ぶらつくらずべりい

短歌と詩のサイト

石垣りん「表札など」崖(ことばの流星群、大岡信)

2011-04-24 06:44:07 | クンストカンマー(美術収集室)詩・俳句
戦争の終わり、
サイパン島の崖から
次々に身を投げた女たち。

美徳やら義理やら体裁やら
何やら。
火だの男だのに追いつめられて。
とばなければならないからとびこんだ。
ゆき場のないゆき場所。
(崖はいつも女をまっさかさまにする)

それがねえ
まだ一人も海にとどかないのだ。
十五年もたつというのに
どうしたんだろう。
あの、
女。

大橋麻衣子「シャウト」空を見上げる

2011-04-24 06:41:25 | クンストカンマー(美術収集室)短歌
雷の音がするばかりいつまでも降らない雨に苛立ちは増す

大抵、自らの状況に似た環境になると人は苛立つ。例えば、いつまでもはっきりしない天気は、いつまでもはっきりしない人生に似ている。だからこそ、「苛立ちは増す」のだ。増すのだから最初から何かに苛立っている。