草むしりしながら

読書・料理・野菜つくりなど日々の想いをしたためます

猫の棲む家

2023-11-29 07:53:02 | 猫自慢

猫の棲む家

 二ヶ月ぶりの生家です。出迎えてくれたのは姉と猫のハナコと畑の草。そして隙間風でした。

  築九十年以上になる我が家は、当時の百姓家にしては天井が高く窓の多い家です……。 と、ここまで書いた時です。家が微かに揺れはじめました。

 地震でしょうか……。おや姉がテレビを見ながら体操をはじめています。あっ、軽くジャンプしました。おお、揺れる……。

 昔の家ですから、基礎工事なんてしていません。石の上に柱を乗っけているだけなので、ちょっとのことで揺れます。別に姉が巨大なわけではないのです。

 そして当然ですが断熱材なんて入っていません。また一階は部屋を仕切っている襖を外すと、一つの部屋になります。ここで叔父の祝言も父の葬式もしました。

 現在ではめったに襖など外すこともありませんので、使うことのない八畳間が四つあります。台所と居間もその並びにあり、ガラスの引戸で仕切っています。

 ほとんど引戸で仕切らている家の中で、唯一壁で仕切られているのが洗面所とトイレです。洋トイレと男子用トイレ、洗面所とあり、その三か所にはそれぞれに窓がついています。

 さらに台所の西側は姉の家とつながっており、引戸で仕切っています。また台所の片隅には二階に上がる階段があり、二階もまた姉の家の二階と渡り廊下でつながっています。

 なんだか迷路みたいな家だと思いませんか。築九十年の家と新築の家が、一ミリの段差もなくつながっているのですよ。

 さてこの二つの家を自由に行き来するのが、我が家の飼い猫ハナコです。

 ある時は台所の引戸から、またある時は二階の階段からトントンと降りてきます。トイレに置いてある猫のトイレで用を足し、喉が渇くと仏壇の水を飲みに行きます。そして夜になると、姉の部屋の我が家で一番上等の羽毛蒲団の上で寝ます。まるでハナコのために建てられた家みたいです。

 ただ問題はそこにあるのです。ハナコのために家じゅうの戸をすべて少し開けておかなければならないのです。

いかがでしたか、猫の棲む家?寒いですよ!

 


猫と赤ちゃん

2023-10-03 07:09:29 | 猫自慢

 猫と赤ちゃん

 朝夕涼しくなったからでしょうか、夏の間元気のなかったハナコがやっと元気になりました。ハナコは今年十五歳になる我が家の飼い猫で、今は姉と生家で二人暮らしをしています。

 もともと食が細くドライのフードなどは、昔から皿に出した量の半分は残していました。好みもうるさく食べ残しのフードなどは絶対に食べません。そのくせいつも何か食べたがり、台所に立つと足元にへばりついてきて、食事の催促をします。

 よその猫は出してやった分は全部食べると聞き、姉が心配してチュールだの総合栄養食などいろいろ試しています。この頃ではミルクも飲むようになりました。そのせいかもともときれいだった毛並みが、いっそうきれいになったような気がします。

 ハナコは白サバのハチワレ猫です。シルバーと黒の縞のサバ模様がくっきりと美しく、腹の部分の白毛は透き通るような純白です。その美しい姿?とは別に凄腕の鼠ハンターという顔を隠しもっており、私ども家族の自慢の猫であります。

 ただ美しさの方に陰りはがありませんが、鼠退治の方はこの頃とんとご無沙汰しております。でももう鼠など捕らなくてもいいから、のんびりと余生を過ごし長生きしてほしいと思っています。

 ところが九月のある日、ハナコにとってはのんびりなどしてはいれない事態が発生しました。末娘夫妻が娘を連れて帰省したのです。

 私にとって五番目の孫にあたる末娘夫妻の娘は、一歳と一ヶ月になります。よちよち歩きで、言葉も二、三出てきたところです。

 もともと人懐っこいハナコは、誰かが訪ねて来るとすぐに寄って来て歓迎します。その日もすぐに孫娘に近寄ってきました。そして歓迎の意味を込めて自分の鼻先を孫娘の手に軽くぶつけて、コッンコしました。

 孫にとっては人間以外の生き物に初めて触った瞬間です。ちょっと驚いたものの、特別怖がるようすもありません。

 そこで気をよくしたハナコ。もっと歓迎の意味を込めて、今度は足をペロリ。とたんに孫娘が泣きだしました。たぶん猫のザラザラした舌の感触に驚いたのでしょう。

 これにはハナコもしょんぼり。そこで今度は孫とつかず離れずの距離をとって寝そべりました。一方当の孫娘の方はすぐに泣きやみ、父親の抱かれたままハナコに興味津々です。

 翌日も同じです。孫はちょっと離れたところにいるハナコの所に近づいて行っては、慌てて父親の元に逃げ帰ります。ハナコは孫と目を合わせないようにそっぽを向いていますが、気にはしているようす。

 孫は恐々とハナコに近づいて行っては、慌てて逃げ帰えるのを何度か繰り返していました。ところがそのうち「ニャーニャー」と言い出しました。これには見ている方が驚いてしまいました。ハナコも驚いたのか、振り返って孫の方を見ていました。

 やはり絵本や写真よりも、実物を見せるのに限りますね。いやそれよりもハナコの子守が上手だったのかな?

 ニャーニャーも言えるようになったし、歩き方しっかりしてきた。そして何より表情も出てきた。と、娘一家は喜んで東京に帰って行きました。

 楽しかったね。また帰っておいで。そしてハナコ。ご苦労さんでした。ゆっくりしてくださいね。


肛門腺しぼり

2023-08-14 17:07:49 | 猫自慢

肛門腺しぼり

 今回は約三ヵ月ぶりの生家でした。草むしりはもちろん大変でしたが、一番気になったのは猫のハナコのことです。

 母の一周忌の年に我が家にもらわれてきたハナコも、十六歳になります。月日の経つのは早いものですね。たぶん私たち姉妹にとって、ハナコが最後のペットになるでしょう。いつまでも元気でいてほしいものです。

 家に帰ると、暑さのせいかこの頃ハナコが食欲がないと姉が心配をしておりました。もともと食が細く、皿に出してやったフードの半分は残すようなタイプです。

 今度もまた気まぐれだろうと思っていたのですが、ますます食が細くなりチュールや煮干し、カツオ節さえも受けつけなくなってしまいました。

 よく観察してみると、肛門の周りに、左右対称の小さな穴が二つあるのが見つかりました。最初何かに噛まれたのかと思い慌てて病院に連れていきましたが、肛門腺が詰まって炎症を起こしていると診察されました。そこで肛門腺しぼりをやってもらいました。

 私が押さえつけ獣医さんが絞るのですが、痛がって怒ること怒ること。それでも押さえつけている私の手を噛みついたりひっかいたりはしませんでした。私としてはそれがちょっと自慢でもありました。それから最後に化膿止の注射を一本して家に帰りました。

 ところがその後尿が出なくなってしまいました。何度も猫用のトイレで排尿しようとするのですが、出た形跡はありません。慌てて病院に逆戻りです。心配のあまり早く行き過ぎて午後の診察時間まで三時間ほどあるので、いったん家に帰って再度出直しました。

 医師にはしぼった後が痛いから排尿を我慢しているのだと言われ、すごすご引き返しました。その日猫は何も食べず水も飲まなかったので、このまま死んでしまうのではないとかと大変心配しました。

 しかし翌朝トイレを見ると排尿の後があり、餌皿の横に置いてある水も飲んでいました。それからチュールも煮干しもかつお節も食べて、カリカリのフィードも食べました。

 姉と二人で胸をなでおろしていますと、今度は外に出て庭の泉水の水をたらふく飲んで家に入ってきました。よっぽど喉が渇いていたのだろうと苦笑していると、姉が急に死んだときはどうすると言い出しました。今その話をするのが一番だと私も思いました。

 私としては業者に火葬を依頼して、骨壺に入れて裏の山に穴を掘って埋葬すればいいと思いました。穴は私が帰省した時に掘ることにして、それまで仏壇に置いておけばなどと話しました。

 ところが仏壇の話が出た途端、猫が仏壇に飛び乗りこれ見よがしに仏壇の水を飲んで見せるではないですか。前は仏壇の水を飲むときは隠れてこっそり飲んでいたのですが……。

「お墓に入れてもいいじゃない」

 それを見た姉が急に言い出しました。確かに毎朝仏壇の水を我が物顔で飲んでいるので、ご先祖さまたちとはとっくに顔見知りになっているでしょう。

 ハナコがお墓に入るのはまだまだ先のことであってほしいのですが、そのために話し合いは早めにしておくべきだと思いました。


負けて悔しい ハナ一番目

2023-03-16 16:20:24 | 猫自慢

 負けて悔しい ハナ一番目

  ハナコは今年十五歳になる我が家の飼い猫である。今でこそ現役を引退したが、若い頃はその愛らしい顔立ちとネズミ捕りの特技で、家の者はおろか近所の人たちを魅了した。

 我が家のおむかいさんは少し前まではお米をたくさん作っていた。十月になると倉庫いっぱいに米袋が並べられていた。頼まれもしないのに、ハナは倉庫の中でネズミ番をしていたという。

 奥さんに大変感謝されたし、ご主人はハナに自宅の猫用に水栽培をしている、猫草を食べさせてくれた。草なら我が家にもあったのだが、よその家の草の方がおいしいらしい。

 その他にも屋根の上に住み着いた鳩の群れを追い出したりもした。私がいくら追っ払ってもすぐに戻って来るが、屋根にハナコを放すとすぐに飛び立ち二度と戻って来なかった。イタチと格闘して一発浴びたり、ヤマカガシという毒蛇を退治したこともあった。なんとも頼もしいハナは我が家の自慢であった。

 そんなある日我が家にやってきた畳屋さんに、「ネズミをよく捕るのよと」姉が例によって自慢話をはじめた。するとどうだ、畳屋さんの猫は傍の河原から鴨を捕ってきたと言うではないか。真冬で脂がのっていて、鴨汁にして食べたらおいしかったと自慢された。

 悔しい負けた!ハナが一番だと思っていたのに。負けず嫌いの姉はその時の悔しさが、今でも忘れなれないようだ。


ハナコ十五歳

2023-03-15 20:17:49 | 猫自慢

 ハナコ十五歳

 夕方姉が血相を変えてハナコがいないといってきた。ハナコは我が家の飼い猫で、今年で十五になる。長い間外の出入りを自由にしてきたが、三年前猫同士の喧嘩で大怪我をしてから、外に出さないようにしている。

 それでも隙を見ては表に飛び出し、そのたびにチュールをもって追い回す。年のせいか若い頃に比べれば動作が緩慢になったものの、隙を見て外に飛び出す速さは昔のままだ。

 部屋にいるものだと思い込んでいたので、気がつくかなかったのだ。姿が見えなくなってから三時間以上になる。ハナコはこの頃では姉の猫と言っていいくらいに、姉になついている。

 さて、どこに行ったのやら。三時間も姿が見えないなって、何かあったのだろうか。姉が蔵にいないかという。そういえば私は、さっき蔵の中に入っていた。

 慌てて漆喰の重たい戸を引くと、ハナコが中から飛び出して来た。姉は自分向かって一直線に走ってくるハナコを、ヒョイとつかまえすぐに家の中に入れた。

 実は私、過去に二度ほどハナコを蔵に閉じ込めたことがある。その時も今みたいに飛び出してきた。飛び出して走っていく姿は昔とちっとも変わらなかった。

 ハナコ十五歳。まだまだ長生きしてほしい。