ひろひろの生活日記(LIFE Of HIROHIRO)

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第Ⅱ章。「現れし古に伝わりし指輪」10話、食事処の女将、まず情報収集だ。「~失望と愛~導かれし悪魔の未都市。」0013

2022年03月11日 19時25分49秒 | 「~失望と愛~導かれし悪魔の未都市。」【R15】(自作小説)

第Ⅱ章。「現れし古に伝わりし指輪」10話、食事処の女将、まず情報収集だ。「~失望と愛~導かれし悪魔の未都市。」0013

13、食事処の女将、まず情報収集だ。


イリスの土地は、まだ、取水(しゅすい)に恵まれている。
山に汲(く)みに行けばいい。
だが、畑で育つのは、痩(や)せたニャージャンとジャングだけである。
土地が痩(や)せていて何か悪いのか?
※ニャージャン:人参(にんじん)を小説の中で改名しました。
※ジャング:ジャガイモを改名しました。

デミュクと執事シュシャンは、食事処(しょくじどころ)に入る。
食事処は、入口に戸がなく布が斜めに掛(か)けてあるだけで、
周りも白い壁で囲まれているだけである。
布を手で払(はら)い中に入る。
少し埃(ほこり)っぽい。
中には、机が6席ある。
誰も客らしき人はいない。
机は木の丸太を半分に切り使用している。
木のテーブルに木のチェアー(椅子)。
木を切ってそのまま作った粗末(そまつ)なものである。
木の皮が逆(さ)かばっているが、
茶色の年輪は味のある模様になっている。

奥の厨房(ちゅうぼう)に近いテーブルに着いた。

女将(おかみ)さんが、寄ってくる。
「何になさいますか?」
「何か野菜を使った料理は有りますか?」
デミュクは、愛想(あいそ)よく口端をあげ、笑顔で尋(たず)ねた。
「野菜ねぇ。あることはありますよ。
 野菜が趣味なのかい?
 若者は肉を食(く)わなきゃ。
 卵料理があるよ。
 値ははるがね」
女将は、嫌味(いやみ)を込めて言った。
「卵も良いが。
 野菜料理は、何か不都合があるのですか?」
デミュクも引かない。
それは、野菜の育ちぐあいから、土地の肥沃度(ひよくど)を知りたいからである。
「実はね。土地が瘦(や)せているのさ。
 兄さんは、何をしにこの土地にいらしたのかい?」
「女将さんは、愛想がいいね。
 福々しい顔だ。性格も美人だね」
執事シュシャンが、愛想よく言った。
「ちょっと、領主に相談があってだよ」
デミュクは、正直に答える
「領主にかい?」
女将(おかみ)は、念を入れて尋ねる。
そして、機嫌(きげん)が良くなったのか返事も気にせずにつづける。
「領主は、年老(としお)いて寝たきり、
 息子が居るのだけどね。
 博打(ばくち)にしか興味ないよ。
 道楽者さ。
 税金ばかり高く取り上がって、
 これは、内緒だよ」
「お肉と野菜の料理を何かお願いします」
デミュクは、女将の顔を立てて肉料理も注文することにした。
「2人まえづつかい?」
「一皿づつでお願いします。
 それと、2人で分けれるようにしていただけますか。
 小食なもので、すみません」
「金貨2枚だよ」
女将は、見慣れない顔なので前払いしてもらいたくて値段を先に言った。
デミュクは、金貨1枚を鞄(かばん)から出して見せる。
「どこの国の金貨かね?」
女将の目が輝いた。
「ミュウデラ。
 海の向こうだよ」
デミュクは、またも半分(はんぶん)正直に地名を言う。
「聞いたことがないね。
 どうやってここの土地に来たんだね?」
お約束の言葉と言おうか、女将の口をついて出た。
旅人は珍(めずら)しくないと言えばそうである。
「………」
デミュクは、言葉が出なかった。
(なんて言えば、疑われずに済むんだ?)
考えたが言葉が浮かばない。
「あのう。魚料理は、ありますか?」
話を変えることにした。
「まあ、そんなことは、どうでもいいよ。
 あるよ。
 海も近いからね。
 それは別として、
 両替に行ってこようか?
 その方が早い」
金貨1枚をデミュクの手から取って、
「確かに金貨だね。
 重さと手触りで分かるよ」
女将は機嫌よく言った。
つづけて言う。
「両替は、何枚すればいいのかい?」
「とりあえず、20枚を換金してもらえますか?」
デミュクは、鞄から金貨を取り出し渡した。
海が近いと聞いてほっとしていた。
海の向こうから来たと言った手前があるが、
実際は、山奥から来たので、
どうやって説明したらいいか考えあぐねたからである。
ほっと、胸を撫(な)でおろした。
土地勘がないのは難点である。

「何か野菜と卵で炒めものをつくってお出ししな」
女将は、厨房に言い渡すと外に換金しに出て行った。
暫(しばら)く、沈黙があった。
「お待ちどうさま。ランウゥチャン。
 野菜と卵を炒(いた)めたものでさ」
厨房から料理人が料理を運んできた。
デミュクは、悪魔である。
料理を美味(おい)しいとは思わない。
味と感触(かんしょく)を無視して食べている。
料理は、皿に大盛に盛られていた。
「私が食べます」
執事シュシャンがデミュクの腹の具合を察(さ)して言った。
「いいよ。慣れないと」
デミュクも若干、食事に慣れて、
いくらかは食べれるようになった。
栄養を吸収しているかは疑問である。
だが、体は環境に合わせて変化するものです。

野菜は、水分がなく固く黄色に枯(か)れている。
(ほうれん草かな?チンゲン菜の一種かな?)
(炒(いた)めるのに何の油を使っているのだろうか?)
油が少し保水しているように思えた。
「何の油でしょうか?オリーブルユ?」
デミュクは、執事シュシャンに尋ねてみる。
「やっぱり、水不足で農作物が育ちにくいようですね。
 あ!オイルは、良い感じですね。
 何の油でしょう」
執事シュシャンは、乾いた農地の事で頭が一杯であった。
「取水工事を持ち掛けるのが、まずは良い手段でしょうか?」
デミュクは、商談をしたことがない。
何から話しかけた方が良いのか分からなかった。
「野菜にコンジョを振りかけてみますか?」
※胡椒をコンジョと改名しました。
デミュクは、気分転換にコンジョをかけた。
「合うね。アクセントになります」
執事シュシャンも食べた。
「コンジョから売り込むのも良い手かもしれませんね。
 味への執着は、
 一つの人間が神へと望(のぞ)む欲望ですからね」
執事シュシャンも無い知恵を絞りアドバイスする。
「コンジョなら痩(や)せた土地でも育ちますね。
 この土地で育てて見ないと分からない点はありますが、
 肥料も売り込みましょう。
 海が近いと聞きました。
 貿易都市なのでしょうか?」
デミュクは、口をついて、いろんなことが頭に浮かんで言葉が出て来た。
「都市とは、まだいいがたいですね。
 それはそうと商人についても情報を得る必要がありますな」
執事シュシャンは、主(あるじ)に人間についてこれまで相談されたことがない。
続けて話す。
「この後(あと)、港を見に行きましょうか。
 何かと話の辻褄(つじつま)を合わせるためにも必要かと思います。
 商談ですが、
 あまり多くを望むのは良くありません。
 領主とは内容を絞り交渉しましょう」
「取水工事は、時間と労力とお金がかかりますね」
デミュクは、自身が人間界で何がしたいのか不安になった。
(人を助けたいのか?
 支配したいのか?
 イリス?)
(支配するためだよ。悪魔なのだから)
(本当にそうか?)
(争いから逃げて来たのでは?)
(平和は安らぎだ)
(愛に生きるのも…)
(うぅぅ)
(悪魔なのにか?)
デミュクの脳裏に何かが浮かんだ。
「自給自足は、大切です。
 土地は、農地の方が多いようですしね」
執事シュシャンは、その不安と関係なく何か根本的な道理について話そうとした。
「農地しか活用方法がないからではないでしょうか」
デミュクも頭を整理しようと考えてみた。
でも、結局、良く分からない。
「お酒はありますかね?」
デミュクは、息抜きしたくなった。
(デミュクは、お酒を飲んだことがあったっけ?)筆者の声。
「帰ってきたら、女将に尋ねてみましょう」
執事シュシャンも、少し頭を休めたいと思った。
2人は、黙って女将が帰ってくるのを待った。


つづく。 次回(両替は上手く?まだまだ、情報収集はつづく。)

 

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