0306_西の地球と神様の約束(004)裕也の冒険-阿弥陀如来の帰依-
--阿弥陀如来(あみだにょうらい)の帰依--
古びた平屋(ひらや)のお堂に食事がテーブルに用意されていた。
一人の女性が給仕(きゅうじ)をしている。
女の子は、恐る恐る尋ねる。
「どちら様ですか?」
「鬼子母神の百(もも)です。
阿弥陀様のお祝いに駆けつけました」
そう言うと百は、女の子に一礼して、
阿弥陀様たちの方を向いた。
「法華経への帰依。おめでとうございます。
これで、過去は確定されました。
これは心ばかしのお祝いです。
どうぞ、お座りに成りませ」
細長い座卓(ざたく)が3列用意されていた。
そして、座布団が置かれていた。
阿弥陀様、女の子、裕也の席が漏(も)れることなく設(もう)けられている。
各テーブルの真ん中に大皿があり、立派な尾頭(おかしら)付きの鯛の塩焼きが乗っていた。
(お祝いに相応(ふさわ)しい。うれしい)
女の子は嬉しくなった。
(こんなの食べたことがない)
一同は席に着いた。
緑の座布団がフカフカである。
裕也も、女の子の味覚が戻ったことを切実に願った。
百さんは、忙しく料理を運んでいた。
暫くして、運び終わったようである。
テーブルの真中の鯛の塩焼きは言うまでもない。
他の料理は、おりおり話します。
「これは、お祝い料理です。
どうぞゆっくりお食べください。
あ!その前に裕也さんのお仕事が一つあります。
この宴を催(もよお)す起因(きいん)を作った女の子に、
褒美(ほうび)として記念に名前をつけてください」
裕也は、少し迷った。
女の子の味覚が本当に戻ったか確かめたかった。
迷ったが裕也は、やっぱり確かめずにはいられなかった。
「お嬢さん。鯛を食べてみて」
テーブルの真ん中の鯛をさした。
阿弥陀様は、気を使い鯛の腹の辺(あた)りの肉をつまみ皿にとった。
そして、女の子に渡した。
「恐れ多いです」
だが、嬉しそうである。
女の子は、不器用に箸(はし)をつかい食べようとする。
落としそうになり、慌てて口を運ぶ。
「もぐ。もぐ。
わぁー----ぁ。
美味しいです。
美味しい味がしまう。
少し塩(しお)い」
少女は口を結んだ。
その瞬間、裕也に女の子の名前が浮かんだ。
「彼女の名前は、
口結び子。
真実に口を結ぶ子。
もう、口を汚さないようにしてね。
もう一度、言います。
彼女の名は、
口結び子。ひろ子。
とします」
阿弥陀様は、信徒が誹謗した罪を被っていたのかもしれない。
しかし、今帰依した時に阿弥陀様を信じてたものすべて帰依したのである。
功徳で誹謗(ひぼう)の罪は、許されたのである。
つづく。 次回(西の地球と神様の約束(005)-祝宴-)
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