狭き門

　”狭き門より入れ、滅びに至る門は広く、命に至る門は狭い”と言う意味のことをイエスさんは山上の垂訓の中で言っている。
　これを殆どの人々が”酒、女、カネはダメよ、博打もいけないよ、刻苦勉励じゃないといけないよ、不味いものを辛抱して食いなさい、なるべく貧しく生きなさい、目立たないように有名にならないように。エラくならないように、・・・甚だしくは高等教育は目立ちたがり威張りたがり金持ちになりたがり志向だからダメよ、恋愛は罪だよ、結婚するのもホントはダメ、一生を神とかなんとか言う得体の知れないものに捧げなければならないのよ”などと考える。説く者まで居る、傲慢僭越だ。
　これぞ巧妙な騙し。”この世界の常識、人がフツーに考えることは実は騙しにあっているのです。かえって人々がオマエさんアホな夢みたいな事言うな、と言うそこに真実が隠れているのです”・・・つまり常識と言うものこそ広い門、広い道ですよ、と言っている。
　では狭い門に相当する認識とは何か？”あなたは全体の一部に過ぎないが、そうであるが故にあなたの生、生涯はその全体たる宇宙、或いは神に委ねられている、もしくはあなたの悪あがきによってあなたが生きるのでも成功するのでも失敗するのでもなく生老病死の全ては全体性の中に、その意思の決定に委ねられているのです”とイエスさんは言いたかった。だから”雀一羽と雖も神の承認なしには死なない”と言ったし”空の鳥を見なさい、労せず紡がず・・・”と言ったわけです。
　東大を出てでも乞食になる運命の人はなる。人の一生、人の生はその努力や意思とは無関係に定まっている。定まっていることを定まっている通りに受け入れて生きる、これが真の謙遜であり狭き門であり、仏教の教えで言えば”何事も放てば満つる”になる。