062:墓（足知）

幸せな夢を見たんだ赤文字で僕の墓にはあなたの名前

岸田衿子「あかるい日の歌」星はこれいじょう（ことばの流星群、大岡信）

星はこれいじょう
近くはならない
それで 地球の草と男の子は
いつも 背のびしている

短歌人４月号「地下を流れる」猪幸絵、同人２

返された笑顔は理解することを投げだす合図わたしもわらう

鋭い。他人の仕種の意味を深く追求してしまうことは不幸だろう。この笑顔は「もうこれ以上は結構」という合図なのだ。だから、仕返しのように「わたしもわらう」。この平仮名表記も感情を感じない。

大橋麻衣子「シャウト」空を見上げる

しばらくを陽の下にいてわが体は獣のごとき匂いを放つ

臭いの方なら悪臭だと思うが匂いの方ならむしろ、匂いに対して好意的に感じているのではないか。ではなぜ、「獣のごとき匂い」に好意的なのか。それは自分の中の獣性を求めているからだ。