憂生’s/白蛇

あれやこれやと・・・

―鬼の子(おんのこ)― 31 白蛇抄第14話

2022-09-06 07:01:08 | ―おんの子(鬼の子)―  白蛇抄第14話
「はいれぬ」 悪童丸の陽根を祭った小さな祭壇の周りの角に竹が埋められ 竹を結んであらなわが張られている。 ひどく簡単なひもろぎであるというのに、伽羅には入れない。 「ただの陰陽師ではない」 薊撫のいうとおりのかむはかりの者のせいか? なれど、ほたえを放ち生を継がせる道具を とりあぐる陰陽師のどこがかむはかりの者か? 「なにをかんがえおる」 悪童丸も舌が癒えぬものだから、何もはなし . . . 本文を読む

―鬼の子(おんのこ)― 32 白蛇抄第14話

2022-09-06 07:00:54 | ―おんの子(鬼の子)―  白蛇抄第14話
澄明に言われた百日目の夜である。 海老名は祭壇の前までくると、やはり、戸惑いをあらわにする。 姫の懇願に負けてここまで来たのは来たのである。 が、 「姫様」 躊躇うような海老名の声が夜のしじまに響く。 「早う、悪童丸の陽根を、わらわの手に・・」 「なれど・・・」 「海老名、今宵を逃したら。 そもじも、あの折に言うたではないか、悪しきにはせぬと、 なによりも、悪童丸はわらわの弟、 . . . 本文を読む

―鬼の子(おんのこ)― 33 白蛇抄第14話

2022-09-06 07:00:41 | ―おんの子(鬼の子)―  白蛇抄第14話
それから一月。 勢は三条の元に嫁しこした。 これで、因縁通り越せるか? 勢を懐妊を待つ。 待つは無論。悪童丸との結果である。 だが、思わぬ落とし穴があった。 これが勢をくるしめた。 はよう。あからさまになれ。 あれから、障りが無い。 おくれておるだけか? はらんだか? 勢がいかほどに焦るのも無理は無い。 「澄明:。この苦しさも因縁か?これもとおりこせというか?」 懐妊への . . . 本文を読む

―鬼の子(おんのこ)― 34 白蛇抄第14話

2022-09-06 07:00:26 | ―おんの子(鬼の子)―  白蛇抄第14話
だが、はらんだか? はらんでおるのか? 澄明の言葉が浮かび上がる。 ―百日精を留め置かれ、膨れ上がった情念を受けながら、 それでも孕まねば、自然は三条様のものになれときこしめます―   ―自然はなるがまま。これが自然― 澄明がいう。 ―自然を勝る情念が味方せぬことこそ、なってはならない。 そのあかしです― 孕まぬはつまり、なってはならぬという神の意思だという。 ―神 . . . 本文を読む

―鬼の子(おんのこ)― 終 白蛇抄第14話

2022-09-06 07:00:06 | ―おんの子(鬼の子)―  白蛇抄第14話
―勢がある― あの勢いで恋を生き抜く。 はらむだろう。 はらむにきまっておる。 はらまずにおくものか。 あの鬼恋しさで何もかもを受け止め 己の生き路をつかみとるはげしさで、 悪童丸との運命を切り開こうとする。 その誠に天が乗る。 自然を、人を生み出した天が乗る。 なるにきまっております。 決まっておる事なぞ口にだすまい。   三条の哀れが主膳に重なって見えた。 . . . 本文を読む