乱鳥の書きなぐり

遅寝短眠、起床遊喰、趣味没頭、興味津々、一進二退、千鳥前進、見聞散歩、読書妄想、美術芝居、満員御礼、感謝合掌、誤字御免、

浄瑠璃台本の読み方について

2024-08-08 | 浄瑠璃、文楽について

     浄瑠璃台本の読み方について




 近松門左衛門の作品は浄瑠璃のために書かれたものなので、その内容には浄瑠璃を語るために必要最小限の工夫が盛られている。

 それは、
     語りの本文である詞章
     節回しや舞台の進行
を指示する節章からなる。

 今日の出版物の中には、節章を省いて詞章のみを載せるものがある。
 これは文学作品として読む場合にはともかく、浄瑠璃作品として読む場合には、正しいやり方とはいえない。



 詞章と節章にあたるものの組み合わせとしては、謡曲のテクストがあげられる。
 これは能の舞台を進めるために必要最小限の情報を盛り込んだもの。
 ひとは
    ゴマ譜
と呼ばれる記号やさまざまな文字譜によって、謡曲の謡い方や能の舞台進行を再現することができる。



 これと同じような工夫が浄瑠璃の台本にもある。
 今日浄瑠璃は舞台の上で演じられることが少ない。
 またその音曲たる義太夫節を習う人も少ない。
 謡曲のように節章が注目されることは無いのが現状。
 やはり節章についての知識がないと、浄瑠璃の雰囲気を十分に味わうことはできない。



 節章は
    ゴマ譜
    文字譜(曲節)
に大別される。

 ゴマ譜とはそれぞれの文字の右肩に付されている読点のような記号。
 主にアクセントを表す。

 謡曲の場合にはすべての文字にこれが付されているが、浄瑠璃は一部分だけである。

    右上がりのものを上げゴマ、
    右下がりのものを下げゴマ
という。



 文字譜には、
    音の高低や音色を示すもの、
    語りとせりふの区別を表すもの、
    舞台転換を示すもの
などがある。

 音の高低や音色をあらわすものには、
    ハル、ウ、色、上、中
などがある。

    ハルははりのある音
    ウは浮き上がったような音
    色は感情のこもった音
    上や中は音の高さ
を、それぞれ表す。



     詞は登場人物のせりふを表す
     地は語りの部分を現す。

 語りであるから拍子に乗るのであるが、地に色がつくと、その部分は拍子には乗らない代わりに、他の部分より感情のこもった語り方が求められる。



 舞台転換を表す文字譜の中で重要なのは三重である。

 これは段落の変わるところでは必ず現れる。
 そのほか同じ段落の中で、舞台ががらりと変わるところや見せ場となるところへの転換の部分でも現れる。
 段落の中の大きな区切りを示すものだ。



 以上に対して小さな区切りを示すものとして、
    フシ、スエテ、ヲクリ
がある。

 いづれもある小段落から別の小段落への移行を示している。


 相互の差は微妙だが、フシがもっとも多用される。



 山根為雄「浄瑠璃の読み方―節章と曲折」(世界思潮社刊浄瑠璃の世界所収) 引用
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人形浄瑠璃芝居の【丸本】と【床本】とは

2024-08-06 | 浄瑠璃、文楽について


  人形浄瑠璃芝居の【丸本】と【床本】とは


 大阪国立劇場の 展示室 『文楽で学ぶ なまずと西遊記』で、人形浄瑠璃芝居の【丸本】と【床本】を見た。



【丸本】とは



【丸本】とはといいとは【正本】【院本(まるほん)】ともいう。

 義太夫節の一曲全部を収めた本。
 前段まるごと治まているので、この名がつく。

 一般的には【正本】といい【丸本】と飛ぶのは、義太夫節だけ。
 
【丸本】には7行のものが多く、8行、10行のものもある。







【床本】とは



【床本】とは太夫の舞台(床)で使用する段ごとの本。

【床本】は、見台

の上に置き、義太夫が語る。

【床本】は原則としてその持ち場を語る太夫が自分で書くか専門家が書く。

 訴訟から弟子に受け継がれる場合もある。






 上の写真2枚と要約説明は、国立文楽劇場の『文楽入門』より引用。



 見台の写真は、会場内にて公演前待ち時間に撮影

 
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