草むしりの「手袋を買いに」
「これで手袋を買いなさい」母が差し出したお金を受け取った私の手は、霜やけで赤く腫れあがっていました。クリスマスにサンタさんがやってこなくなった年齢の、3学期のことだった思います。
翌日の放課後、走って買いに行ったのは赤い手袋。ちょっと遠回りした学校からの帰り道、いつも横目でチラリと眺めていたお目当ての品でした。気持ちが母に通じたのか、それともおねだりしたのでしょうか。今は嬉しかったことしか覚えていません。
おつかいではない、初めての買い物でした。お店の中に入るのもちょっと勇気がいりました。深呼吸して店に入り声をかけると、奥から女の人が出てきました。「あれっ」その時何だか変な気がしました。その人は階段を上がって来たのです。一階あるはずのお店なのに、階段を上がって来るなんて……。
たぶん土地の段差を利用して建てられた家だったのでしょうが、子供心にとても不思議なお店のように思われました。手袋を買うことも忘れて、グルリと店の中を見回しました。
あれから長い年月が経ち、長女がその時の私と同じくらいの齢になった3学期の時でした。国語の教科書に「手袋を買いに」というお話が載っておりました。霜やけのできた子狐が母狐にお金をもらって、手袋を買いに行く話です。黄色い尻尾のある小さな男の子が、赤い手袋を買っている挿絵もありました。
私はなんだか不思議な気がして、その挿絵をずっと見ておりました。
「これで手袋を買いなさい」母が差し出したお金を受け取った私の手は、霜やけで赤く腫れあがっていました。クリスマスにサンタさんがやってこなくなった年齢の、3学期のことだった思います。
翌日の放課後、走って買いに行ったのは赤い手袋。ちょっと遠回りした学校からの帰り道、いつも横目でチラリと眺めていたお目当ての品でした。気持ちが母に通じたのか、それともおねだりしたのでしょうか。今は嬉しかったことしか覚えていません。
おつかいではない、初めての買い物でした。お店の中に入るのもちょっと勇気がいりました。深呼吸して店に入り声をかけると、奥から女の人が出てきました。「あれっ」その時何だか変な気がしました。その人は階段を上がって来たのです。一階あるはずのお店なのに、階段を上がって来るなんて……。
たぶん土地の段差を利用して建てられた家だったのでしょうが、子供心にとても不思議なお店のように思われました。手袋を買うことも忘れて、グルリと店の中を見回しました。
あれから長い年月が経ち、長女がその時の私と同じくらいの齢になった3学期の時でした。国語の教科書に「手袋を買いに」というお話が載っておりました。霜やけのできた子狐が母狐にお金をもらって、手袋を買いに行く話です。黄色い尻尾のある小さな男の子が、赤い手袋を買っている挿絵もありました。
私はなんだか不思議な気がして、その挿絵をずっと見ておりました。