニコッと微笑んだ。

店の中は暖房器具らしき物が見あたらないのに、フワリと暖かい。

ボクが椅子に腰掛けると、スッとテーブルに一品おき店主はニコッとして言った。

「サクライナリです、食べてみなっせ」

ー桜の塩漬けだろうか?ーボクはお腹を空かせていたのでゴクリと唾をのみこんで

「いただきますっ」と今度は勢いよく再び一礼した。

ふふふ、と品良い老婆店主が笑う。

「揚げの甘さが好きー!ボク好み♡ほんのり桜の味が口の中に残っていいっ!」ボクは大絶賛し直ぐに2つめを口に入れる。

「普段のいなりに、ちょっぽし桜をのせるのも良かでしょう」と店主は良かったぁ、という表情をし続けて言った。

ボクは3つめを頬張りながらウンウンと大きくうなづく。

「今日は休日ですし、よく晴れて桜の便りも届きましたなぁ」と店主が優しく笑って言う。

「え?今日は休日じゃないよ、今、昼休みなんだよ?どれだけ山が寒かったか…」ボクは少し不満気になってみせた。

ふふふ、ふふふふふ…品良い老婆が空になった皿をひきながら、悪戯表情を浮かべた。

そんな表情するんだ!とボクは驚きと新鮮さをおぼえた。

それはとんでもない驚きだったのか、目の前がパーッと眩しくなっていった。

うわぁーーーーっ!!それは眩しい太陽だった。

雲ひとつない澄みきった青空が広がっている。

ふと我に帰る。

昼休みだ!ココは職場からずいぶん遠い場所じゃないかっ!!

慌てて腕をまくり時刻を確認する。

えっとえっと…あれ?文字盤の横の小さな日付の文字が23となっている。

つまりは2月23日で祝日だ、つまりのつまり休日ということになる。

えーと…どういうこと?ボクは左上に目をやると頭上には、めいいっぱのカワツザクラ咲いてる。

春がやってきたんだぁ!手を伸ばしつま先立ちをして桜に近づいてみる。

ボクの口の中は、ほんのり桜の香りが残っている。

 

 

 

 

 

※23日朝食風景

 

 

 

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