「どうした?おりぬのか?」
馬上であれば黒き石はことさらはっきりとみえておろう。
にぎはやひは、黒き石の数にとまどうているとみえた。
「あ?ああ・・」
やっと、馬の背をおりると、
アマテラスの近くにあゆみよりながら、尋ねるしかない。
「ここか」
おおなもちの墓はここだというのか?
にぎはやひのとまどいをみすかして
アマテラスは言葉少ない。
「ああ。そうだ」
またも笑いがこみあげてきそうである。
にぎはやひの勝手な憶測がどういうことであるか、
あの墓々をみて、何を考えたやら・・・。
「あれは・・どういうまじないだろう?」
にぎはやひの選んだ尋ねぶりだった。
「はて?まじないとはいかなることだろう?」
黒き石のうち、八つは方円の線上におかれ、
おそらく、方位にあわせて、等間隔に配置されている。
八つの石の中心にことさら大きな黒き石が座っている。
その中心の黒き石のしたに
スサノオ、アマテラスにいわせればおおなもちが眠っているのではないだろうか?
一族郎党でおおなもちを護るかのような配置にしたのは
いったいどういうまじないであるのか。
方円の中心を囲む八つの柱・・・。
巫でもあるアマテラスだからこその怨念封印か?
それも、とりあえずのものでしかないが。
にぎはやひの尋ねに応じないアマテラスであるのも
またも、妙である。
「どれが、おおなもちの墓であるのだろう?」
当然、中心のものであるのにきまっておろう。
にぎはやひはあえて、
大勢の亡骸をうめてあるので判別できないと。
大勢の亡骸をうめてあると言下に含ませて見せた。
まじないとはいかにと問うても
そこには答えず
大勢を殺戮したと暗にアマテラスを責めているにぎはやひである。
と、わかる。
「く・・」
アマテラスののどまであがってきた笑いを殺す。
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