八幡神社 奈良
『梁塵秘抄』(りょうじんひしょう)339(我を頼めて来ぬ男 角三つ生ひたる鬼になれ) 筑摩書房『日本詩人選 22』
我を頼めて来ぬ男
角三つ生ひたる鬼になれ さて人に疎まれよ
霜雪霰降る水田の鳥となれ さて足冷かれ
池の浮草となりねかし と揺りかう揺り揺られ歩け
(339)
筑摩書房『日本詩人選 22』 P.8写す
我を頼めて来ぬ男
角三つ生ひたる鬼になれ さて人に疎まれよ
霜雪霰降る水田の鳥となれ さて足冷かれ
池の浮草となりねかし と揺りかう揺り揺られ歩け
上を読んで、内容こそ違えど、まず一番に、能楽『鉄輪』の女の情念を思い浮かべた。
これは女が男を呪った歌であるが、大胆な悪態ぶりである。
角三つ生ひたる鬼になれ
たたみ込んで
霜雪霰降る水田の鳥となれ
さらに
池の浮草となりねかし
と、駄目押し。
人に疎まれよ
足冷かれ
と揺りかう揺り揺られ歩け
と、夜離(が)れする男を呪うほどに、悪態をつく。
加えて、和歌では、「男」という言葉を使った作品がほとんどない。
「男」という言葉は体臭を持った「け」の言葉とされていたという。
その「男」を冒頭で「我を頼めて来ぬ男」と言ってのける。
「我を頼めて来ぬ男」には、充たされぬ愛欲を下地にしたっ呪いの響きが聞き取れる。
なので、上にも書いたが、設定こと違うが、能楽『鉄輪』の女の情念を思い浮かべたのかもしれない。