仮名手本胸之鏡 中 10 三丁裏 四丁表
早稲田大学所蔵
https://archive.wul.waseda.ac.jp/kosho/he13/he13_01505/
仮名手本胸之鏡 中
山東京伝 作
歌川豊国 画
早稲田大学デジタル図書
通油町(江戸) [蔦屋重三郎]
寛政11 [1799]
黄表紙
仮名手本胸之鏡 中 10 三丁裏 四丁表
中 三丁裏上
あくをなすときハ
てんとうさま、たち
まちわざわひを
くだしなふこと
いつわりならす
さるによりて
てんとう さま
あくにんをほう
ぼさんがためてん
のみちのすぐなる
つりざほのさきへ
いんゑんのいとをつけ
与兵衛をつりばり
こし しまの
さいふをゑさ
とし、かん
平がてつ
ぷう、玉
をおもり
とし----------右男の垂れる釣り糸に「し」が続く画
さた九郎
中 三丁裏右中 岩に座り、釣竿を垂れる観音のような人
釣竿の先には、金の入った巾着が釣り上げられている。
「こゝまで
ござれ、此かね
しんじよ
中 三丁裏右中 岩に座り、釣竿を垂れる観音のような人の
釣り上げた巾着の金を取ろうとする、海に中の男
「うをハ悪さある事を
しつて、はりある
ことを
しじず
さた九郎
ハ、五十
両
の
中 四丁表下
かねあること
をしつて、まへに
てつぼうある
ことをしら
ず、人
じや、
みな
かゝの
ごと
し
鏡に中には、定九郎がまさにおかるの父を殺すところ。
此の後、お軽の身受けの金、五十両を盗む。
鏡の下
あくのむかふかゞみ
悪報鏡
中 四丁表下
せんをなせバ
天さいはいを
くだし、なひ
あくをなせば
天わざわひを
くだしいふ
みなこれ此かゞみ
にうつる、きやう
げんのごとし
仮名手本胸之鏡 中 10 三丁裏 四丁表
中 三丁裏上
悪をなす時は
天道様、たち
まち災いを
下しなう事、
偽りならず
去るに依りて
天道様
悪人をほう
ぼさんがため、天
の道のすぐなる
釣竿の先へ
因縁の糸を付け
与兵衛を釣り針
こし 嶋の
財布を餌
とし、寛
平が鉄
砲玉
を重り
とし----------右男の垂れる釣り糸に「し」が続く画
定九郎
中 三丁裏右中 岩に座り、釣竿を垂れる観音のような人
釣竿の先には、金の入った巾着が釣り上げられている。
「ここまで
ござれ、此金
しんじよ(しんぜよう)
中 三丁裏右中 岩に座り、釣竿を垂れる観音のような人の
釣り上げた巾着の金を取ろうとする、海に中の男
「魚(うお)は悪さある事を
知って、はりある
事を
信じず(しじず)
定九郎
ハ、五十
両
の
中 四丁表下
金ある事
を知って、前に
鉄砲ある
事を知ら
ず、人
じゃ、
皆
かかの
如
し
鏡に中には、定九郎がまさにおかるの父を殺すところ。
此の後、お軽の身受けの金、五十両を盗む。
鏡の下
あくのむかふかゞみ
悪報鏡
中 四丁表下
せんをなせば
天災は、いを
下し、内
悪をなせば
天、災いを
下し、いう
皆これ此 鏡
に写る、狂
言の如し
てつぼう
鉄砲
歌舞伎『仮名手本忠臣蔵』では、二つ玉の場面。
芝居では二度。鉄砲を放つ音がする。
鉄砲の打ち手は、寛平。
勘平はイノシシを追うのだが、一発目は外れ、二発目は金を奪った定九郎にあたる。
此の後、家に運ばれた定九郎の懐から嶋の財布が出てき、勘平は義理の父親を殺めたと勘違いし、自害。
妻のおかるは身を売り、回り回った因果。
なんとも切ない場面である。