091:債（足知）

不良債権みたいな僕と国債のような未来を描いたあなた

短歌人５月号「会員２」秋野昭彦

佐太郎は泥のごとくにけふ我は猿のごとくに酔ひしれしかな

下記の一首が下敷きにある。

電車にて酒店加六に行きしかどそれより後は泥のごとしも
「歩道」佐藤佐太郎

私も頻繁に猿になっている。と言うのも猿に失礼なくらいだ。酒はいい。

大橋麻衣子「シャウト」十字架

人妻にぐいと踏み込む男なしかの子よあなたの歌を思わん

下記の一首を踏まえている。

人妻をうばはむほどの強さをば持てる男のあらば奪られむ
岡本かの子「かろきねたみ」

もしも、そんな男がいたらすべてを捨てるのか。捨てられる人間なら、多分もう捨てている。条件付きの選択肢は、最初から逃げている。私もそうだ。今の生活を壊したくない。