不思議なハートの力00084-大阪大会決勝、陸運戦(剣道大会は、どうなるの?③)-
--大阪大会決勝、陸運戦(剣道大会は、どうなるの?)(003)--
浪速は、神海天導(しんかい てんどう)。
相手、陸運は、日鶴 真奈美(ひづる まなみ)である。
この大将戦で勝負は決まる。
一礼する。
開始線で向かい合い屈(かが)む。
イクタスは、闇に消滅したが、神海の剣は、『イクタスの剛剣(ごうけん)』と呼応している。
日鶴の剣もまた『アクティスの柔剣(じゅうけん)』に呼応している。
(陸運志気は、去年の覇者(はしゃ)、負けるわけにはいかない。
私が伝統を守る。)
日鶴に重圧がかかる。
(今年こそは、浪速剛剣がタイトルをダッシュするんだ)
神海は、意気込んでいる。
「はじめぇーーーえ」
神海は、力を振り絞り打ち込む。
「メェーーーン。メェーーーン」
日鶴は、剣の太刀筋の横に当て受け流す。
扇(おうぎ)のように竹刀を振る。
神海は、焦(あせ)っているのか?
足が前につんのめる。
日鶴の面が鋭く振り下ろされる。
神海は、済んでのところで避(よ)けた。
日鶴の竹刀が鞭(むち)ようにしなって繰り出される。
神海が小手に出した竹刀が偶然に日鶴の竹刀とまともに激突する。
日鶴の手がしびれた。
日鶴の焦(あせ)りか?優位(ゆうい)なときにこそ隙(すき)が出来るものである。
(根元は竹刀の揺れが少ない)
神海は、日鶴の剣の弱点に気づいた。
神海は、手元を狙(ねら)う。
竹刀のスピードが勝敗をわけるものだ。
(神海。早く打ちたいなら、腕を引くことに全神経を集中しろ)
天地(てんち)の声がした。
(天地さん)
天地は、神海の友人である。
年上の高校生であり、
神海の両親の会社の財閥のグループの党首の子供である。
神海が唯一に頭を下げる人である。
天地は、神海を可愛がった。
財閥の関係で頭を下げるのではない。
天地はあらゆる面で優れていて、神海は尊敬していた。
(日鶴の竹刀は、鞭(むち)のように振るう。だが根元はがら空きだ)
神海は、手元の的(まと)に徹(てっ)することにした。
当然、日鶴も自身の弱点は理解している。
そんなことでは、剛剣の利点はないわ。
「そんなスピードでは、届かない」
日鶴は、扇に竹刀を振っているだけではない。
日鶴の体(からだ)自体(じたい)、扇(おうぎ)に揺れていた。
(やっぱり、俺の剣は剛で行くしかない)
神海は、竹刀を頭上に振りかざした。
そして、満身の力を込めて振り下ろす。
スピードにかまけている暇はない。
「危ない」
日鶴も満身の力を込めて受け止めた。
日鶴の手が痺(しび)れる。
神海の剣は、生半可(なまはんか)な構えでは受け止めれない。
日鶴の剣が鈍(にぶ)る。
日鶴の腕に痛みが走る。力が抜けていく。
とうとう神海の竹刀が日鶴の防御を打ち破る。
「バシィ。メェーーーーン」
赤旗が3本上がった。
両者が中央に戻り試合が再開する。
「はじめぇ」
日鶴は、守っていては負けると判断した。
体を左右に揺らしながら、
右左と竹刀を打ち込む。
神海は、軽々、日鶴の竹刀を弾(はじ)く。
日鶴の腕は、まだ痺(しび)れて力が入らない。
(アクティスさん助けて)
日鶴の心が叫んだ。
(真菜美さん、助けてあげて)
アクティスの心と真菜美の心。
強(し)いては、日鶴の心と真菜美の心が繋がる。
真菜美は、日鶴の傷みを受け止めた。
(あ!痺(しび)れと痛(いた)みが消ていく)
日鶴は、ここぞとばかり、竹刀を振った。
神海が慌てて面を守ろうとした手に、
日鶴の小手がヒットした。
「こてぇーーーーぇ」
白い旗が3本上がった。
両者が中央に戻り試合が再開する。
「はじめぇ」
「神海君。がんばれぇ」
朋子の応援に熱が入る。
その横で真菜美は少し悪びれて朋子に申し訳なく思った。
朋子の横顔に意識を取られた。
その心の隙をついた。
日鶴の腕に激痛が走る。
(あははは。闇は敵だ)
(何?どう言う意味?)
(胴ががら空きだ)
「どぉーーーーーぉ」
神海の竹刀が唸(うな)った。
「バシィーーーィ」
赤旗が3本上がった。
両者は、中央に戻る。
静かに礼が終わった。
神海の勝利。
同士のみんなが駆け寄って喜ぶ。
朋子も喜び、急いで下の会場に向かった。
真菜美も下に向かう。
日鶴と話がしたいと思った。
死闘(しとう)の結果、浪速剛剣が大阪を制した。
つづく。 次回(優勝の喜び)
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