草むしりしながら

読書・料理・野菜つくりなど日々の想いをしたためます

草むしりの「手袋を買いに」

2018-12-22 14:11:36 | 草むしりの幼年時代
草むしりの「手袋を買いに」

 「これで手袋を買いなさい」母が差し出したお金を受け取った私の手は、霜やけで赤く腫れあがっていました。クリスマスにサンタさんがやってこなくなった年齢の、3学期のことだった思います。

 翌日の放課後、走って買いに行ったのは赤い手袋。ちょっと遠回りした学校からの帰り道、いつも横目でチラリと眺めていたお目当ての品でした。気持ちが母に通じたのか、それともおねだりしたのでしょうか。今は嬉しかったことしか覚えていません。

 おつかいではない、初めての買い物でした。お店の中に入るのもちょっと勇気がいりました。深呼吸して店に入り声をかけると、奥から女の人が出てきました。「あれっ」その時何だか変な気がしました。その人は階段を上がって来たのです。一階あるはずのお店なのに、階段を上がって来るなんて……。
 
 たぶん土地の段差を利用して建てられた家だったのでしょうが、子供心にとても不思議なお店のように思われました。手袋を買うことも忘れて、グルリと店の中を見回しました。

 あれから長い年月が経ち、長女がその時の私と同じくらいの齢になった3学期の時でした。国語の教科書に「手袋を買いに」というお話が載っておりました。霜やけのできた子狐が母狐にお金をもらって、手袋を買いに行く話です。黄色い尻尾のある小さな男の子が、赤い手袋を買っている挿絵もありました。

 私はなんだか不思議な気がして、その挿絵をずっと見ておりました。