不思議なハートの力00083-大阪大会決勝、陸運戦(剣道大会は、どうなるの?②)-
--大阪大会決勝、陸運戦(剣道大会は、どうなるの?)(002)--
試合が開始される。
両者は、向かい合う。
副将の浪速剛剣の浪打剛(なみうち つよし)と陸運志気の荒川海星(あらかわ かいせい)が前に出る。
一礼する。
開始線で向かい合い屈(かが)む。
浪打は、守りに徹(てっ)しようと考えた。
引き分けに持ち込めば神海がいる。
神海に任せば、必ず勝ってくれる。
そう考えた。
逆に荒川は、攻めまくる気でいた。
(俺が決めてやる。
日鶴の役に立つ。
僕(ぼく)が心を軽くしてやる)
「はじめぇーーーえ」
「めん」「小手」「めん」「小手」
「めん」「めん」「めぇーーーーん」
荒川は、試合開始の合図が出るなり、
攻めを連続して出した。
「バシ」「バシ」「バシ」「バシ」
浪打は、ギリギリであった。
荒川は、容赦(ようしゃ)なく竹刀を振り下ろしてくる。
精神的にも押さえつけられていく。
(相手は強い。
このままだと1本取られる)
浪打に弱い心が覘(のぞ)く。
朋子は、今までとは別人のように冷静であった。
荒川は打ちまくってくる。
このままでは、まずい。
浪打は、かろうじて防いでるが、攻め捲(まく)られている。
息をつく暇がない。
浪打も、そう思い始めていた。
朋子も、気が気ではなくなってきた。
冷静さの中から、とうとう、朋子の心が叫び、声が出た。
「浪打さん、攻(せめ)てぇーーーえ」
その声は、浪打の心を揺(ゆ)さぶった。
浪打は、ハットした。
(攻めないと。攻撃こそ最大の防御なり!)
心が叫んだ。
(そうかぁ。そうだ)
真菜美は、朋子は『電子の戦い』以来、少し変わったと思った。
恋のなせる業(わざ)か心の不思議か?真菜美の影響か?
荒川が押され始めた。
(いける)
浪打は、一変(いっぺん)してそう思い始めた。
心が変われば、竹刀を振る体の動きも変わる。
(負けたらどうしよう)
今度は荒川の動作が縮じこまってきた。
(荒川。引き分けで良いのよ)
日鶴は、願った。
それが影響したのか通じたのか、
荒川も、今度は気持ちを切り替え守りに出た。
(引き分けで良い。
日鶴に後を負かせればいい)
荒川の気持ちが軽くなった。
動きが良くなる。
プレシャーから解放されたのか、
のびのび振れるようになった。
「バシ」「バシ」「バシ」
「別れぇ」
両者は、別れる。
浪打も荒川も息を整えた。
浪打は、面を狙い飛び込んだ。
荒川は、かろうじて防ぎ、下がりながら小手を狙(ねら)い振(ふ)り下ろす。
浪打は、既(すんで)にかわした。
後は、激しく両者は、打ち合った。
「バシバシバシ」
「それまで」
開始線に分かれる。
「引き分け」
結局、引き分けに終わった。
浪打も荒川も役目を果たした。
次は、大将戦である。
浪速は、神海天導(しんかい てんどう)。
相手、陸運は、日鶴 真奈美(まなみ)である。
この対戦で勝負は決まる。
つづく。 次回(剣道大会は、どうなるの?③)
#不思議なハートの力 #不思議なハート #自作小説 #真菜美 #朋子 #日鶴 #神海 #剣道大会(決勝)