ぶらつくらずべりい

短歌と詩のサイト

久保田万太郎

2011-05-18 06:45:59 | クンストカンマー(美術収集室)詩・俳句
あきかぜのふきぬけゆくや人の中
久保田万太郎
森澄雄「俳句への旅」より

「あきかぜのふきぬけゆくや」の柔らかい平仮名表記が心地好さを感じ、「人の中」を漢字にすることでそこを吹き抜けていく秋風をイメージさせる。特に「や」が素晴らしい。

あきかぜのふきぬけてゆく人の中

では、切れない。ためがないのだ。読んだ時、「ふきぬけゆくや」の「や」で一度小休止し、次の「人の中」を読む時、初めて秋風が人の中を吹き抜けていく場面をイメージする。すべては計算され尽くしている。

短歌人5月号「村の時間」御厨節子、同人2

2011-05-18 06:44:59 | 平成23年短歌人誌より
白雲を背にして立てる夏帽の少女さびしも時のかなたに

夏帽と言えば下記の句。

わが夏帽どこまで転べども故郷
寺山修二「花粉航路」

つまり夏帽は遠い故郷や幼かった時間を喚起する。白雲を背にして立てる少女の映像はとても眩しく鮮明だ。けれど、もう二度と戻らない「時のかなた」なのだ。