どっちだろうか
昨年の秋口だっただろうか。「気がつくともうこんな歳になってしまった。けれど気持ちの方は子どもの頃のままだ」と伯母が言ったことある。まあ、皆思っていることなのだが、九十九歳になる伯母の口から聞こうとは思わなかった。
伯母の話と言えば、子供の頃のことや若い頃に行っていた満州のことくらいだと思っていたのに。もっとゆっくり話を聞いてみたい気がするのだが、頼まれた用事が終わるとすぐの帰ってしまう。
今日は朝から雨が降っている。ゆっくり話を聞いてみようか。できれば伯母が喋った通りに、そのまま書き留めておくのもいいのではないか。シーツの交換や箪笥の中の整理をしながら、ぼつぼつと伯母の話に耳を傾けた。
生家の甥の家の田植えの話や、十人いた姉弟の話。姉弟の中で一番長生きした長女の伯母に似て来たね。等と話はつきない。
しばらくして足のふくろはぎに出来た痣を摩りながら、近ごろ痣やシミの上の皮がペロリとむける。と言って、小指の爪ほどの大きさの皮を剥いで見せてくれた。
何度か皮がむけると、下からきれいな皮膚が出て来る。体中の皮がむけて赤ちゃんみたいにきれいな肌になったら、お迎えが来るのだろう。というようなことを言った。
なるほど良いことゆうものだ。早速家に帰ると、パソコンのワードを開いた。
この頃、こうしち皮がむくる。これはアレのあとで、むけた後はきれいなナニがでてくる。あそらくナニだ、ナニが全部むけて、アレにになったら、あそこからお迎えが来るだろう。
うーん喋ったことをそのまま書き留めておくには、ちょっと無理だった。やはり愛情のある注訳が必要だろう。
それにしても果たして伯母は、あそこに行きたいのだろうか、行きたくないのだろうか。