第Ⅱ章。「現れし古に伝わりし指輪」9話、街、領主、商談?領主は、偉い人なの?「~失望と愛~導かれし悪魔の未都市。」0012
0012_街、領主、商談?領主は、偉い人なの?
デミュクと執事シュシャンは、朝食をお呼(よ)ばれすることになった。
デミュクは、胡椒(こしょう)を胸ポケットから出した。
人参(にんじん)スープにさりげなく振りかける。
執事シュシャンにも勧める。
シュシャンは、胡椒(こしょう)を振りかけて一口飲んだ。
「美味(おい)しゅうございます。デミュクさま」
「シュ。シュ。シュシャン」
不器用に名前を呼んで笑顔になった。
「この胡椒を売りに行くぞ。
シュシャン」
「はい。分かりました」
シュシャンも笑顔になった。
悪魔には、食べ物は必要ない。
でも、デミュクは、人間の真似(まね)をする必要がある。
悪魔の世界で追われているデミュクは、
これから、人間の世界でずっと暮らさねばならない。
人間の世界で悪魔とばれては生きるすべはない。
デミュクは、ポテトを「ゴクン」と飲み込んだ。
食事は、終わった。
デミュクと執事シュシャンは、イリスに礼を言う。
イリスは、食器を片付けながら背中で答えて、
何も言わなかった。
別れが寂(さび)しいのであろうか。
2人も、敢(あ)えて特に何も言わずに町に向かって出発した。
(また、会える。俺は生きている)
まだ、日が昇って間もない。
昼頃には、町に着くだろう。
この辺は、肥沃(ひよく)な土地とは言い難(がた)い。
見渡す限り畑が広がっているが、豊かに作物が育っている様子はない。
葉は茶けて地面は乾(かわ)ききり、ぼろ砂である。
デミュクは、この村に恩を受けた。
(借りは、いつか返す)
少し小高い丘を登った。
日が昇る向こう。遠くに家が立ち並んでいるのが見える。
「町が見えます」
シュシャンは、言った。
「もう直ぐだな」
デミュクは、不安であった。
(俺は、人間界でも上手くやれる。
必ず生きていける)
自分にそう言い聞かせた。
やっと、町に着いた。
町に人影はない。
野菜を売っている店がある。
(人参だろうか?葉物はなにだろう?
人間の主食と聞いた小麦とかはないのか?)
軒(のき)に野菜を並べ、その奥に椅子(いす)に座って首を傾(かた)げて眠っている。
野菜は、少し茶けている。
「あまり裕福(ゆうふく)な土地ではなさそだな。
町には声がない」
デミュクは、シュシャンに話しかけた。
「その様ですね。
どうしますか?」
「むろん、それはチャンスだ」
「はい。
私もそのように思います」
領地の状況が悪いのは、
領主は何か改善する策(さく)を求めていると考えられる。
だから商いを持ち掛けるチャンスであると2人は考えたのである。
隣に食事処がある。
看板に「食事出来ます」と書いて食べ物の絵が飾(かざ)られている。
「シュシャン。入ってみるか?」
「そうですね。
この町の状況を確かめてみましょう。
領主についても詳しく知りたいですね」
「じゃ。入るぞ」
2人は、食事処に入った。
つづく。 次回(食事処の女将、まず情報収集だ。)題名は変更があるかもです。
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