第Ⅱ章。「現れし古に伝わりし指輪」15話、領主の息子マルミニ②「~失望と愛~導かれし悪魔の未都市。」0018
18、領主の息子マルミニ②。
「女将(おかみ)さん。お願いがるのだけど」
マルミニのお酒を取りに女将が料理場に戻ろうとするのをデミュクは呼び止めた。
「なんだい?」
女将は、急ぐ足を止めデミュク方にやってきた。
「そのお酒の代金を私たちに払わせてください。
よろしいですか?
私たちからマルミニ殿にお酒をお願いします」
そして、お酒の瓶(ビン)をもってマルミニの元へ。
「向こうの旦那(だんな)の奢(おご)りだよ」
マルミニは、少しほほを緩(ゆ)めデミュクの方を向いて会釈(えしゃく)した。
デミュクたちも会釈した。
「一緒に飲んでもよろしいですか?」
デミュクは、声をかけた。
「もちろんです」
マルミニは、喜んだ。
話の相手になるのがこの酒場では女将だけなのである。
本当は、女性なら尚(なお)いいが、
男性は男性で、気が合うなら、女性より営利がある。
「すみません。寛(くつろ)いでいるところを」
デミュクは、愛想よく言った。
「いえ。どうせ一人じゃ退屈ですから。
あははは」
「領主殿の息子のマルミニ殿ですよね。
自己紹介が遅れました。
海の向こうから来た。
商(あきな)いをしているデミュクと言います。
これは、執事のシュシャンです」
「ははぁん。それが目当てですか?
領主と言っても何もない街ですよ」
「いえいえ。
まずは、お近づきに一杯」
デミュクは、酔いのせいか普段と違い雄弁(ゆうべん)になっていた。
知られないように、妖精のフェリィーフェールを呼びかけた。
心の中で念じる。
(フェリィーフェール。カードはできるかい?)
昔は、カードと言えばポーカーに決まっていたのである。
暫(しばら)くして声が返ってきた。
(デミュクさまですか?
私はできませんが、
いいものがおります。
デムフェールです)
(それは、妖精かい?)
(悪魔族の妖精です。
カードばっかりしているものです。
いかさまも出来ますよ)
(それは、好都合)
(宿(やど)るには、何か物が必要です)
(金貨でいいかい?)
(ええぇぇ。上出来です)
デミュクは、悪魔の世界の金貨を一枚、手に握った。
フェリィーフェールは、重みのある金貨を握るデミュクの手を触(さわ)り唱えた。
(デムフェール オン ハディス マイ コンダン アラブディス)
「ポォン」
デムフェールが現れた。
とにかく黒い肌の露出度の高いビキニにシースルーのベールの服を羽織っていた。
角(つの)が二本頭からにょきっと生えている。
デミュクは、不思議な感じがした。
(デムフェール。
率直(すなお)に言う。
お願いがあるのだけど。
いかさまをしてくれ)
(ご主人様。
そう、急ぎなさいますな。
それには、
まず、私と契約をお願いします)
(どうすればいい)
(金貨にあなた様の血を垂らしてくださいませ)
マルミニは、おごりと聞いて、楽しそうにお酒を飲んでいた。
「もう一杯。よろしいですか?」
「どうぞ、何杯でも」
デミュクは、ナイフをだし、指に傷をつけ血を金貨につけた。
デムフェールは、その手のひらの金貨の血を舐めた。
(我、この血の主(あるじと)従者の契約を結ぶ)
デムフェールは、黒く輝いた。
(これで、完了です。
デミュクさま)
(それでは、始めよう)
デミュクは、愉快(ゆかい)そうに言う。
「マルミニ殿。少しカードでもしてみませんか?」
デミュクは、親密作戦を開始した。
つづく。次回(カードゲーム。親密作戦)
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