2013年に観光ビザが不要になって以降、日本を訪れるタイ人観光客が急増している。
宿泊数は右肩上がりで、インバウンドによる消費も注目されている。
日本への旅行が流行し、意外な観光地までがタイ人に人気な理由。
それはあるテレビ番組の影響が大きい。
日本を取り上げる旅番組『すごいジャパン』だ。
番組の制作段階から関わり、そのナビゲーターを務めるのが俳優の佐野ひろさん。
いまやタイで知らない人はいないといっても過言ではない、超有名人だ。
その佐野さんに、現在に至るまでの道のりと、
タイ人観光客を日本にもっと呼び込むためのヒントなどについて聞いた。
■ 旅番組ナビゲーターを引き受けた理由
高校卒業後、演劇の専門学校に通い、舞台を中心に活躍していた佐野ひろさん。
彼が初めてタイに来たのは、21歳のときだった。
「当時、俳優のいしだ壱成さんが『タイは、若いうちに行け』というタイ航空のCMをやっていて。
なぜか、とても印象に残って、若いうちに行かなくちゃ、と。
バンコクはもちろん、ダイビングで有名なタオ島にもしばらく滞在したりして、
タイで暮らす知人や友人も増えました」
その後、一度は日本に帰国した佐野さんだが、タイ滞在中に出会った友人から誘われて、
25歳のときにバンコクに生活の拠点を移すことを決める。
最初からCMの仕事が3本あり、舞台や映画など順調に活躍の場を増やしていったという。
仕事の多くは、日本人の役を演じること。
日本軍の兵士や、サムライ、日本のサラリーマンなど、
俳優の仕事をしていく中で、気づいたことがあった。
「タイ人は日本が好きで憧れもあるのですが、きちんと理解されていない部分も多かった。
サムライを演じているのに刀が中国の刀になっていたり、
空手の先生をやってくれと言われて手渡されたのが、テコンドーのユニフォームだったり。
俳優の仕事をしている時から、日本文化を正しく伝えたいという気持ちは常にどこかにありました。」
タイのテレビプロデューサーから、日本を紹介する旅番組をやってみないかと打診されたとき、
すぐに引き受けたのは、この気持ちがあったから。
タイトルは途中で変わったものの、
日本を旅しながら紹介していく番組を続けて、まもなく10年になる。
■ 語学を本格的に勉強したのは25歳から
多くのタイ人ファンがいる『すごいジャパン』の番組内容は、
日本国内にいてもYouTubeの公式サイトから見ることができる。
番組では、佐野さんが軽快なトークを交えながら、
その土地のことを紹介していくのだが、
見事に日本語とタイ語を使い分けながらリポートしていく。
彼がここまでタイ人に受け入れられているのは、
日本人でありながら自然なタイ語を流暢に話す、ということがひとつめの理由だ。
来たばかりの時は、英語と片言のタイ語でコミュニケーションを取っていたという佐野さん。
だが、監督が話す早口のタイ語も聞き取れないと仕事にならないと痛感し、
一念発起して勉強することにした。最も意識したのは、
多くのタイ人が話す、自然な言葉を身につけるという点だ。
「語学学校にも通いましたが、そこで教わるのは教科書に登場する綺麗なタイ語。
文法的には間違いのない文章ですが、やはり町の人が話す自然なタイ語ではないんです。
そこで、タクシーに乗って、運転手とひたすら話す…という方法をとりました」
渋滞がひどいけれど、タクシー運賃はとても安いバンコクでは、
1時間ほど乗って、たくさんしゃべっても日本円で500円しない。
安い語学学校だと思って、タクシーの運転手とひたすら話すことを続けたという。
■ タイ人は何を知りたがっているのか?
日本語はもちろん、タイ語も流暢に操る佐野さんは、
番組内でもひたすらリポートしていく。
食リポと呼ばれる、料理を食べて、その味や特徴を伝えるリポートはもちろん、
時には日本でもあまり知られていないような場所や文化も、
タイ人に分かりやすく、語りかけるように説明していくのだ。
「例えば、タイ人は鮨だけでなくワサビも大好きなのですが、
なぜ日本人がワサビを食べるかということも説明します。
殺菌作用があったり、生魚の臭みを取ることができたり、
日本人がすることには一つひとつ理由があるのだと伝えた方が興味を持ってくれる。
へぇ、すごい! と驚いてもらうトリビアを散りばめておくんです」
リポートする内容は、タイ人が何に惹かれるか、
どんなことを知りたいかを考えながら、決めていく。
ときにはバラエティ番組のような、笑いも入れながら。
タイ人に受け入れられる、もうひとつの理由。
それは、タイ人の好みや気質を知り尽くしているからこその番組構成と、
アピールする際の言葉の選び方だ。
「日本とタイの文化は違うので、自分はその中間のところにいることを心掛けています。
日本側に寄っても、タイ側に寄ってもよくないので、
真ん中にいないといけない。とにかく、タイ人に響かないと興味を持ってもらえません。
日本にはよいところがたくさんありますが、日本ってこんなにすごい、
タイももっとこうした方がいいのでは? という「上から」な印象になってはいけないんです。
そうなると、タイ人もよい気持ちはしないし、見てくれない。
日本って素晴らしいところだけれど、凝りすぎていたり、
ちょっと変なところもある。
そのことを、タイ人が興味を惹くように伝えていく。すべて、バランスが大切なんです」
日本側が伝えたいこと、知ってもらいたいことと、
タイ人が知りたいことが同じとは限らない。
タイ人観光客を呼び込みたい観光業や自治体のスタッフと、
意見が食い違うこともあるが、違うと思った時にはハッキリ別の提案をするという。
紹介する地域、観光スポット、食事のメニュー、その撮り方などは、
タイ人スタッフと相談しながら決めていく。
ここでタイ人の感覚を取り入れていることも大きいのかもしれない。
■ インバウンドを考えたホームページが足りない!
インバウンド需要がある今、波に乗りたい日本の観光地は少なくない。
いったいどうすれば、タイ人旅行客に来てもらえるのだろうか。
「今、日本に足りていないと感じるものは、外国人観光客向けのホームページです。
英語のページは増えてきているのですが、来月○○という祭りがあります、
というような更新記事が1カ月前に出ていたりする。
外国人観光客はもっと前から日本旅行の日程を決めているので、
直前にアップされたところで対応できません。
官民を問わず、まだまだ国内向けに情報を出している印象がありますね。
ただ、中途採用でタイ語を話せる公務員も出てきているし、
力を入れている自治体は結果も出ています。
アピール次第で、もっと観光客が急増する場所はまだあると思います」
第一の母国は日本、そして第二の母国はタイだと言い切る佐野さんが目指すもの。
それは、旅行のレベルを超えて、両国が文化交流していくこと。
それがご自身の使命だと思っていますか? と尋ねると、控えめな答えが返ってきた。
「使命感なんて大げさなものではなくて、自分が今やるべき仕事なのかなって思っています。
せっかくタイ人が日本の文化を知りたがってくれているならば、
自分が正しく伝えていこう、と。文化交流の最初のきっかけは、
いつの時代も旅だと思うんです。
だからこそ、もっと多くのタイ人に日本に来てもらいたいですね」
両国の架け橋となる旅番組『すごいジャパン』。
ナビゲーターの佐野さんが2016年に取り上げたい地域は、
中国・山陰地方と東北地方。
そして、タイ人の間でブームになりつつある、日本の温泉だという。
佐野さんの後をタイ人観光客が追いかけていく、
そんな展開が今後も続いていくのかもしれない。
-東洋経済オンライン 1月20日(水)6時5分配信-
≪なぜタイで人気?意外な地方都市の「営業力」≫
人気なのは、有名観光地だけではなかった!
11月6日~8日、日本政府観光局がタイ・バンコクで開催した『FIT(個人旅行)Travel Fair』。
3日間で実に4万6000人以上のタイ人が来場し、前年比21%増の来場者数と大盛況となった。
今回で8回目となるこのイベントに日本から出展したのは、
自治体や旅行会社など33団体。旅行会社や鉄道会社のブースでは、
日本への航空券や日本で使うレール・パスなどまで販売していたが、飛ぶように売れていた。
地図を手にやってきて、具体的な相談を始める人や、
自分の観光ルートに追加したいと時刻表を見ながら予定を立てる人の姿もあった。
2013年に日本への来日に際しビザが不要になって以降、
タイでも日本への旅行ブームが起きているが、ここまで盛り上がるのはそれだけが理由ではない。
そこには、タイ人の心に響く旅行の切り口を見つけ出し、
さらに現地まで足を運んで地道に「営業」をする、日本各地の地方自治体の姿があった。
■ 札幌、函館から、星野リゾートトマムまで勢ぞろい
今回のイベントで、多くの人を集めていたのは雪の多い地域だ。
11月の開催ということで、意識しているのは年末年始の長期休暇なのだろうか。
会場の入り口やブースの装飾も、雪国メインの演出になっている。
会場の入り口には雪だるまが。常夏の国だけにタイ人の雪への憧れは強いようだ
常夏の国タイの首都・バンコクでは、1年で最も寒い時期の最低気温でも20℃前後。
雪を見るために日本への旅行を計画する人も少なくない。
日本で雪を見る……と言ったら、やはり思い浮かぶのは北海道だろう。
観光地としてのSapporoやHokkaidoという地名は、タイ人にも有名だ。
バンコクからの直行便が飛んでいる札幌市も、今回のイベントにブースを出展。
観光企画課観光誘致・受け入れ担当の吉村有未さんは、増え続けるタイ人観光客を歓迎する。
タイ人から絶大な人気を誇る、日本の雪国。北海道以外でも、
雪のない地域から来る観光客へのアピールは重要となるだろう。
だが、雪が見られない地方も負けてはいない。
もうひとつ、日本ならではのアピールポイントがあった。
■ 4月中旬のタイのお正月で見たいもの
震災からまもなく5年を迎えようとしている宮城県は、
『栃木・南東北』という名前のチームで参加した。
日光という有名観光地に来るタイ人観光客に、
もう一歩、宮城まで足を伸ばしてもらおうと、山形県・福島県と一緒にアピールしているという。
2013年にビザがなくなったことで、仙台市に宿泊するタイ人観光客も急増。
ここで、南東北ならではのアドバンテージがあることに気づいた。
「タイ人観光客が日本を旅するのは、タイ旧正月ソンクランがある4月中旬が多いのですが、
その時期に満開の桜が見られるのは、宮城県などの南東北です。
仙台であれば、ショッピングも楽しんでもらえるし、
タイ旧正月にオススメの観光地として強くアピールしていきたい。
ソンクランの桜なら南東北、ということで、今回はブースも法被も桜にしました」
(宮城県観光課の羽根田恵里さん)
■ 日本での知名度=タイ国内の知名度ではない
「今回の大盛況は、タイのメディアや旅行会社の力なのではと感じました。
タイの旅行業者を呼んで、和歌山の魅力を伝えることはもちろん、
テレビ局や雑誌社にもアピールを続けてきたので。地上波の旅番組の力は大きいですよ。
今月下旬には、タイでいちばん大きなテレビ局の番組も取材に来る予定です」
藤村 美里 :TVディレクター、ライター 2015年12月02日
-東洋経済オンライン-
佐野ひろさんの”SUGOI JAPAN”は、
以前テレビで紹介されていた。
例えば階段の都市伝説。
都内某所の、何の変哲もない普通の階段だが、
上りと下りでは、階段の数が違う奇怪なスポットなど。
他とは違うユニークな視点で、番組を制作する姿勢が受けているのだろう。
でも、そんな人気番組に頼らず、
自力で呼び込みに成功したホテルもある。
対象の観光客がタイ人だったか、インドネシアだったか忘れたが、
創意と工夫だけで危機を乗り切ったのは、
北海道の極寒の過疎地にある閉鎖寸前の町営ホテルだ。
冬場、アピールできるような何の観光資源も持たず、
いつ潰れてもおかしくないようなホテルだった。
私はそのホテルを偶然知っていて、
夏場利用するのなら、最高のところだった。
でも、もう10年以上、そのホテルの存在を忘れていた。
もうとっくになくなっているだろうと思っていたが、
どっこい某番組で、そのユニークな取り組みを紹介していたのだ。
「あら、あのホテルまだ有ったの。」
正直な感想だ。
札幌からバスで6時間以上かかる場所。
しかも、冬場は温泉以外何もない過疎の地。
そんな地理的に不利な条件下にあるのに、ワザワザ団体で行く理由。
それは、手作りのおもてなしにあった。
真冬なのにホテルの大宴会場を『夏祭り』会場として演出。
ヨーヨーや的中てゲーム、はたまた餅つきまで。
夜明け前にバスで30分の移動。
その先で待っているのは、オホーツク海の夜明けの太陽観光。
まさに手作りの観光資源の創出だ。
現地の旅行会社の関係者たちを呼び、
徹底的に彼らの意見や希望を取り入れる。
そういう地道な努力が少しずつ評判を呼び、
団体ツアー客を増やすことに成功した。
現在では、そのホテルの成功事例に習って、
他の地域のホテル関係者も研修に訪れ、
各地で模倣されているという。
佐野ひろさんも北海道のホテルも
ある共通点がある。
それは、独自の発想とユニークな視点で、日々努力している点だ。
日本の国内には、まだまだたくさんの
努力を怠った残念な温泉地やホテルがある。
「どうせこんなものさ」と諦めているのだろうか?
だとしたら、凄く勿体ない話だと思う。
まず、客を呼び込むための視点を磨く。
そして惜しみない努力を重ねる。
そうしてかつてのように、賑わいを復活させてほしいと思う。
温泉と温泉街の持つ、独特な賑わいの雰囲気が大好きだったオヤジだ一句。
ストリップ ラーメン 土産 下駄の音
お粗末。