憂生’s/白蛇

あれやこれやと・・・

邂逅   奴奈宣破姫・23

2022-12-05 22:52:47 | 奴奈宣破姫

何も答えられぬ男の横をすりぬけて

にぎはやひは、やはり、ぬながわひめの元へ歩もうとする。

「にぎはやひさま!」

それでも、とめようとする男になにを言えばいいだろう。

「のう、後世につたえたい。姫のお徳をきざみたいという心もわからぬではないが

この先、アマテラスがどうなるかもわからぬ。

アマテラスのような男がまたもあらわれ、

スサノオやおおなもちを粛清したように

アマテラスの名前なぞ、かきけされてしまうかもしれない。

そのときに、おまえたちの望みがかなうものだろうか」

男はうなだれたまま、にぎはやひにつぶやいた。

「それでは、我らも犬死だということですか」

むごいことかもしれないと思いながらにぎはやひは言葉を返した。

「そのとおりだ。

だからこそ、自分の思うとおりに生きるしかあるまい?」

それは、男たちのことをいうのか

にぎはやひ自身をいうのか・・

「いずれのち、あやつは、わが身のために

人心をあやつり、真をぬりかえてしまうだろう。

わしも、何百年かさきには、

どのように、語り継がれているか

それどころか、名前すらのこっておらぬだろう」

「己の心のままに、生きるしかない・・と」

「姫もまた同じ。お前たちも同じ。

逆臣になろうとも、姫のお心に逆らおうとも

そうせずにいられないのは、

みんな同じであろう」

その言葉を最後ににぎはやひはぬながわひめの元へあゆみはじめた。

そして、奴奈川の源流近く

ふるぼけた館をみつけた。

ーここに、ひとり、おわす。と、いうことか・・・-

館のまわりに、気配を隠して人々がいる。

ーにぎはやひだー

小さなささやきが漣のように伝わっていく。

どうやら、ぬながわひめはにぎはやひの到来をすでに皆につたえおいていたのであろう。

ーみほすすみの生き死にを知っている、姫でしかないー

その姫がにぎはやひの到来を許すということはどういうことであろう。

門とはいえぬ柵は、開け放たれ

すでに抵抗する気はないと見せ付けている。

アマテラスもそのように迎え入れ

あえて、アマテラスの刃を受ける気でいるのか?

政権の掌握のためなら、女子の命さえ奪い去る男だと自らの身であかしてみせたいというか?

おおなもちの顔がよぎる。

ほんのわずかの間、二人が暮らした美穂の社が浮かぶ。

あの場所を美穂の名前にかえた、みほすすみが二人の証だったのだろう。

おおなもちをなくし、みほすすみをなくし、たけのみなかたもいずれ・・

護るべき人々はやはり遠巻きに姫を見守っている。

いさぎよく死ぬことだけが生きる道と考え

ひとり、おわす・・か・・・

柵のとおりぬければ、館の戸もかんぬきひとつかけていない。

そのまま、たたきの土間をつっきって

かまちで具足をぬいだ。

ぬぎおえて、板敷きのまに足をあげた、その真正面にぬながわひめが居た。



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