0287_神々の合議(012)裕也の冒険-地獄の業⑤-
--地獄の業⑤地獄の妖精--
ディフェドは、前に進み石板の中に入って行った。
地獄の妖精の姿は分からない。
ただ、押さえられた肩が燃えるように熱い。
背中の羽を畳(たた)む。
(どこに、連れて行く気だろう)
(妖精の道かな?)
(でも、やけに暗い)
暗闇の中、遠くに明かりが灯っている。
屋城らしきもであるようだ。
近づくとそれは、燃え盛っている。
煌々(こうこう)と燃え立つ屋城である。
屋城の門が開く、中に入る。
熱い。
幾重もの障子を開け、奥へ奥へと進む。
より熱くなていく。
骨折り地獄では、裕也に石板を三枚乗せた。
足の骨が軋(きし)む。
ディフェドと裕也の心がシンクロする。
ディフェドの足も軋む。
一番、奥の部屋に着いた。
座敷に座らされた。
地獄の妖精は顔を顕す。
炎の中、目は吊り上がり、口も避け歪んでいた。
罪を受け止め続けたのだ。
ものすごく苦悩の役目を背負っているのである。
ディフェドは、尊敬し敬意を浮かべた。
純粋に涙がでる。
裕也も涙する。
裕也にもその顔が見えたのである。
「何を泣いてるのだ!
そんなに苦しいか!
泣いて詫びるのか?」
鬼たちは笑う。
涙は、溢(あふ)れて出る。涙ぶくろの内側に溢れる。
内側から内側に流れる。
裕也は、涙を地獄の全てのものに繋(つな)ぐ。
地獄の妖精は、みんな涙が出る。
今まで流したことのないものである。
裕也の涙である。
妖精は、純粋さ清さに心を洗われていく。
石板が割れる。
「ゴトン ゴトン ゴトン」
つづく。 次回(地獄の業⑥-洗われし地獄-)
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