ツルスタジオに来たことのある方は、スタジオの壁面を飾る、たくさんの絵や写真をご覧になったことがあるだろう。
音楽はもちろん好きだが、それ以上に、絵や写真、映像が僕は好きだ。
だから、ライブやコンサートに行くよりも、美術館に行っている時間の方が遥かに多い。
特に好きな絵や、写真は、その中に別な世界が存在していて、そこに入ってゆくことが出来る作品だ。
空想と、現実の境目が曖昧になり、どちらが現実か分からなくなる、
あるいはどちらが現実でも不思議でなくなる、そんな感覚を与えてくれる。
母が亡くなった時に、家に現金としてあったお金を、生活費とかで使ってしまうのが嫌で、ちょうど同じぐらいの額だった、
このリトグラフを、そのお金で買った。
大好きなロシアの映像作家、ユーリ・ノルシュタイン氏の「話の話」のワンシーンだ。
特に好きなシーンで、バックで流れるバッハの平均律は、僕の考える映像音楽のベスト3に入る。
悲しみを通り越した、静謐なる切なさは、至高の感情表現だと思う。
この絵に写り込む、ピアノを始めとするスタジオの風景も好きだ。
「For Your Tears」のジャケットの中にも、そんな写り込みの写真を使っている。
ユーリ・ノルシュタイン氏は、親日家でもあり、良く日本にやって来る。
最初に来日した頃、お会いする機会に恵まれ、「話の話」のLDを持ってゆき、サインをしていただいた。
もう13年前になるんだなあ・・・